労災保険料率とは労災保険料を求めるために必要な料率のことをいい、原則3年で変更されます。そのため担当者は労災保険について最新の情報を知り、対応していかなければなりません。 本記事では令和6年度の労災保険の保険料率、計算方法、申告方法を解説します。「令和6年度の労災保険料率が知りたい」「労災保険料を計算して申告を進めたい」方はぜひご覧ください。
労災保険料率とは労災保険料を求めるために必要な料率のことです。労災保険に関する費用の均衡を保つため、各業種の過去3年間の労働災害の発生率に応じて原則3年ごとに決定されます。
法律では以下のように定められています。
労災保険率は、労災保険法の規定による保険給付及び社会復帰促進等事業に要する費用の予想額に照らし、将来にわたつて、労災保険の事業に係る財政の均衡を保つことができるものでなければならないものとし、政令で定めるところにより、労災保険法の適用を受ける全ての事業の過去三年間の業務災害、複数業務要因災害及び通勤災害に係る災害率並びに二次健康診断等給付に要した費用の額、社会復帰促進等事業として行う事業の種類及び内容その他の事情を考慮して厚生労働大臣が定める。
(参考:e-Gov 法令検索「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」)
労災保険料を払う必要があるのは労災保険に加入している事業主です。労災保険とは、業務に起因する怪我・事故・病気・障害または死亡に対して労働者や遺族に対して保険料を払う公的保険制度のことです。管轄の労働基準監督署に書類を提出することにより加入手続きを行います。
労災保険は正社員・パート・アルバイト等すべての労働者が対象で、労働者をひとりでも雇用している事業者は加入義務があります。また、労災保険に入っていると以下の補償を受けることができます。
参考:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「労災保険給付の概要」)
実際に補償を受ける際は、労働基準監督署に対して申請が必要です。
詳しい労災補償の内容について知りたい方は「労災申請の4つのステップ|申請方法・必要書類・期限まとめ」からご覧ください。
ちなみに、労災保険と似たような言葉に、労働保険があります。労働保険は「労災保険」と「雇用保険」を総称した言葉で、労災保険料は労働保険料の一部です。
労災保険料率は、事業の種類ごと災害発生状況等によって原則3年ごとに改定されます。
令和6年度は労災保険料率が変更され、現行の労災保険料率は下記の表のようになっています。
参照:厚生労働省「労災保険率表(令和6年度施行)」
ちなみに、労災保険料率が高いのは「金属鉱業、非金属鉱業又は石炭鉱業(88)」、「林業(52)」でした。仕事の内容が危険をともなう業種であればあるほど、労災保険料率が高い傾向にあります。
労災保険料は以下の式で求められます。
(労災保険料)=(全従業員の前年度の賃金総額)×(労災保険料率)
賃金総額とは何か、具体的にどのように計算すべきか見ていきましょう。
「賃金総額」とは会社が従業員に対して支払う給与や賞与、手当など労働基準法第11条に規定された労働の対価として支払われるすべての合計金額です。4月1日から翌年の3月31日の一年間で支払いが確定した賃金が対象になっています。
合計金額といっても、賃金総額に含まれないものもあります。
賃金総額に含まれるもの |
など |
賃金総額に含まれないもの |
など |
それでは実際に労災保険料の計算をしてみましょう。ここでは以下条件を例に、考えていきます。
まず、計算に必要な賃金総額を求めます。
10(人)×500(万円)=5,000万円
次に、労災保険率表で、建築事業の料率を確認します。
建築事業の労災保険料率:9.5/1000
最後に、以下の式に当てはめて労災保険料を求めます。
(労災保険料)=(全従業員の前年度の賃金総額)×(労災保険料率)
= 10×500万円×9.5/1000=47.5万円
つまり、47.5万円が労災保険料とわかります。
実際の計算方法がわかったところで、労災保険料の納付や申告方法について知りましょう。
労災保険は、労働保険の一種です。多くの事業所では、雇用保険料と合わせて申告・納付されます。
また、労働保険の保険料は、年度当初に概算で申告・納付し、翌年度の当初に確定申告の上精算することになっています。事業主は、前年度の確定保険料と当年度の概算保険料をあわせて申告・納付しなければなりません。これは「年度更新」と呼ばれ、原則として毎年6月1日から7月10日までに手続きをする必要があります。
ちなみに、「e-Govポータル」のサービスを利用すると、年度更新は電子申請で手続きすることもできます。
年度更新時は下記4ステップで行われます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
5月下旬頃、管轄の都道府県労働局から申告に必要な以下の書類が届きます。
申告関係書類が届いたら内容を確認し、記載されている情報に誤りがないか確認しましょう。
書類の確認ができたら、賃金集計表を作成します。これは、労働保険料の算出に必要な賃金総額を求めるために使いますが、提出する必要はありません。
前年4月1日から本年3月31日の期間に、労働保険対象者に支払った賃金総額を計算しましょう。
必要な項目を記入していきます。
先ほど作成した賃金集計表をもとに賃金総額を記入します。保険料率表で自社業種の保険料率を確認し、賃金総額と掛けて確定保険料、概算保険料を算出し、申告書に記入しましょう。
申告書の記入が終わったら、事業所の管轄の労働基準監督署に申告書の提出を行います。
年度更新では、前年度の概算保険料と確定保険料の差額と、今年度の概算保険料を納付します。
(今年度の納付額)=(今年度の概算保険料)ー{(前年度の概算保険料)ー(前年度の確定保険料)}
年度更新を間違いなく行うために、労災保険料の計算、申告、納付に関していくつか注意点を挙げます。
労災保険料率は1つの事業ごとに1つ適用です。複数の事業を展開していて複数の労働保険番号がある場合は、業種ごとに保険料を計算することになります。
例えば、林業とパルプまたは紙製造業の事業展開をしている場合、林業で保険料率1つ、パルプまたは紙製造業で保険料1つの適用です。
ただし複数の事業を展開している場合であっても、事業所内で主たる業態を判断することで保険料率が決定することがあります。主たる業態を判断しにくい場合は労働基準監督署に問い合わせてみましょう。
雇用形態によって、労災保険の取り扱いが異なります。例えば出向社員や派遣社員は出向・派遣元、出向・派遣先の双方で労働関係が成立していますが、労災保険はどちらか1社での取り扱いになります。
出向社員の場合は出向先の労災保険に加入するため、労災保険の申告・納付も出向先の事業所で行われます。一方、派遣社員は派遣元企業の労災保険に加入するため、派遣先の事業主が労災保険の申告・納付を行います。
労災保険料率とは労災保険料を求めるための料率のことです。各業種の労働災害の状況に応じて原則3年ごとに変更されます。
令和6年度は料率の変更があったので、よく確認し、間違いのないように労災保険料の申告・納付の手続きを行いましょう。
Q1.労災保険料率とはなんですか? |
労災保険料を計算するための料率です。各業種の過去3年間の労働災害の発生率に応じて原則3年ごとに決定されます。 また労災保険は業務上や通勤時の負傷・事故・病気に対して労働者に必要な給付を行う公的保険制度です。 詳しくは「労災保険料率とは労災保険料を算出するための料率」をご覧ください。 |
Q2.令和6年度の労災保険料率を教えてください。 |
令和6年度から労災保険料率が変更されました。厚生労働省が公開している労災保険率表を見て自身の事業が変更されているか確認しましょう。 労災保険率表について、詳しくは「令和6年度の労災保険料率」をご覧ください。 |