付き合い残業とは、自分の業務が終わっているにも関わらず、他の従業員の残業に合わせて残業することです。付き合い残業は会社にとっても従業員にとっても好ましくはないため、自社で付き合い残業が発覚した場合は早急に対策を行うべきです。
この記事では、労働環境を改善し、付き合い残業を減らす対策を紹介します。自社で残業が問題となっている、または、社風で残業が常習化しており第三者目線の対策を知りたいといった方はぜひご覧ください。
付き合い残業とは、自分の業務が終わっているにも関わらず、他の従業員の残業に合わせて残業することです。付き合い残業というと、残業代をもらうために理由なく残業をしているのでは、と感じる方もいるかもしれませんが、けして利己的な理由のみが原因ではない点に注意が必要です。
インターワイヤード株式会社の「「長時間労働」に関するアンケート」によれば、残業を行う理由として、「遅くまで働くことが良いと思われる雰囲気である」と回答した人が10.4%と約1割が業務量や効率に関係ない残業を行っていることが明らかになりました。
なお、同調査で自己都合である「家に帰ってもすることがない」と回答したのは3.5%であり、上記に比べて少ない結果でした。
引用:インターワイヤード株式会社「「長時間労働」に関するアンケート」
付き合い残業は時間外労働であり、人件費の増大だけでなく、従業員の心身の健康やプライベート時間の圧迫にもつながり、ストレスや疲労の原因となります。自社で付き合い残業が発生しないよう、適切な対策を講じましょう。
残業をする従業員の中には、やむを得ない事情や自己都合で残業をしている人もいますが、望んでいないのに外部の要因によって付き合い残業をせざるを得ない人も存在します。。付き合い残業が発生する具体的な原因は主に以下の3つです。
付き合い残業が発生する理由として、上司や同僚が定時で帰らないことが挙げられます。「定時になったけれど、上司が残業しているから帰りにくい」、「チームメンバーが頑張っているのに、先に帰るわけにはいかない」という理由から、付き合い残業が発生します。
この場合、業務の割り当てが特定の部署や人物に偏っていたり、稼働時間や能力に対して適切でなかったりする可能性があります。残業が慢性的になっている人がいる場合は、他の従業員に業務を分担させたり、新規雇用や外部委託を検討したりといった調整が必要でしょう。
自分の業務は終わっていても、他の人の業務を引き受けているため残業が発生したというケースもあります。
この場合、それぞれの従業員の業務が明確にされていないことが原因として考えられます。業務が属人化しすぎることは好ましくありませんが、まずはそれぞれの従業員のミッションや業務内容、責任の所在を明確にしましょう。また、付き合い残業が人事評価制度にマイナスな影響を与える可能性があることを従業員に周知することも有効です。
社内に残業が当たり前という風潮があり、会社全体で付き合い残業がまん延しているケースもあります。それどころか、残業をすることが「頑張っている」とみなされ、定時で帰る従業員が非難されることもあります。
残業が当たり前になると、「残業をすればいいのだからゆっくりやろう」と考え、業務効率が悪化し、定時までに業務が終わらないことが常態化しかねません。これを防ぐには、会社の風土から改善する必要があります。たとえば、人事の評価項目の見直しや残業時間の削減目標設定などによって制度から風土を改善できる可能性があります。
付き合い残業が発生すると労働時間が長くなり、会社にさまざまな弊害が生まれます。具体的な弊害は以下の4つです。
会社にとって、労働時間の長期化は直接的に残業代の増加につながります。法律上、残業代は割増賃金で支払う必要があるため、必要性・緊急性の薄い業務については通常の労働時間内に行うべきであることは言うまでもありません。
なお、時間外労働をサービス残業として扱い、規定の残業代を支払わないことは労働基準法違反となり、許されません。正しい残業代の計算方法について詳しくは、「残業代の正しい計算方法とは?~基礎賃金、深夜労働、深夜残業、休日労働~」をご覧ください。
付き合い残業により慢性的な長時間労働が続くことで、従業員の集中力・判断力の低下を招き、業務効率・業務品質の悪化や、最悪の場合、事故・労災に至る可能性があります。
労働時間と業務効率には密接な関係があることが、すでに明らかになっています。内閣府の「長時間労働是正と柔軟な働き方の導入による生産性向上」によれば、2015年時点でOECD諸国の中で最も1人あたりの労働時間が短いドイツの労働時間は、日本の総労働時間の約8割であるのにも関わらず、1人あたりの労働生産性は日本の水準を50%近く上回っています。
引用:内閣府「長時間労働是正と柔軟な働き方の導入による生産性向上」
こうした国際的にみられる1人当たり労働時間と生産性の相関関係を単純に当てはめてみると、1人当たり労働時間が10%減少すると、1時間当たりの労働生産性は25%高まる計算になります。
やむを得ない残業ならまだしも、本来なら必要のない付き合い残業で生産性が低下することは会社として防止するべきです。
付き合い残業によって長時間会社に残ることで、十分な休息を取れず、従業員の健康が損なわれる可能性があります。
時間外労働の上限は、原則月45時間と定められています。厚生労働省によると、月45時間を超えると、健康障害のリスクが徐々に高まることが指摘されています。
引用:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「過重労働による健康障害を防ぐために」
長時間労働による健康被害は、どの年齢であっても起こりうるため、すべての従業員への配慮が必要です。過労死等調査研究センターにおける平成27年度の脳・心臓疾患と精神障害に関する分析によると、脳疾患、心臓疾患ともに発症時年齢は29歳以下から60歳以上まで報告されています。
引用:厚生労働省「過労死等をめぐる調査・分析結果」
「新卒だから」「管理職だから」「大事なプロジェクトだから」とついつい頑張ってしまう従業員もいるかもしれませんが、会社が適切にブレーキを掛け、健康に働き続けてもらうことが重要です。
長時間労働が慢性的になっている会社は、イメージの低下によって優秀な人材が集まりにくくなったり、従業員の離職率が高くなったりするリスクがあります。
男女ともに、家庭やプライベートも充実させた働き方を望む人が増えています。平成29年度に内閣府が行った「子供・若者の意識に関する調査」によれば、仕事よりも家庭・プライベート(私生活)を優先する」と回答した者は63.7%であり、平成23年度の調査時における52.9%よりも増えています。また現在は、平成29年度の調査時点よりも家庭やプライベートも充実させた働き方を望む人の割合は、より高くなっていると予想できます。
引用:内閣府「特集 就労等に関する若者の意識」
仕事とプライベートの両立がしにくい会社は、転職口コミサイトなどでの評判が悪化し、人材を集めにくくなる可能性が高まります。従業員がワークライフバランスを保ちながら働ける環境作りを心がけ、優秀な人材が働きたいと感じる職場にすることが求められています。
付き合い残業を根本的になくすには、従業員の意識が変わることを期待するのではなく、会社の制度を変えることが重要です。付き合い残業をなくすために会社ができる3つの対策を紹介します。
事前に従業員から申請があり、上司が承認した残業のみ許可することにすれば、不必要な付き合い残業を減らせます。
事前承認制を徹底して実施していれば、事前承認を得ずに残業を行った時間は労働時間とは認められず、残業代も発生しないため、余分な残業を減らす効果も期待できます。
ただし、上司から明示的・黙示的に指示があったと判断されるような場合や、客観的に見て与えられた業務量が通常の労働時間内では完遂できないと認められる場合は労働時間とみなされ、残業代を支払う必要が生じます。
そのため残業の事前承認の形式や必要性について上司・部下ともに認識を合わせ、形骸化しないように注意深く運用する必要があります。
残業を当たり前にせず、できる限り残業をしない努力が重要だという認識を社内で広めましょう。そのためには、定時で業務を完了できる従業員が高評価となるような人事制度を導入することも良いでしょう。
たとえば、以下のような項目を人事評価に組み込むことで、残業を減らす努力をしている従業員を評価できます。
また、フレックスタイム制や時間単位有給、リモートワークや業務量に応じて従業員を増減するシフト制などを導入することでも社内全体での業務調整が行いやすくなり、残業を減らせるケースもあります。
従業員の労働時間を可視化することで、長時間労働や不必要な残業が多い従業員を把握しやすくなります。勤怠管理システムの導入は、従業員の労働時間を可視化し、業務プロセスの改善や不要な残業を抑制するための重要な手段の1つです。
特にこれまで紙のタイムカードなどでアナログに管理していた会社にとっては、集計の手間を省くだけでなく、部署ごとの傾向や季節による繁閑といったデータ分析もしやすくなるでしょう。もし、慢性的に残業が多かったり、部署や季節の傾向とズレて残業していたりする従業員がいれば、個別に対処を行うことで、付き合い残業を始めとする不要な残業を抑制できる可能性があります。
勤怠管理システムを導入し、残業時間を客観的に把握することで、どの部署、どの従業員にどのようにアプローチする必要があるかわかりやすくなるでしょう。
付き合い残業は、残業代の増加や業務効率の低下、従業員の健康被害リスクの増加、採用力の低下・人材流出リスクの増加など、会社にとってデメリットばかりです。
付き合い残業をなくすためには、時間外労働の事前承認制や、残業を評価しない制度の導入、また、勤怠管理システムによる残業の可視化などが有効です。自社に合う対策を早期に検討して付き合い残業をなくし、会社の体質改善にぜひ役立ててください。
Q1.付き合い残業とは? |
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付き合い残業とは、自分の業務が終わっているにも関わらず、他の従業員の残業に合わせて自分も会社に残ることです。付き合い残業は会社にとっても従業員にとっても好ましくはないため、自社で付き合い残業が発覚した場合は早急に対策を行うべきです。また、付き合い残業は、帰りにくい雰囲気、他の従業員の業務の引き受け、残業が評価される社風などが原因で発生します。 詳しくは、「付き合い残業とは」の章をご覧ください。 |
Q2.付き合い残業への対策は? |
付き合い残業をなくすには、
などの対策があります。 詳しくは、「付き合い残業をなくすための3つの対策 」の章をご覧ください。 |
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