変形労働制導入のメリット・デメリットから導入方法まで

更新日:2023年02月17日
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新型コロナウイルス感染症対策によるテレワーク推進も要因となり、働き方の多様化がより進んでいます。その中でも、業務量に合わせて労働時間を柔軟に調整できる変形労働制は、残業代の削減や仕事の効率化が望めることで注目されています。変形労働制を適切に導入するために気をつけるべきこと、また、複雑に思われがちな労働時間の計算方法についてご説明します。

変形労働制とは

変形労働制とは、労働時間を業務の繁忙期に合わせ、月単位・年単位で調整できる制度のことです。1987年の労働基準法改正にて導入されました。

労働基準法では、労働時間が1日8時間、1週間40時間を超える労働をさせてはならないと定められています。しかしながら、時期によって忙しさの変動が大きい場合、労働時間が1日8時間以上になることも出てきてしまうでしょう。

その際に、変形労働制を導入していると、法定労働時間を1ヶ月単位、1年単位で調整することが可能となります。 そのため、変形期間として定めた一定の期間について、労働時間の平均が1週間40時間を超えなければ、法定労働時間を超えた労働が可能となり、時間外労働としての取り扱いではなくなります。

メリット

それでは、変形労働制にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

残業代の削減

繁忙期に労働時間を長く設定することが出来るため、残業時間が短くなります。したがって、企業は残業代を節約することができます。

効率化

繁忙期には労働時間を長く設定することで、増えた業務を適切な人数でこなすことができます。一方で、閑散期には労働時間を短く設定することで、余計な人件費を削減することができます。

働きやすい環境がつくれる

閑散期は短時間勤務に設定するというように、業務に見合った勤務ができるため、メリハリのある働き方になります。

デメリット

一方で、留意しておくべきデメリットはどのような点が挙げられるのでしょうか。ただし、デメリットをふまえて変形労働制を理解することで、デメリットは解決することができます。

計算が複雑

変形労働制では、通常の労働とは異なった勤怠管理や給与計算が必要になります。これにより経理部の業務時間が増える可能性があります。

導入コストがかかる

変形労働制を導入するためには、規則や労使協議の整備、労使協定書の作成などといった事前の準備が必要です。また、変形労働制を実施する前に労働基準監督署へ届出も必要であるため、それらの業務が増えることになります。

他社・他部署との連携がしづらくなる

業務時間が変則的になることによって、他社や他部署とのコミュニケーションの機会が減る可能性があります。また、会社の一部の部署のみで導入する場合には、他部署の社員の納得や合意が必要になります。

変形労働制の種類

変形労働制には、変形期間の長さに基づく3種類の制度とフレックスタイム制があります。

1年単位の変形労働制

1年単位の変形労働制では、変形期間を1ヶ月を超える1年以内の一定の期間とします。そして、変形期間内の平均労働時間が法定労働時間(1週間あたり40時間)を超えない範囲において、一定の限度内で特定の日または週に法定労働時間を超えて労働させることができます。

1ヶ月単位の変形労働制

1ヶ月単位の変形労働制では、変形期間を1ヶ月以内の一定の期間とします。そして、変形期間内の平均労働時間が法定労働時間を超えない範囲で、特定の日または週に法定労働時間を超えて労働させることができます。

1週間単位の変形労働制

1週間単位の変形労働制では、変形期間を1週間とします。そして、変形期間の労働時間が法定労働時間(40時間)を超えない範囲で、1日10時間を上限として労働させることができます。

ただし、常時労働者が30人未満の小売業、旅館、料理点及び飲食店のみ使用できる制度です。

フレックスタイム制

フレックスタイム制も変形労働制の一種です。しかし、期間別の変形労働制とは異なり、一日の労働時間がきまっておらず、始業時間や就業時間をある程度自分で決めることができます。

たとえば3か月以内の期間を清算期間として設定した場合、その期間内の週平均労働時間が40時間以内であれば一日の労働時間が8時間を超えても残業はないものとします。

したがって、フレックスタイム制を利用すれば、より柔軟な働き方が実現できます。しかし、業務上のコミュニケーションをとるために、多くの場合、必ず勤務していなければならない時間(コアタイム)が定められている場合が多いです。

シフト制・裁量労働制との違い

変形労働制とシフト制・裁量労働制は一見すると似たような制度ですが、異なる制度です。

シフト制

労働契約の締結時点では、労働日や労働時間を確定的に定めず、一定期間(1週間・1か月など)ごとに作成される勤務割や勤務シフトなどにおいて、初めて具体的な労働日や労働時間が確定するような形態のことを指します。

裁量労働制

業務の性質上、業務遂行の手段や時間配分を使用者が指示できない場合に、その決定を労働者の裁量に委ねる形態のことを指します。当人との間で結んだ労働協約に基づき、実働時間に関わらず一定時間労働したものとみなして賃金が支払われます。

変形労働制の導入方法

変形労働時間制は、労使協定や就業規則、その他これに準ずるもので定めることにより導入することができます。その際には、以下4点を具体的に定める必要があります。

※就業規則は常時労働者を10人以上使用している事業場には作成義務があります。

(1)労働日・労働時間

労働時間は時間数だけではなく、始業および終業の時刻も具体的に定める必要があります。

(2)変形期間の所定労働時間

変形期間の労働時間の平均が法定労働時間を超えないように、変形期間の所定労働時間を定める必要があります。詳しい設定方法は次章で解説します。

(3)変形期間の起算日

変形期間の始期を定める必要があります。

また、その他に以下の手順が必要です。

  • 対象者の決定
  • 労働基準監督署へ提出
  • 所定労働時間の上限設定
  • 労働者への通知
  • 残業代・割増賃金の支払い

変形期間の所定労働時間合計の計算方法

変形期間の労働時間の平均が、法定労働時間を超えてはいけません。そのため、変形期間の所定労働時間の合計は以下の式によって計算された範囲内である必要があります。

1年単位または1ヶ月単位の場合

40時間×(変形期間の週数)+5.7時間×{(変形期間の暦日数)ー(変形期間の週数)×7日}

ただし、変形期間の週数は切り捨てとします。

また、月ごとの法定労働時間は以下の表の時間を上限として決める必要があります。

月の暦日数 28日 29日 30日 31日
月ごとの法定労働時間 160時間 165.7時間 171.4時間 177.1時間

1週間単位の場合

40時間

変形労働制の注意点

変形労働制を導入するにあたり留意すべき点もあります。

労働時間の繰り越しができない

実働時間が所定の労働時間を越えたときは、余剰分を翌日または翌月に繰り越すことはできません。

例えば、フレックスタイム制の清算期間における総所定労働時間を1ヶ月150時間と設定したとします。このとき、1ヶ月の実働時間が180時間であった場合、超過した30時間分の賃金は、当月に時間外手当として支払われなければなりません。翌月の総労働時間の一部に充当することはできません。

就業規則が適切かどうか確認する

法定労働時間は、原則1日8時間かつ1週間40時間と決められていますが、この法定労働時間を超える残業や休日労働を行う場合には、雇用者である会社と労働者の間に協定を締結する必要があります。この時間外・休日労働に関する協定のことを36(サブロク)協定と呼びます。

変形労働制は、36協定届が原則ではありませんが、所定労働時間等を超えて制度の対象者を労働させる場合は、36協定の範囲内とすることを求められる場合があります。時間外労働の上限は、労働基準法で「月45時間、年間360時間」と決められています。

また、有効期間の始期が2020年4月以降の36協定は、新様式に従う必要があります。そのため、自社の36協定が適切であるかを確認すると良いでしょう。

まとめ

変形労働制を導入する際は、メリットとデメリットを考慮し、最適な制度を選択すれば、経費削減や業務の効率化につながります。しかし、給与計算や制度の整備にはある程度手間がかかるため、勤怠管理や給与計算のフローやシステムの見直しと合わせて、導入を検討するとよいでしょう。

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