裁量労働制とは何か?働き方や仕組みについて解説

更新日:2021年11月19日
裁判

裁量労働制とは?

裁量労働制とは「みなし時間労働制」の一つで、労働時間が労働者の裁量にゆだねられている労働契約です。 例えば、裁量労働制の契約でみなし労働時間を1日7時間としている場合、労働時間が5時間でも10時間でも、支払われる給与は7時間分で統一されます。 裁量労働制を導入できる事業場は労働者保護の観点から一部の職種に限られています。

フレックスタイムと裁量労働制の違いは?

フレックスタイム制とは、出勤時間・退勤時間・1日の労働時間を従業員自身が決める制度です。ただし、法定労働時間の超過は認められません。法定労働時間とは労働基準法で決められている労働時間の上限です。原則として1日に8時間、1週間に40時間までと定められています。フレックスタイム制では、この範囲内で労働時間を決めることができます。仕事が細分化され、取引先と営業時間を連携させる必要がない情報通信業などで導入されています。 裁量労働制とフレックスタイムの共通点は、労働者側が就業時刻をある程度自由に決められる点です。一方で、フレックスタイム制にはみなし労働時間を設定することはできません。そのためフレックスタイム制は、所定労働時間は必ず働かなければならないという違いがあります。

みなし残業と裁量労働制の違いは?

みなし残業とは、賃金や手当にあらかじめ一定時間分の残業代を含む制度です。一定の残業代を固定して支払うため「固定残業制度」と呼ばれることもあります。厚生労働省の調査によると全企業の13.0%がみなし労働時間制を導入しています。 みなし残業と裁量労働制は、どちらも実際に時間分働いていなかったとしても働いたとみなし、一定の賃金を受け取ることができる制度です。しかし、働いたとみなす労働時間の範囲に違いがあります。裁量労働制は所定労働時間部分が対象ですが、みなし残業制度は残業時間部分が対象です。なお、残業時間部分とは所定労働時間から超過した労働時間を指します。 ※参考:厚生労働省『令和2年就労条件総合調査の概況』

高度プロフェッショナル制度の違いは?

高度プロフェッショナル制度も、裁量労働制と似ている制度です。高度プロフェッショナル制度とは、年収1,075万円以上を満たしており、専門的かつ高度な職業能力を有する労働者を対象に、労働時間に基づいた制限を撤廃できる制度です。働き方改革の取り組みの一つとして、2019年4月に施行されました。金融関係やコンサルタント業務で導入されています。 労働者の裁量により労働時間が決まる点は、裁量労働制と共通しています。しかし、裁量労働制は深夜手当や休日手当など割増賃金の支払い対象ですが、高度プロフェッショナル制度は深夜や休日労働に関して割増賃金の支払いはありません。

事業場外みなし労働時間制と裁量労働制の違いは?

事業場外みなし労働時間制とは、会社以外で仕事をする場合に所定の時間を労働したとみなす制度です。裁量労働制同様、みなし時間労働制の一つです。主に直行直帰の営業や在宅勤務などの職種に導入されています。 裁量労働制と事業場外みなし労働時間制の共通点は、みなし労働時間を設定する点です。しかし、裁量労働制は職種に制限がありますが、事業場外みなし労働時間制は職種による制限はありません。また、事業場外みなし労働時間制は、時間外労働・深夜労働・休日労働のすべてが割増賃金支払い対象となる点も異なります。

裁量労働制の仕組みについて

裁量労働制とは何かを確認したところで、実際にどのような仕組みになっているか確認しましょう。裁量労働制は、労働時間を労働者個人の裁量で決めることができます。フレックスタイム制には、「コアタイム」といって必ず出勤しなければならない時間が設けられますが、裁量労働制はコアタイムを設ける必要はありません。裁量労働制の労働者個人の裁量で決めることができる労働時間は、法定労働時間内における出勤時間・退勤時間・始業時間・終業時間・就業時間です。 裁量労働制には、残業という概念は基本的にありません。そのため、原則として残業に対する割増賃金は発生しません。ただし、下記の場合は割増賃金を支払う必要があります。

  • 22時以降翌朝5時までの間に深夜勤務した場合の割増賃金
  • 法定休日に労働した場合の割増賃金

これらの割増賃金を算出するために裁量労働制においても勤怠管理は重要です。裁量労働制は、実際の労働時間にかかわらず働いた時間とみなす「みなし労働時間」が大きな特徴です。しかし、みなし労働時間を設定するためには、労使委員会の設置や労働基準監督署への届出など、複数の手続きを行わなければなりません。特に、みなし労働時間の算出にあたっては労使の合意が絶対条件となることを覚えておきましょう。

裁量労働制におけるメリット・デメリット

裁量労働制はみなし労働時間の適用などにより、賃金を一定にできるなど、さまざまな特徴があります。ここからは裁量労働制を導入するメリットとデメリットを紹介します。

裁量労働制におけるメリット

裁量労働制の大きなメリットは、人件費が予測しやすいという点です。休日出勤や深夜労働は割増賃金の支払い義務は生じますが、時間外労働による割増賃金が発生しないため、基本的に賃金が一定に保たれます。そのため、みなし労働時間から人件費の総額があらかじめ算定できるというメリットがあります。 また賃金が一定であれば、労務管理部署の負担を大幅に削減できる点もメリットです。

裁量労働制におけるデメリット

裁量労働制のデメリットは、導入にあたり複雑な手続きが必要となる点です。裁量労働制を導入するためには、労使委員会の設置、委員全員の合意による決議、対象労働者の同意義務、労働基準監督署への届出などの手続きが必要です。 これらの手続きは複雑で、手続きに大きな負担を感じる企業は少なくありません。賃金の計算が楽になるため労務管理部署の負担は軽減されますが、裁量労働制を導入するための手続きに対する負担が増えるというデメリットがあることを知っておきましょう。

裁量労働制の導入方法

前述の通り、裁量労働制を導入するためには、いくつかの手続きが必要です。そこで具体的な裁量労働制の導入方法をご紹介します。 まず、手続きの手順は下記の通りです。

  • 労使協定を締結する
  • 協定届を作成する
  • 就業規則を変更する
  • 労働基準監督署へ届出を提出する
  • 雇用契約書を更新する

2の協定届とは、「専門業務型裁量労働制に関する協定届」です。労使協定で定めた内容を基に作成します。裁量労働制の対象となる従業員については、新たに雇用契約を結び直す必要があります。始業・終業時刻および所定時間外労働の有無に関する事項の一つに「裁量労働制」の項目を追加し、契約を更新してください。

まとめ

会社側にも労働者側にもさまざまなメリットのある裁量労働制は、正しく運用すれば労働環境の向上につながります。しかし、複雑な手続きが必要になるなど、デメリットもあります。 裁量労働制について正しい知識を持ち、メリットとデメリットを把握した上で、導入を検討しましょう。

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