歩合給と固定給との違いとは?それぞれのメリットとデメリットを解説

更新日:2023年08月23日
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労働の対価として支払いを受ける給与体系にはいくつかの種類があり、主に「固定給」「歩合制」「完全歩合制」があります。この記事では、歩合給と固定給の制度の違いとそれぞれのメリットとデメリットに加え、歩合給における残業代と社会保険の留意点についてまとめました。

歩合給とは?固定給、完全出来高制との違い

企業が従業員に支払う給与形態にはいくつかの種類があります。「固定給」、「歩合給」、そして「完全出来高制」についてそれぞれ解説します。

歩合給

歩合給とは一定の固定給に加えて、売上や成果が給料に反映される制度です。成果報酬型とも呼ばれます。正社員やアルバイト、インターンなど、企業と雇用契約を結んでいる方に適用されます。

例えば、月間売上の1%が月額給与に還元される契約を締結し、50万円を売り上げた際には固定給にプラスして5千円、100万円を売り上げた場合には1万円が支給されます。

なお、給与への還元率は雇用先との契約によって異なります。

歩合給が採用されるケースが多い業種は下記の通りです。

  • ディーラーやMR、不動産や保険などの営業職
  • 美容師、ネイリスト
  • エステティシャン
  • トラックやタクシーの運転手
  • 予備校講師
  • ファンドマネージャー
  • デザイナー、動画編集、ライターなどのクリエイター職 など

固定給

売上や成果に関係なく、働いた時間分の決まった金額が給与として支払われる制度です。日給制、週休制、月給制などの形で支払われます。

固定給の場合、50万円を売り上げても、100万円を売り上げても、売上実績に応じたインセンティブはなく、給与に変動は起きません。

完全出来高制

固定給がなく、成果分がそのまま報酬になる制度です。別名フルコミッション型とも呼ばれます。

労働基準法により、企業は従業員に対し労働時間分の給与を保証しなければなりません。そのため完全出来高制は、正社員の方やアルバイトの方など、企業と雇用契約を結んでいる従業員には適用されません。業務委託契約を結ぶ、個人事業主の方向けの制度です。

歩合給、固定給それぞれのメリット・デメリット

次に、歩合給と固定給のメリットとデメリットを解説します。自分自身が求める働き方や志向などと照らし合わせ、どちらの形態の仕事に就くか考えてみましょう。

歩合給のメリット

1.成果が出れば給料に反映される

売上や契約数など、実績をあげれば給与に反映されます。モチベーションを高めて、日々仕事に取り組むことができます。実力を出してしっかり稼ぎたいという方におすすめです。

2.社歴や年齢を問わない

社歴や年齢、役職を問わず、成果を出せばその分だけ高い給与を得ることができます。

3.生産性が上がる

働き方は自分自身で決めることができることも多いのが歩合給の特徴です。効率よく実績を出せる方法で、自分自身で工夫しながら生産性高く仕事することが可能です。

歩合給のデメリット

1.収入が安定しない

成果を出せば給与が上がりますが、成果が上げられなかった場合、給与は下がってしまいます。

月間売上の1%が月額給与に還元される契約の場合、500万円を売り上げた月は50万円が支給される一方、10万円しか売り上げがなかった場合は1万円しかもらえません。月によって大きな変動が起こります。

2.職場の雰囲気に要注意

個人業績が評価されるため、それぞれが自分自身の仕事や成績に集中してしまうあまり、チームワークが生まれづらく、お互いに配慮する余裕が欠けてしまう懸念が挙げられます。

3.仕事の切り替えが曖昧になる可能性も

成果を出そうと働きすぎてしまったり、業務時間以外でも仕事のことを考えてしまったりする可能性があります。オンとオフの切り替えを意識する必要があります。

固定給のメリット

1.安定した収入が見込める

成果が出せなかった時でも給与は変わらず、一定の収入を得ることができます。安定した暮らしを送ることができ、精神的にも安心することができます。

2.給料を気にせず休暇を取れる

稼働日の少なさによる売上の減少が起きても、給与には影響しません。つまり体調不良や家庭の用事などの事情が発生しても、安心して、必要な休みを取得できると言えます。

3.中長期的な視点が持てる

固定給の場合、成果は昇給や賞与の形で反映されます。日々の売上目標など、短期的指標やタスクに追われず、どちらかというと中長期的な視点を持って仕事に取り組むことができます。

固定給のデメリット

1.実績がすぐには反映されない

成果をあげても、給与に反映されるのは昇給時やボーナス支給時であるため、ある程度の時間がかかります。安定している点は良さと言える一方、給与と実績はタイムリーには連動しません。

2.目標を見失って飽きてしまうことも

目標を達成したり、スキルを上げたりしても、それが給与の形ですぐに反映されなければ、成長を感じづらいと言えます。その点においては歩合給よりも、固定給の場合は仕事する上でモチベーションが上がりづらいかもしれません。

歩合給の留意点2点

成果重視の給与形態である歩合給で働く場合、残業代が支払われなかったり、社会保険料の支払い額が変動したりするのでしょうか。

以下、歩合給において留意すべき点を2点ご紹介します。

1.残業代が支払われる条件

給与形態が歩合給であっても、雇用先とは雇用契約が発生しており、労働時間分の固定給は保証されています。そのため、勤務時間が1日あたり8時間、1週間あたり40時間を超えた場合は、歩合給でも残業代が支払われます。固定残業代が基本給に含まれていても、固定残業時間を超過すればその分の残業代は受け取ることができます。

なお、歩合給と固定給の残業代の計算方法は異なります。以下、詳しく解説します。

残業代の計算方法

歩合給における残業代を計算する際、まずは歩合給と固定給の残業代の単価をそれぞれ算出する必要があります。それらを合算したものが、残業代として支払われます。

【1.固定給の単価を算出】

固定給の残業代は、基本給に25%以上割り増しした金額が残業単価です。

  • 月給÷月平均所定労働時間×1.25
  • 日給÷1日の所定労働時間×1.25
  • 時給×1.25

【2.歩合給の単価を算出】

歩合給の残業代は、時間外労働の時間単価(125%のうちの100%分)は固定給で支払っていると見なされます。したがって、歩合給の1時間の残業代単価の計算は下記のとおりとなります。

歩合給の金額÷1ヶ月の総労働時間(時間外労働時間を含む)×0.25

【3.固定給と歩合給を合算】

最後に、固定給と歩合給の単価を足して、残業時間を掛けると、残業代が計算できます。

(固定給の単価+歩合給の単価)× 残業時間

それでは、以下の例をもとに残業代を算出してみましょう。

(例)

  • 1ヶ月の所定労働時間が180時間
  • 固定給が15万円
  • 歩合給が10万円
  • 固定給の計算

    150,000円÷180時間×1.25=1,042円

  • 歩合給の計算

    100,000円÷180時間×0.25=139円

  • 固定給と歩合給を合算

    (1,042円+139円)×20時間=23,620円

この場合、残業代は23,620円とわかります。

2.社会保険料の決まり方

歩合給で働き、実績に応じて給与に変動が起きる場合も社会保険料は一定です。

社会保険料は「標準報酬月額」を基準に算定されます。この「標準報酬月額」は、基本的には4月から6月における給与の平均値から算出されます。

固定給だけでなく、報酬として認定されるものすべてが標準報酬月額に含まれます。4月から6月にかけて通常よりも多くの残業代やインセンティブが支給されていても、その期間の報酬はすべて「標準報酬月額」の対象となり、1年間は一定の社会保険料を毎月支払うことになります。成果を上げられなかった月があっても、その月の社会保険料が下がるわけではない点に注意しましょう。

標準報酬月額について、詳しくは「標準報酬月額とは~決定と改定について~」をご覧ください。

まとめ|歩合給は成果が給料に反映される制度。自分に合った働き方を選ぼう

歩合給と固定給はそれぞれメリット・デメリットがあります。

歩合給の場合、成果を出した分が給与に還元され、社歴や年齢などにとらわれず稼ぐことが可能です。実績を出すために工夫して、生産性高く効率よく働くこともできます。また、歩合給であっても残業代は支給されます。

一方の固定給は、タイムリーなインセンティブがないためモチベーションの保ち方などに難しさがありますが、収入面の安定は魅力的です。

ご自身が求める働き方や志向性を踏まえ、どちらの給与形態が合うか考えてみましょう。

よくある質問

Q1.歩合給と固定給の違いは?

歩合給は売り上げによってインセンティブがつく給与形態で、固定給は売り上げに左右されずに一定の給料が支払われる制度です。

歩合給のある職種は、MRや保険などの営業職、美容師、ドライバー職、講師業、ファンドマネージャー、動画編集やライターなどのクリエイター職などが挙げられます。

Q2.歩合給のメリットは?

歩合給のメリットは主に3つです。

  • 成果が給料にすぐに反映される
  • 社歴や年齢を問わず給料を上げるチャンスがある
  • 仕事の生産性が上がる
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