リフレッシュ休暇とは?有給休暇との違いやメリット・デメリット、運用のポイントについて紹介

更新日:2024年08月30日
リフレッシュ休暇

リフレッシュ休暇は法律によって定められた休暇ではありませんが、従業員の福利厚生につながる大切な制度です。リフレッシュ休暇を導入し、業態に合わせて適切に運用することで従業員の満足度が向上し、企業全体のブランドイメージ向上が期待できます。

この記事では「休暇制度を活用することで福利厚生の充実やパフォーマンス向上につなげたい」と考えている企業担当者の方向けに、リフレッシュ休暇導入の意義や具体的な運用方法、有給休暇との違いについて解説します。

リフレッシュ休暇とは

リフレッシュ休暇とは、仕事で蓄積した心身の疲労やストレスの回復を目的に、従業員に付与される休暇です。

厚生労働省が実施した調査「令和5年就労条件総合調査概況」によると、リフレッシュ休暇の導入状況は12.9%です。これは従業員規模にかかわらず、企業全体の統計に基づいた数字であり、従業員の人数別に見た場合は以下の表のように、導入の比率が変わってきます。

リフレッシュ休暇の取得割合

企業規模 取得割合
1,000人以上 43.6%
300~999人 29.5%
100~299人 16.3%
30~99人 9.3%

参考:厚生労働省「令和5年就労条件総合調査の概況

リフレッシュ休暇と有給休暇の違い

リフレッシュ休暇は法律によって義務づけられていない法定外休暇です。一方、有給休暇は法律で定められた休暇であり、企業側にはすべての従業員に付与することが義務づけられています。

しかし、リフレッシュ休暇の導入や制度の内容(対象者や休暇期間など)は、各企業の裁量の範囲内で調整可能です。

リフレッシュ休暇と有給休暇の違い

リフレッシュ休暇 有給休暇
休暇の扱い 法定外休暇(法律で定められていない) 法定休暇(法律で定められている)
休暇の利用目的 各企業ごとに設定してよい 従業員が自由に決める
休暇日数 各企業ごとに設定してよい 法律に定められた条件に沿って取得日数が決まる
給与の発生 各企業ごとに設定してよい 支払いが必要

リフレッシュ休暇のメリットとデメリット

リフレッシュ休暇は従業員の疲労・ストレスの解消につながる大切な制度です。ここでは、リフレッシュ休暇導入のメリット・デメリットを解説します。

メリット:企業側

生産性が上がる

リフレッシュ休暇を導入し、当たり前の権利として位置づけることで従業員は上司や同僚に気を遣うことなく必要な休暇を取得し、心身をリフレッシュできます。

有給休暇を定期的なリフレッシュとして取り入れることで従業員の肉体的・精神的負担が軽減され、業務におけるパフォーマンス向上が可能です。

また、リフレッシュ休暇を継続的な制度として位置づけることですべての従業員が休みの状況を把握しやすくなり、チームとしての連帯感やコミュニケーションが深まります。

離職防止になる

「ワークライフバランス」を重視する従業員が増える今、休暇制度が適切に整った職場環境は、魅力的な企業に映ります。そのため、職場への満足度が高まったり、働きつづけたいというモチベーションが自然と生まれます。

勤続年数に応じてリフレッシュ休暇の取得日数を定める方式も増えています。従業員にとっては長く勤めるモチベーションにつながり、「職場環境への不満」による転職・退職防止が期待できます。

属人化防止になる

特定の従業員に業務が集中すると、その人が不在時に仕事が滞るリスクがあります。仕事の偏りをなくすためには、日常的な業務の共有やカバー体制の確立が大切です。そして、偏りをなくすことで自然と業務全体の属人化防止につながります。

リフレッシュ休暇の導入にむけて、社内体制として「すべての従業員が幅広い業務について把握している状況」を作り出すことで、ヒューマンエラーを防止し、長期的な生産性の向上が可能になります。

メリット:従業員側

心身の疲労が回復する

心身の疲労回復は、リフレッシュ休暇導入の本来の目的です。日々の業務で蓄積されたストレスや疲れを取り除くことで、リフレッシュ後には新たな気持ちで仕事に取り組むことができます。

さらに、心身のリフレッシュは仕事のパフォーマンス向上に直結するため、従業員にとって非常に有益です。

プライベートの充実につながる

プライベートの充実はワークライフバランスの両立のうえでも欠かせない要素です。

休暇を適切に取得することは、仕事のストレスから解放され、趣味や家族・友達との時間を持つなど、心身のバランスを取り戻すことができます。そのため、日常生活に活力が生まれ、仕事への意欲も高まります。

デメリット:企業側

リフレッシュ休暇の導入には、一定の時間やコストがかかります。例えば、休暇前には引き継ぎが必要であり、一定のリソースを確保しなくてはなりません。リソースが充分に確保できず、従業員同士の引き継ぎがうまく行われなければ業務が滞るリスクがあります。

また導入当初は社内の周知徹底のため、取得条件や日数など制度の整備が必要です。

有給休暇がまだ充分に社内に根づいていない場合は、部署ごとの講習会を定期的に開くことで現場レベルを含めた周知徹底につながります。また、社内にポスターやパンフレットとして資料を配布したり、PDFなどにまとめてデータで共有したりする試みも有効です。

リフレッシュ休暇の導入にあたっては、制度作りから周知徹底を含め、必要な工数をシミュレーションしておきましょう。

デメリット:従業員側

リフレッシュ休暇の前には休暇を取らない従業員の間で業務を割り振る必要があるため、、一時的に作業量が増える場合があります。特に、属人性の強い複雑な業務やクライアントと接する業務の場合、引き継ぎのウェイトが必然的に大きくなるため、タイミングによってはかえって業務負担が重くなってしまうかもしれません。

企業としては、すべての従業員が自由なタイミングでリフレッシュ休暇を取得できるよう、日頃から業務バランスを調整しておく必要があります。

リフレッシュ休暇の日数や条件

リフレッシュ休暇は法律で定められた休暇制度ではないため、導入における日数や要件についてはそれぞれの企業の裁量に委ねられています。

適切な日数と明確な取得条件を設けることで、従業員が利用しやすくなり、制度としての定着が可能ですが、ここでは一般的な目安となる日数や条件について紹介します。

日数について

厚生労働省の「平成31年就労条件総合調査の概要」によれば、リフレッシュ休暇1回あたりの最高取得日数の平均は「5.5日」です。

有給休暇の平均付与日数が従業員1人あたり17.5日(厚生労働省「令和5年就労条件総合調査の概況」)、平均取得日数が10.5日であることを考えると、リフレッシュ休暇の取得日数はまだまだ多いとは言えません。

法律によって明確に定められている有給休暇すら上司の圧力や周囲への遠慮によって取得しにくい状況と照らし合わせると、リフレッシュ休暇もまた制度としての周知徹底および上層部による積極的な取得の推進が課題です。

取得条件について

リフレッシュ休暇のよくあるパターンとしては、勤続年数に応じて付与日数が決まっているケースです。

例えば、勤続3年以上の従業員に対して年間5日間を付与したり、勤続5年以上の従業員に対して年間7日間を付与したりするなど、「長く勤めるほど長期の休暇が取得しやすくなる」システムを整えることで従業員の勤続意欲向上、およびスキルの高い人材確保につながります。

また、年齢が上がるほど最大の取得日数が増えるシステムを採用している企業も増えています。これは、年齢とともに家族が増えたりプライベートが変化したりと、従業員の長期的なライフスタイルに柔軟に合わせるための試みです。

リフレッシュ休暇運用のポイント

たとえリフレッシュ休暇を導入しても、現場で働く従業員が制度として活用できなければ意味がありません。また、現場のみならず上層部や経営陣を含めてリフレッシュ休暇の意義を理解し、運用することではじめて誰もが気軽に利用できる「活きたシステム」として定着します。

ここからは、リフレッシュ休暇を社内全体で活用するポイントを解説します。

取得条件を明確にし、周知を図る

リフレッシュ休暇の効果的な運用にあたっては事前の周知徹底が大切です。休暇の取得条件を明確にし、すべての従業員に根気強く周知することで取得率が安定し、福利厚生の充実につながります。

偏りのない周知徹底のうえでは、社内のポスター掲示やリーフレット作成も効果的です。

制度を利用しやすい環境を整える

すべての従業員が休暇を取得しやすい環境を整えることで、制度の利用が促進され、休暇の効果を最大限に引き出せます。

有給休暇の場合、企業によっては期間中の給与水準が減額されるところも少なくありません。給与の減額はたとえ一時期であっても経済的不安につながり、「給与を下げたくないから」という理由で取得をついついためらってしまう場合もあります。

リフレッシュ休暇も、期間中の給与水準は企業側の自由裁量ですが、厚生労働省公表の「平成31年 就労条件総合調査」を見ると、95.9%の企業がリフレッシュ休暇中に給与を全額支給しています。これは、期間中であっても全額支給を徹底することで従業員の経済的不安をなくしているとも捉えられます。

給与面を含め、制度を利用しやすい環境を整えることで従業員が安心して休暇を取得でき、職場の満足度向上につながります。

業務の引き継ぎをしっかりと行う対策を取る

リフレッシュ休暇の導入にあたって大きなハードルとなるのが業務の偏りです。専門性の高い業務にあたっている従業員の場合、「自分が休んだら業務の面で迷惑がかかる」という不安から休暇取得をためらってしまう可能性があります。

業務の偏りをなくすには引き継ぎの円滑化が大切です。すべての業務について引継ぎ資料を作成し、まとめたマニュアルとして共有することで引き継ぎのリソースを大幅に削減できます。

ただ、いざリフレッシュ休暇を申請する際にすべてのマニュアルを作成するのは非常に大変な労力を必要とします。そのため、休暇の申請が少ない時期から社内全体でマニュアルの作成および共有を進めておき、仕組みとして整えることで休暇の取得促進につながります。

引き継ぎに必要な資料や情報を整理し、普段から共有フォルダや社内のクラウドシステムなどに保存しておくことも効果的です。

フィードバックと継続的な改善

リフレッシュ休暇をより取得しやすい制度へとブラッシュアップするためには、フィードバックと継続的な改善が不可欠です。制度の導入後、従業員からのフィードバックを定期的に収集することで、運用状況や効果を評価できます。

勤怠管理システムの活用

勤怠管理システムの導入はリフレッシュ休暇の効果的な運用に不可欠です。勤怠管理システムを利用することで、従業員の休暇取得状況や効果を正確に把握し、継続的な管理が行えます。

例えば、勤怠管理システムとの連携によって従業員の勤務状況を把握し、職業生涯の節目にリフレッシュ休暇の取得を促すことで、制度を活用する意識の定着が期待できます。

さらに、勤怠管理システムによって従業員の労働状況を蓄積することで、繁忙期と閑散期を分析し、リフレッシュ休暇をはじめとした各休暇制度の取得時期について適切な調整をすることも可能です。ただ、いざリフレッシュ休暇を申請する際にすべてのマニュアルを作成するのは非常に大変な労力を必要とします。そのため、休暇の申請が少ない時期から社内全体でマニュアルの作成および共有を進めておき、仕組みとして整えることで休暇の取得促進につながります。

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その他の働きやすい環境づくり

従業員の働きやすさを整える制度はリフレッシュ休暇だけではありません。いくつかの制度を複合的に組み合わせることで福利厚生の充実につながり、従業員のモチベーション向上や生産性向上が期待できます。

ここでは、リフレッシュ休暇以外にも活用できる、働きやすさ向上につながる施策例を紹介します。

フレキシブルな労働時間

フレキシブルな労働時間(フレックスタイム制)の導入は、働きやすい環境を作るうえで非常に効果的です。固定された労働時間では、多様化した働き方や家庭の事情、個人的な都合に対応しにくく、従業員のストレスが増える可能性があります。

柔軟な働き方を認めることで、従業員のモチベーション向上とともに、「長くこの企業で働きつづけたい」という帰属意識を高めるうえで有効です。

例えば、業務の生産性・創造性向上の観点からフレックスタイム制度を導入したり、在宅勤務や育児・介護との両立を支援する制度を設けることで、働き方の多様化をサポートできます。

オフィス環境の整備

働きやすい環境を作るためには、オフィス環境の整備が重要です。快適に働きやすい環境の整備は従業員のモチベーション向上に直結します。

例えば、オフィス内にリラックススペースを設けることで、ちょっとしたリフレッシュタイムやコミュニケーションスペースとして活用が可能です。

また、椅子を身体に負担のかからないものに替えるだけでも作業の負担を軽減し、従業員の満足度につながります。

オフィスのレイアウトを少し変えることで雰囲気やコミュニケーションの取りやすさが大きく変わることがあります。

業務のオン・オフを区別しやすい環境作りが大切です。

整備例 期待できる効果
リラックススペースを設ける 社内のコミュニケーション促進、気分転換につながる
椅子を変える 作業負担の軽減、気分転換
オフィスのレイアウトを変える 視覚的・心理的なモチベーションアップ

従業員の定期的な健康管理

従業員の適切な健康管理も企業にとっては重要な取組みの一つです。

職場だけでなく、家庭や友人関係でのストレスも積み重なることがあり、取り返しのつかない事態になる前に対処することで従業員の長期的な満足度向上につながります。例えば、健康診断と同様の位置づけでメンタルヘルスチェックを導入したり、産業医の受診を促したりすることも、健康管理として重要です。

一定以上の規模の企業に対しては、従業員に対し、業務としての健康診断を課すことが義務づけられています。健康診断の受診に消極的な従業員に対しては上層部などが継続的に健康管理の意義について周知することも必要です。

まとめ|リフレッシュ休暇で働きやすい職場環境に

リフレッシュ休暇は、従業員の心身の疲労およびストレスの回復を主な目的とした休暇です。有給休暇とは違い、法律によって定められた休暇ではなく、取得日数や期間中の給与水準については企業の自由裁量に委ねられています。

リフレッシュ休暇を勤続年数の長い従業員への「ボーナス」として位置づけ、周知徹底することで業務へのモチベーションが高まり、生産性向上につながります。また、誰もが気軽に休暇を取得できる職場環境を整え、業務をカバーし合える体制を作っておくことで社内の連携強化が可能です。

フレックスタイム制やリモートワークなど、複数の制度と組み合わせ、すべての従業員にとって安心して働きやすい環境を整えられます。

よくある質問

Q1.リフレッシュ休暇の付与日数はどのくらいが適切ですか?

リフレッシュ休暇の期間は企業の方針や業務内容によって異なりますが、一般的には数日から1週間程度が適切です。長すぎず短すぎない期間を設定することが重要です。

Q2.リフレッシュ休暇の取得が推奨されるタイミングは?

リフレッシュ休暇の取得は、「職業生涯の節目」に推奨されることが一般的です。

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