電子帳簿保存法とは?概要や対象書類、企業に必要な対応および手順をわかりやすく解説

更新日:2024年06月28日
電子帳保存法とは

電子帳簿保存法とは、企業が作成した取引関係書類(領収書や請求書、納品書など)や国税関係書類(決算書や損益計算書、貸借対照表など)を適切に電子化・保存することを義務付けた法律です。

電子帳簿保存法自体は1998年に施行された法律ですが、2024年1月から細かい要件を変更し完全義務化されたことで、多くの企業で電子化を推進しやすくなりました。法に則った対応を行うことで、ペーパーレス化の推進や経理業務の効率化が見込めます。

この記事では、改正電子帳簿保存法の概要や具体的な保存要件、重要ポイント、導入ステップなどをわかりやすく解説します。「電子帳簿保存法の改正のポイントを知りたい」「法令遵守のために必要な対応を知りたい」という方は、ぜひご覧ください。

2024年1月から完全義務化された「電子帳簿保存法」とは?

2024年1月から完全義務化された「電子帳簿保存法」とは、企業が取引や経理などで作成した帳簿や領収書、請求書、決算書などの国税関係書類を電子化する際、要件を満たす適切な方法での保存を義務付けた法律です。2022年1月からの2年間は猶予期間でしたが、2024年1月からは電子保存が完全義務化されました。

電子帳簿保存法の完全義務化によって細かい要件が定められましたが、まずは以下2点の大きな変更部分を押さえることが重要です。

  1. 電子データで受け取った書類は紙での保存が認められない従来までは認められていた「PDFで受け取った請求書を紙に印刷して保存する」といった行為が禁止されます。「紙の文化が根強く残っている」という企業は要注意です。
  2. 電子データの保存方法には「電子取引・電子帳簿等保存・スキャナ保存」の3種類があり、それぞれで異なる対応が求められる 電子帳簿保存法は「各種書類を電子データで保存すること」の大枠を定めた法律です。より具体的に「どの書類を・どのような条件を満たして電子保存するのか?」という点は、上記の3種類ごとで異なります。

なぜ電子帳簿保存法への対応が必要なの?

今回の電子帳簿保存法への対応が必要な目的は、大きく以下2点です。

  • 企業の帳簿管理を効率的かつ正確に行う
  • 企業のペーパーレス化を促進する

従来まで企業の帳簿や経理関連の書類は紙で保管されていました。しかし、紙では手作業による記載ミスや紛失といったリスクがあり、企業の正確な財務状況把握を難しくしていました。

2024年1月から電子帳簿保存法を完全義務化したことで、人的ミスを減らし従来よりも正確な会計処理を実施できます。ペーパーレス化にもつながるため、企業の無駄な支出を減らし業務効率化につながることも期待されます。

電子帳簿保存法の対象者は?

法人税を納める普通法人や公益法人、個人事業主など、事業を営む全事業主が対象です。とくに、今回の改正で新たに義務化された「電子取引(電子的に送受信した取引情報のデータ保存)」については、全事業者に必須で対応が求められています。

電子帳簿保存法における「電子データの保存方法」は3種類!対象書類も合わせ紹介

電子帳簿保存法では、保存方法は「電子取引・電子帳簿等保存・スキャナ保存」の3種類に区分されます。

電子帳簿保存法における3つの保存法

参照:国税庁「電子帳簿保存法が改正されました

保存方法ごとに義務の有無や対象書類は異なります。

電子取引(対応は義務)

「電子取引」とは、電子的な方法で送受信した取引情報をデータで保存することです。

電子的な取引データ(例)

  • メールのPDF
  • ホームページからのダウンロード
  • クラウドサービス
  • スクリーンショット
  • 電子決済
  • ICカード決済

保存対象となるのは、業務で発生した以下のような取引関係書類です。

電子取引で保存対象となるデータ(例)

  • 請求書
  • 領収書
  • 契約書
  • 見積書
  • 納品書
  • 注文書

電子帳簿等保存(対応は任意)

「電子帳簿等保存」とは、自社のパソコンなどで電子的に作成した書類をデータのまま保存することです。対象の書類は大きく以下3つに分かれます。

書類の種類
国税関係の帳簿書類
  • 固定資産台帳
  • 仕訳帳
  • 総勘定元帳
  • 経費帳
  • 売上帳
  • 仕入帳 など
決算関係書類
  • 損益計算書
  • 賃借対照表
  • 棚卸表 など
自社から取引先に発行した書類
  • 請求書
  • 領収書
  • 契約書
  • 見積書
  • 納品書
  • 注文書 など

スキャナ保存(対応は任意)

「スキャナ保存」とは、紙で受領・発行した書類をスマホで撮影したりスキャンしたりした後、画像データで保存することです。

対象書類の一例は以下の通りです。

  • 請求書
  • 領収書
  • 契約書
  • 見積書
  • 納品書
  • 注文書

【電子データの保存方法別】電子帳簿保存法で求められる要件とは

具体的な電子保存要件は、上記で紹介した「電子取引・電子帳簿等保存・スキャナ保存」ごとに異なるため、それぞれで確認が必須です。

電子取引

電子取引では、以下2つの要件を満たすことが必要です。

それぞれで細かい注意点があります。

真実性の確保

真実性の確保とは、改ざんされないような形でデータを保存することです。以下いずれかの措置が求められます。

  1. 取引相手から「タイムスタンプが付与されたデータ」を受け取る
  2. 自社でデータを受け取ったら、2ヶ月+7営業日以内にタイムスタンプを押す
  3. データの訂正および削除履歴を記録できる(もしくは訂正および削除不可能な)システムを利用する
  4. データの訂正および削除について、事務処理規程を定めて運用する

1・2・3を行う場合は、利用可能なシステム選定や取引相手との調整が必要な場合があります。

4の事務処理規程であれば、システムの新規導入や変更は不要です。事務処理規定の雛型は国税庁の「参考資料(各種規程等のサンプル)」で公開されているため、対応を考えている事業者の方は参考にしてください。

可視性の確保

可視性の確保とは、データをスムーズに確認・出力できるよう、以下の措置を行うことです。

  1. データを確認できる見読可能装置(一般的なパソコンやプリンターなどでOK)を備え付ける
  2. 検索機能を確保し「取引年月日・取引金額・取引先」のチェック体制を整備する
  3. (自社開発プログラムを使用する場合)税務職員や企業担当者が電子データを参照できるよう、データ作成ソフトのマニュアルを整備しておく

検索機能については、専用ソフトの活用・ファイル名やフォルダ名の明示・表計算ソフト(Microsoft ExcelやGoogleスプレッドシートなど)での索引簿作成などが認められています。

ただし、以下の条件に該当する事業者は検索要件が不要です。

  • 年間売上高が5,000万円以下で、税務調査の際に取引データを取引年月日や取引先ごとなどに整理された状態でダウンロードできる事業者
  • 税務調査の際に取引データを取引年月日や取引先ごとなどに整理した状態でダウンロードできる

詳細は「国税庁 | 電子取引データの保存方法をご確認ください」でご確認ください。

電子帳簿等保存

主な要件として以下が定められています。

  • 記録事項の訂正および削除履歴を確認できる電子計算機処理システムを使⽤する
  • 通常の業務処理期間経過後に入力した場合、その旨を確認できる電子計算機処理システムを使⽤する
  • 「電子化した帳簿の記録事項」および「その帳簿に関連する他の帳簿の記録事項との間」における相互の関連性を確認できる

電子データの場合、第三者が意図的に中身を改ざんするリスクが存在します。この改ざんリスクを防止するため、上記の要件により「作成した帳簿や書類の訂正および削除履歴を確認できる状態にする」と定めています。

詳細は「国税庁 | はじめませんか、帳簿・書類のデータ保存」をご確認ください。

スキャナ保存

主な要件として以下が定められています。

  • 以下いずれかの期間内にスキャナ保存を行う
  • 書類の作成または受領から約7営業日以内
  • 企業の業務処理サイクル期間(最長2ヶ月以内)を経過してから約7営業日以内
  • 一定水準以上の解像度(200dpi相当以上)で保存し読み取りやすくする
  • タイムスタンプを付与できる
  • 14インチ以上のカラーディスプレイ・カラープリンタ・操作説明書を備え付けている

タイムスタンプとは、電子データが保存された日付および時刻を確認できる、電子上の刻印を指します。ただし、上記で解説した入力期間内にスキャナ保存したことを確認できる場合、タイムスタンプの付与は不要です。

詳細は「国税庁 | はじめませんか、書類のスキャナ保存」をご確認ください。

電子帳簿保存法でとくに押さえるべき4つのポイント

本章では、2024年1月からの法改正における変更ポイントの中で、とくに押さえるべき4点を簡単に解説します。

主に義務化された内容やペナルティ強化について触れています。「意図せず要件を満たしていなかったことで法律に違反した」という状態を避けるよう、必ずチェックしてください。

改正電子帳簿保存法のポイント

1.電子取引の電子保存義務化

従来容認されていた「Webの請求書を紙に印刷して保存する」といった行為が不可となりました。ただし、2023年12月31日までの猶予期間に条件を満たした事業者については、この限りではありません。

2.スキャナ保存の適正事務処理要件が廃止

従来まで、スキャンした重要書類の処理や廃棄時は「記録事項の確認(相互けん制)」「定期検査」といった細かな要件が設けられていましたが、廃止されました。これにより、「紙の書類の受領→スキャン→廃棄」のサイクルが早くなり業務効率化が見込めます。

3.電子取引・スキャナ保存における不正のペナルティ強化

電子取引・スキャナ保存では、電子データの記録事項に関する改ざんや隠蔽などの不正があった場合、通常の重加算税に加え10%がペナルティとして加算されます。

4.帳簿・書類の税務署への事前申請が不要

従来までの電子帳簿保存法による電子化で求められていた、以下2点が不要になりました。

  • 申請書作成
  • 運用開始3ヶ月前までの所轄税務署への申請

そのため、準備が整えば全事業者がすぐに電子化を開始できます。

電子帳簿保存法に向けて事業者が行うべき4ステップ

2024年1月からすでに改正電子帳簿保存法が施行されているため、未対応の事業者は、早急に以下の4ステップを踏まえて要件を満たす必要があります。

事業者が行うべき4ステップ

STEP1.帳簿・書類の保存方法を検討する

まずは、帳簿および書類ごとに保存方法を決めます。自社の業務を非効率にしている書類を把握し、その中でもとくに件数が多く回覧が多い書類(請求書や領収書など)を電子化することで、大きな効果が期待できます。

また、2023年10月から始まったインボイス制度によって請求書の保存が増えるため、まずは請求書や領収書の電子化も効果的です。

インボイス制度とは、企業間の取引で請求書データを電子化し、それをやりとりすることで、請求書の受領や承認、支払い処理などの業務を効率化する制度です。インボイス制度について詳しくは、国税庁「特集 インボイス制度」をご覧ください。

STEP2.保存先システムを選定・導入する

次に、保存先システムの選定と導入を行います。「公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)の認証マーク」が付与された経理システムであれば、電子帳簿保存法の機能要件を満たすと認定されているためおすすめです。

ただし、現状利用している経理システムでも、アップデートやオプション機能を追加することで要件に対応できる可能性があります。

ちなみに、法的要件には定められていませんが、データの消滅リスクに備えてバックアップデータを一定期間保存できるシステムもおすすめです。

システムの選定で迷う場合は、国税庁の要件適合性に関する事前相談窓口の利用も可能です。

STEP3.業務フローを見直し、社内外へ発信する

帳簿を扱う部署における業務フロー見直しを行います。

紙の請求書や領収書が電子データになると、取引先とのやり取りや従業員から経理部への支払い申請、経費精算などの方法が変わる可能性があります。

変更後のフローは社内外に発信し、ルールを浸透させることが必要です。

STEP4.システム開発関係書類・事務処理規程を備え付ける

必要に応じて「データの真実性確保」に向けた事務処理規程の整備を進めます。自社開発のプログラムを使用する場合は、システム開発関係書類の備え付けも必要です。

上記の要件は「必ずしも全事業者で必要」というわけではないため、自社のフローに合わせて整備してください。

電子帳簿保存法への対応における注意点

最後に、電子帳簿保存法の対応推進にあたっての留意点を解説します。

  • 電子帳簿保存法に未対応の場合は罰則がある
  • 社内でデータ保存に関する規定を整備する

セキュリティリスクに気を付ける上記の留意点へ対応するには、以下のような対策の整備が必要です。

セキュリティ強化
  • 暗号化
  • アクセス制限
故障・災害対策
  • 定期的なバックアップ
  • 定期的なメンテナンス
  • 複数台でのデータ管理
ヒューマンエラー防止
  • データ取り扱いについてのルール策定
  • 定期的なソフトウェア更新

電子帳簿保存法に未対応の場合は罰則がある

税務調査で「宥恕措置の未適用」「期間外に電子帳簿保存法に基づく方法で保存していない」「真実性や可視性を確保する措置を行っていない」ということが発覚した場合、以下の罰則が適用される可能性があります。

  • 青色申告の承認取り消し
  • 経費の否認と追徴課税
  • 100万円以下の過料(会社法976条8号による)

社内でデータ保存に関する規定を整備する

改正された電子帳簿保存法では、電子データについて保存要件が定められています。社内でデータ保存に関する規定を設けて周知しなければ、検索要件やタイムスタンプの内容などをうっかり見落とす従業員が出るかもしれません。

上記の罰則を受けないために、データ保存規定を整備した後は社内での徹底周知が必要です。

セキュリティリスクに気を付ける

紙の書類から電子データ保存に切り替える際、企業には情報セキュリティのさらなる強化が求められます。

脆弱なシステムの利用や不適切な運用を行うと、重要な帳簿や書類が流出したり不正アクセスが発生したりするかもしれません。

まとめ|2024年1月から完全義務化済みのため未対応の事業者は整備を進めよう

2024年1月から、電子帳簿保存法への対応が全事業者に完全義務化されました。最初は対応に苦労するかもしれませんが、書類の電子保存によってペーパーレス化や業務効率化を実現し、生産性向上が期待できます。定められた要件を守り情報セキュリティ対策も行うことで、電子帳簿保存法のメリットを享受できます。

よくある質問

Q1.電子帳簿保存法とは?
電子帳簿保存法とは、企業が取引や経理などで作成した帳簿(取引の日付・内容・金額・場所などの情報を含み財務状況を管理する書類)を電子化する際に、適切な方法での保存を義務付けた法律です。
Q2.電子帳簿保存法に違反した場合はどうなる?

電子帳簿保存法は全事業者対象の法律です。そのため、税務調査で「電子帳簿保存法に基づいた方法で保存していない」「真実性や可視性を確保する措置を行っていない」などが発覚した場合、以下の罰則を受ける可能性があります。

  • 青色申告の承認の取り消し
  • 経費の否認と追徴課税
  • 100万円以下の過料
Q3.電子帳簿保存法はいつから義務化されるの?
2024年1月から完全義務化されています。未対応の事業者は早急な対応が必要です。
Q4.紙の請求書は紙のまま保存できるの?
取引先から紙で受け取った書類は、紙のまま保存できます。今回の改正では「電子的に受け取ったデータを電子的に保存する」ということが定められています。

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