みなし労働時間制とは?事業場外みなし労働などの種類や導入メリット、残業代の有無などを解説

更新日:2021年05月26日
営業マン

みなし労働時間制とは、実際の労働時間に関わらず「事前に設定した時間だけ働いた」とみなす制度です。例えば事前に設定した労働時間が「8時間」の場合、6時間働いても10時間働いても、8時間分の給料を支払います。

みなし労働時間が実際の労働時間より短くても同じ給料が支払われるため、従業員のモチベーションを高め、最終的な生産性向上につながることが期待できます。運用する際は、「必要に応じて労使協定を締結する」「勤怠管理システムを導入して労働時間を把握する体制を整える」といったポイントを押さえることが大切です。

本記事では、みなし労働時間制の概要や種類、導入メリット、運用のポイントなどを解説します。

目次

みなし労働時間制とは?

みなし労働時間制とは、実際の労働時間に関わらず「事前に設定した時間だけ働いた」とみなす制度のことです。例えば事前に労働時間を「8時間」と設定した場合、6時間働いても10時間働いても「8時間働いた」とみなして、8時間分の給料を支払います。

みなし労働制には、以下の2種類があります。

  • 事業場外みなし労働時間制
  • 裁量労働制

事業場外みなし労働時間制

事業場外みなし労働時間制とは、主に以下の条件を満たす場合に適用できる制度のことです。

  • 従業員が主に職場外で業務を行っている
  • 管理者による指揮命令が難しい
  • 正確な労働時間の算出が難しい

例えば「直行直帰で外回りを行う営業担当者」は、上記の条件に該当するため、事業場外みなし労働時間制を適用できます。

一方、職場外で業務を行ったとしても、以下のように「管理者の指揮命令下にある=正確な労働時間を算出できる」というケースでは、事業場外みなし労働時間制は適用されません。

  • 複数人で勤務しており、そのメンバーの中に労働時間の管理担当者がいる
  • 無線やポケットベルなどを使い、適宜管理者の指示を受けながら働いている
  • 職場内で当日の業務の具体的な指示を受けた後に、職場外で指示通りに業務を行って帰社する

また、以下の条件に該当する形で在宅勤務を行う場合も、事業場外みなし労働時間制が適用されます。

  • 業務が従業員の自宅で行われる
  • 在宅勤務で利用する通信機器が「管理者の指示により常に通信可能な状態に設定されている」ということがない
  • 管理者の具体的な指示に基づいて業務が行われていない

詳細は「厚生労働省|「事業場外労働に関するみなし労働時間制」の適正な運用のために」をご確認ください。

裁量労働制

裁量労働制とは、従業員個人の裁量で具体的な労働時間を設定できる制度のことです。主に以下の項目を、従業員の裁量で決定できます。

  • 法定労働時間内における出勤時間
  • 退勤時間
  • 始業時間
  • 終業時間
  • 就業時間

裁量労働制では、コアタイム(必ず出勤するよう決められている時間)が不要です。

裁量労働制には、大きく以下の2種類があります。

  • 専門業務型:「仕事の遂行方法のほとんどを従業員の裁量に任せる必要がある」「企業が業務の遂行手段や時間配分などを指示出しすることが難しい」と認定された職種
  • 企画業務型:「事業運営に関する企画・立案・調査・分析業務に該当している」「遂行方法のほとんどを従業員の裁量に任せる必要がある」と認定された職種

裁量労働制の詳細については、「裁量労働制とは?仕組みや対象職種、メリット・デメリット、導入方法などをわかりやすく解説」をご確認ください。

みなし労働時間制と似ている言葉との違い

みなし労働時間制と似ている言葉もいくつかあります。それぞれの内容を正しく把握し自社にマッチした制度を選ぶためにも、必ず違いを確認しておいてください。

みなし残業代制

みなし残業代制

あらかじめ給料や手当に一定時間分の残業代を含めて支払う制度のことです。みなし労働時間制と比較すると、以下のように「働いたとみなす労働時間の範囲」が異なります

フレックスタイム制

従業員が個人の裁量で労働時間を設定できる制度のことです。フレックスタイム制における労働時間は、法定労働時間(8時間/日・40時間/週まで)の中で設定できます。みなし労働時間制と異なりコアタイムが設定されており、所定労働時間内は必ず働かなければなりません。

みなし労働時間制の導入メリット

みなし労働時間を導入すると、以下のようなメリットを実感できます。

  • 従業員のワークライフバランスを向上させてモチベーションアップにつなげられる可能性がある
  • 優秀な人材の定着率を高められる可能性がある
  • 最終的な企業の生産性向上や業績アップが期待できる
  • 労働時間や人件費を管理しやすくなる

従業員のワークライフバランスを向上させてモチベーションアップにつなげられる可能性がある

裁量労働制とは、従業員個人の裁量で具体的な労働時間を設定できる制度のことです。主に以下の項目を、従業員の裁量で決定できます。

みなし労働時間制では「労働時間を8時間に設定したが勤務自体は6時間で終わる」というように、短時間で業務が終わるケースもあります。業務が早めに終われば従業員はプライベートも大切にしやすくなるため、ワークライフバランスを改善可能です。

ワークライフバランスを改善できれば、従業員は趣味や子育て、介護など思い通りのことに時間を使えるため、モチベーションアップも期待できます。

しかもみなし労働時間制では、事前に設定した時間より早く業務が終わっても、給料は変わりません。「短時間勤務にも関わらず普段通りの給料がもらえる」というのは、従業員のモチベーションアップに大きな影響を与えるはずです。

優秀な人材の定着率を高められる可能性がある

みなし労働時間制によって従業員のワークライフバランスを改善し、職場への満足度を高められれば、優秀な人材の定着率を向上できる可能性があります。とくに人材不足に悩む企業にとっては、優秀な人材が引き続き自社で働いてくれるというのは大きな魅力です。

最終的な企業の生産性向上や業績アップが期待できる

上記で解説したような「従業員の仕事へのモチベーションアップ」「優秀な人材の定着」を実現できれば、従業員それぞれが成果を残すために積極的に業務に取り組んでくれる可能性が高まります。従業員の業務への取り組み方が改善されて、企業の生産性が向上すれば、長期的な業績アップを実現できるかもしれません。

みなし労働時間制を導入する際は、労使協定の締結や就業規則の見直しなどが必要なため、最初は企業に負担がかかるかもしれません。しかし運用体制が整えば、業績向上という大きな成果をもたらす可能性があるため、ぜひ導入を検討してみてください。

労働時間や人件費を管理しやすくなる

みなし労働時間制では「事前に決めた労働時間分は働いた」とみなす制度であるため、労働時間や給料を計算する手間を大きく省けます。とくに従業員数が増えている企業からすると、労働時間や人件費をスムーズに計算できれば、人事労務担当者の負担を大きく軽減できるため魅力的です。設定したみなし労働時間が法定労働時間内なら、残業代も発生しません。

みなし労働時間制の導入デメリット

一方でみなし労働時間制には、以下のデメリットもあります。

  • 複雑な導入手続きが必要になる
  • 導入の意図を丁寧に共有しないと従業員から不満が出る可能性もある

複雑な導入手続きが必要になる

一方でみなし労働時間制には、以下のデメリットもあります。

みなし労働時間制を導入する際は、労使協定の締結や就業規則の変更などが必要なため、気軽には導入できません。

労使協定とは、企業と従業員が締結する「労働環境に関するルール」のことです。労使協定を締結することで、「閑散期の労働時間を短くする代わりに繁忙期は残業してほしい」「従業員の働き方に合わせてコアタイムをずらしたい」といった企業の希望に合わせた働き方を実現できます。

この労使協定の締結では、「従業員の代表者との協議」「労働基準監督署への申請」「就業規則の変更」などが必要なため、慣れていないと手続きを複雑に感じるかもしれません。

労使協定については「労使協定とは?36協定との違いや種類、締結ステップなどをわかりやすく解説!」をご覧ください。

導入の意図を丁寧に共有しないと従業員から不満が出る可能性もある

みなし労働時間制は本来、従業員の労働時間に柔軟性を持たせて、より働きやすい職場環境を構築するための制度です。事前に定めた労働時間より短い時間のみ働いても、給料は変わらないまま早く帰宅できるため、上手く運用すれば従業員のモチベーションアップが期待できます。

しかし、従業員へ上記のような導入の意図を説明しないと、「残業代を出さずに働かせるつもりでは?」といった勘違いを生み、不満につながる可能性もあります。

確かに、みなし労働時間より長く働いても基本的に企業は残業代を支払う必要がないため、従業員が上記のように考えるのも無理はありません。とくに「自己管理が苦手で仕事に時間がかかる」「業務が非効率でどうしても労働時間が伸びてしまう」という従業員からすると、長時間働いても給料が変わらないというのはネックポイントです。

こうした事態を防ぐためにも、導入前に勉強会や説明会などを開催し、導入の意図や目的を丁寧に周知してください。

みなし労働時間制における「労働時間の計算方法」

みなし労働時間制における「労働時間の計算方法」は、以下の2パターンで異なります。

  • 労働時間の「すべて」において事業外で勤務した場合
  • 労働時間の「一部」において事業外で勤務した場合

計算式の解説で出てくる「通常必要時間」とは、職場外で業務を遂行する際に必要と考えられる時間のことを指します。

労働時間の「すべて」において事業外で勤務した場合

「直行直帰で業務を行う」というように、労働時間のすべてを職場外で過ごした場合、以下で労働時間を計算します。

「所定労働時間≧通常必要時間」の場合

所定労働時間を労働時間として計算する

「所定労働時間<通常必要時間」の場合

通常必要時間を労働時間として計算する

「所定労働時間が7時間30分・休憩時間が1時間・始業時刻が9時・終業時刻が17時30分」というケースの計算方法を解説します。

通常必要時間が所定労働時間以内の場合、所定労働時間は労働したとみなされ「1日の労働時間は7時間30分」として計算します。

一方で「職場外の労働が常に所定労働時間を超えている」というように、所定労働時間を超えることが常態化している場合、通常必要時間を労働時間として計算してください。例えば「所定労働時間は7時間30分だが実際は8時間働いている」という場合、通常必要時間を8時間として計算します。

労働時間の「一部」において事業外で勤務した場合

「職場で内勤した後に職場外で働きそのまま直帰する」というように、労働時間の一部を職場外で過ごした場合、以下で労働時間を計算します。

「所定労働時間≧通常必要時間+事業場内の労働時間」の場合

職場内の労働時間を含めて所定労働時間内で労働したとみなされるため、「所定労働時間」を労働時間として計算する


「所定労働時間<通常必要時間+事業場内の労働時間」の場合

職場外での労働は通常必要時間とみなされるため、「通常必要時間+事業場内の労働時間」を労働時間として計算する

「所定労働時間<通常必要時間+事業場内の労働時間」の場合

職場外での労働は通常必要時間とみなされるため、「通常必要時間+事業場内の労働時間」を労働時間として計算する

例えば「所定労働時間が7時間30分・休憩時間が1時間・始業時刻が9時・終業時刻が17時30分」というケースの計算方法を解説します。

職場外の通常必要時間が「3時間」・内勤の時間が「4時間」の場合、合計7時間となり所定労働時間内に収まります。職場外の労働については、内勤と合わせて所定労働時間は働いたとみなされるため、1日の労働時間は7時間30分で計算してください。

一方で、職場外の労働の通常必要時間が「5時間」の場合、内勤の4時間を加えると9時間となり、所定労働時間を超えます。そのため、職場外で5時間労働したものとみなし、別途内勤時間の4時間を加えて、1日の労働時間は9時間で計算してください。

上記では基本の計算方法を紹介しました。その他の計算パターンは、「厚生労働省|「事業場外労働に関するみなし労働時間制」の適正な運用のためにp.3〜5」をご確認ください。

設定したみなし労働時間が法定労働時間を超えたら残業代が発生する

みなし労働時間制における「労働時間の計算方法」は、以下の2パターンで異なります。

事前に設定したみなし労働時間(および内勤時間の合計)が、法定労働時間の「1日8時間・週40時間」を超えた場合、超過分については残業代が発生します。「みなし労働時間制を導入したら一切残業代が発生しない」というわけではないため、注意してください。

割増賃金の計算方法は、以下のように一般的なケースと同じです。

  • 法定労働時間を超える:25%以上
  • 法定時間外労働が1ヶ月で60時間を超える:50%以上
  • 深夜労働を行った:25%以上
  • 法定休日に労働した:35%以上

割増賃金率の詳細については、「月60時間残業の割増賃金率が5割増へ|中小企業がすべき4つの対策」で解説しています。

みなし労働時間制の運用時に押さえておくべきポイント

みなし労働時間制を運用する際は、以下のポイントを押さえてください。

  • 決して「みなし労働時間制を導入したから従業員を無制限に働かせてOK」ではない
  • みなし労働時間は「8時間」でなくても問題ない
  • 労使協定の締結が必要なケースもある
  • 勤怠管理システムを活用して労働時間の実態を正確に把握する

決して「みなし労働時間制を導入したから従業員を無制限に働かせてOK」ではない

みなし労働時間制では、事前に設定したみなし労働時間(および内勤時間の合計)が法定労働時間を超えた場合、超過分に対して残業代の支払いが必要です。例えばみなし労働時間を「1日10時間」と設定した場合、法定労働時間を超過した2時間分については、残業代の支払いが発生します。

このように、決して「みなし労働時間制を導入したから従業員を無制限に働かせてOK」というわけではありません。あくまでもルールの範囲内で労働時間を柔軟に設定できるという点は、忘れないでください。

みなし労働時間は「8時間」でなくても問題ない

みなし労働時間は、必ずしも8時間である必要はありません。6時間や10時間なども設定できます。

こ具体的な労働時間を設定する際は、従業員へのヒアリングや目視チェックなどで「普段の業務遂行に必要な時間」を把握し、自社の現状や働き方、繁忙期・閑散期の差などを踏まえたうえで、適切な時間を導入してください。

労使協定の締結が必要なケースもある

みなし労働時間制を導入する際、以下のケースでは労使協定の締結が必須です。

  • 事業場外労働のみなし労働時間制で設定した労働時間が法定労働時間(1日8時間)を超える
  • 裁量労働制の「専門業務型」を導入する

裁量労働制の「企画業務型」を導入する場合、労使委員会の決議が必須ですが、労使協定は締結しなくても問題ありません。

参照:

社会保険労務士たちばな事務所

厚生労働省|「事業場外労働に関するみなし労働時間制」の適正な運用のために p.2

勤怠管理システムを活用して労働時間の実態を正確に把握する

みなし労働時間制では、実際の労働時間がみなし労働時間を上回ったり下回ったりしても、基本的に最初に設定した労働時間でトータルの労働時間や残業代などを計算します。

実際の労働時間が下回る分には、あまり問題ありません。一方でみなし労働時間を大きく上回るケースが多くなってしまうと、管理者が把握しないところで過度な労働が行われ続け、最悪の場合、過労死ライン超えや疲労による労災などが発生するかもしれません。

そうした事態を防ぐためにも、みなし労働時間制の導入後も従業員の労働実態を正確に把握することが必須です。労働実態を把握しておけば、みなし労働時間を大幅に超える労働が常態化する前に、配置転換や業務割り振りの見直しなどを行い従業員への負担を軽減できます。

労働時間を管理する場合は、勤怠管理システムの導入も検討してください。勤怠管理システムとは、従業員の出退勤時間や休憩時間、残業時間、有給取得日などを管理するシステムのことです。ICカードやブラウザなどで打刻してもらい、手軽に従業員の労働時間を管理できます。

セキュリティ体制が整った専用システムで労働時間を管理できるため、不正打刻が行われる心配もほとんどありません。職場外からも打刻できるため、従業員がオフィスへ戻る機会が少ない場合でも導入できます。

勤怠管理システムの具体的な機能やメリット、選び方のポイントなどは「勤怠管理システムとは?機能や導入メリット、初めての方でも迷わない選び方のポイントなどを詳しく解説」をご覧ください。

まとめ | みなし労働時間制を理解して正しく導入・運用しよう

みなし労働時間制とは、実際の労働時間に関わらず「事前に設定した時間だけ働いた」とみなす制度のことです。実際の労働時間がみなし労働時間より短くても給料が変わらないため、「従業員のワークライフバランスの向上」「モチベーションアップ」などを実現できる可能性が高まります。

事前に設定したみなし労働時間が、法定労働時間を超えた場合、超過分については残業代の支払いが必要です。みなし労働時間制を導入したからといって、決して「一切残業代が発生しない」「無制限に働かせてよい」というわけではないため、導入時は注意してください。

運用する際は、「必要に応じて労使協定を締結する」「勤怠管理システムで従業員の労働時間の実態を把握する」などのポイントを押さえることが大切です。

よくある質問

Q1.みなし労働時間制のメリット・デメリットは?
みなし労働時間制のメリット・デメリットは、以下の通りです。

【メリット】
・従業員のワークライフバランスを向上させてモチベーションアップにつなげられる可能性がある
・優秀な人材の定着率を高められる可能性がある
・最終的な企業の生産性向上や業績アップが期待できる
・労働時間や人件費を管理しやすくなる

【デメリット】
・複雑な導入手続きが必要になる
・導入の意図を丁寧に共有しないと従業員から不満が出る可能性もある
Q2.みなし労働時間では10時間働いてもらうことは問題ない?
はい、10時間働いてもらうことは問題ありません。ただし、法定労働時間を超過した2時間分については、割増賃金の支払いが必要です。
Q3.みなし労働時間制で残業代は発生する?
原則として残業代は発生しません。ただし、以下のケースでは残業代の支払いが必要です。

・みなし労働時間が法定労働時間を超えている
・休日労働を行った
・深夜労働を行った

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