勤怠管理はどの企業にも共通して求められる作業です。管理方法は、手書きやタイムカード、勤怠管理システムを用いる方法などがあります。
しかし、タイムカードや手書きによる勤怠管理を行っている場合、従業員が軽い気持ちで遅刻をごまかしたり、残業代を水増ししたりするために勤怠記録を改ざんしてしまうことがあります。勤怠不正や記録の改ざんは、行った人・行うよう指示した人のどちらも法に抵触してしまうため、企業としては防止対策を行う必要があるでしょう。
本記事では、「勤怠記録の改ざんを予防したい」とお考えの方に向けて、改ざんがどのような罪に値するのか、起こってしまった際にどう対処すべきかなど解説します。
勤怠記録の改ざんは違法行為です。故意に行った勤怠記録の改ざんによって、以下の罪に問われる可能性があります。
勤務時間を水増しすることで、時給や残業代が余計に発生します。これは従業員が企業を騙して不正に賃金を受給していることになり、詐欺罪に該当します。
詐欺罪が成立した場合の刑罰として、刑法第246条では「10年以下の懲役」とされています。
勤怠記録がクラウド上でデータ管理されるとき、WebやPC内のデータを編集して勤怠記録の改ざんを行った場合は、「電磁的記録不正作出罪」に相当します。
罪が認められた場合には、刑法第161条に基づき「5年以下の懲役または50万円以下の罰金」の刑に処せられます。
紙のタイムカードの改ざんは「私文書偽造罪」に問われる可能性があります。
罪が認められた場合には、刑法第159条に基づき、「1年以下の懲役または10万円以下の罰金」が科されます。
企業で働く従業員は、毎日の出勤・退勤時刻を記録しています。給与や労働時間の算出は、この記録をもとに計算されます。
しかし出退勤時刻の記録時に、従業員が不正行為を行ってしまうことがあります。勤怠記録の改ざんはれっきとした違法行為です。この章では、軽い気持ちで起こりがちな勤怠記録の改ざん手法を紹介します。
タイムカード式の勤怠管理は、タイムカードさえあれば本人以外でも打刻が可能です。そのため、以下のような場面で他の従業員が代理打刻することがあります。
低コストで導入することができ、簡単に使用できるタイムカードですが、タイムカード式の勤怠管理は、実際の労働時間を確実に反映できるわけではないという側面もあります。
出勤・退勤時間を手書きするシートを利用している企業もありますが、この方式では書く人次第でいくらでも時間を偽って記録することができてしまいます。
従業員が、残業代を水増しするために終業した時刻に打刻をしないケースもあります。
紙で勤怠管理を行っている場合は、手書きでの退勤時間の修正を行うこともできますし、タイムレコーダーの時間をいじるなどの細工をして不正に操作し、勤務時間を誤魔化す場合もあります。
また、企業側が長時間労働を隠ぺいするために、従業員にタイムカードの改ざんを指示する場合もありますが、これも違法行為に該当します。
次に、実際に従業員の不正や改ざんを発見した場合、責任の所在はどこにあるのか、処遇についてはどうすべきか、について説明します。
不正行為が疑われる場合には、まずは証拠の確保と本人への事実確認から行いましょう。憶測で不正行為を疑って問い詰め、実際には何もなかった場合、本人だけでなく他の従業員との信頼も壊してしまいます。
あまりにも改ざんが悪質で、注意しても直らない場合などは、今後の処分を見越して証拠を集めましょう。防犯カメラの映像、デスクワークをしていた場合にはパソコンのログなどが証拠として利用できます。
なお、本人への確認時には、話し合い後のいざこざを防止するためにボイスレコーダーへの録音も検討しましょう。同意のない録音は証拠として扱えないため、録音を行う際は始めに「録音に同意しますか」「同意します」といったやりとりを残しておくことが大切です。
事実確認によって不正が行われていると判明した場合は、社内ルールに従い処分を検討します。
十分な理由がなく労働者を処分した場合、使用者側に責任を問われる場合もあるため、弁護士に相談するなどして、慎重に判断する必要があります。
【残業代/給料の返還請求】
勤怠の改ざんによって不正に受給されていた残業代や給料に関しては、返還請求を行います。
返還請求がなされた、という事実は、今後抑止力となり、再発防止につながります。従業員側が返還に応じない姿勢を見せた場合には、損害賠償請求訴訟を提起するなどといった法的措置も視野に入れましょう。
【懲戒解雇】
長期にわたって不正な打刻を行い続けていたり、明確な悪意をもって勤怠管理の改ざんを行っていたりする場合は、改ざんが悪質であると認められ、懲戒解雇が認められることもあります。
懲戒解雇のためには企業側にも条件があり、勤怠改ざんに関する明確かつ客観的な証拠を持っており、勤怠管理も適切に行っていた場合にのみ成立します。
懲戒処分には、戒告、減給、論旨解雇、懲戒解雇などの種類があります。なかでも懲戒解雇は最も重いとされる処分であるため、正当な解雇理由がなければ成立しません。
懲戒解雇では、予告手当や退職金がない状態で即日解雇されます。履歴書の経歴欄にも懲戒解雇処分された旨を記載しなければならないため、再就職が困難になり、労働者にとっては重い処分といえるでしょう。
【退職勧奨】
退職勧奨は、企業側から従業員に対して自主退職を勧めることです。あくまでも企業からの「お願い」程度の効力で、法的効力はありません。
必要以上に強制力をもった退職勧奨は逆に違法になる恐れがあり、「企業に脅された」として従業員から慰謝料請求をされる場合もあります。相手の人格を否定したり、名誉を傷つけたりするような言葉遣いは避け、大人数の前で行わないようにしましょう。
企業側が勤怠の改ざんを以前から勘づいてはいたが、見て見ぬふりをしていたり、適切な指導ができていなかったりした場合、企業側の勤怠管理に問題があると見なされて懲戒解雇が認められない可能性があります。
また、不正期間が短期間である場合も証拠を集めづらいため、懲戒解雇が認められにくい傾向にあります。
【弁護士や社労士に相談する】
専門家からアドバイスをもらいながら対処していくことが可能です。法テラスのように、利用者からの問い合わせ内容に応じて、法制度に関する情報を無料で提供してくれる機関もあるため、ぜひ利用してみましょう。
【裁判を行う】
被害が甚大であったり、不正が何度も繰り返されている場合は、費用をかけてでも裁判を行って解決した方がよいケースもあります。
裁判にかかるコストを考慮した上で、裁判を行うかどうか考えてみてください。
ここまでは、勤怠記録の改ざんが発覚したあとの対処法について触れてきましたが、日ごろから、勤怠記録の改ざんが起きないような工夫をすることが大切です。すぐに導入できるものもあるため、ぜひ参考にしてみてください。
労働者の賃金や労働時間などの労働条件、規律などの就業規則が形骸化している場合は、今一度労働者に就業規則を明示しておきましょう。
具体的には、出勤・退勤時間の打刻は必ず本人が行う、残業を行う場合には必ず事前に申請を行うなど、勤怠管理に関するルールを明確に定め、従業員への周知を徹底させましょう。
記録改ざんによって重い処分が科されるということも明記しておけば、抑止力として機能します。
就業規則について詳しく知りたい方は、「就業規則とは~記載事項と目的について~」の記事をご覧ください。
従業員が不正を行う動機は2パターン考えられます。
1つめは、労働時間を水増ししたいというパターンです。親しいアルバイト従業員どうしで「このくらいなら大丈夫だろう」と軽い気持ちでタイムカードのなりすまし打刻を行ってしまうこともあります。同僚や先輩が不正している場面を見ると、罪悪感が薄くなってしまうというケースも考えられます。
研修を通じて、不正の問題性や違法であることを周知していくのが1つの方法です。
2つめは、労働時間をごまかしたいという場合です。長時間働いていると上司に注意される、残業するための報告が必要、といった場合に、長時間労働をごまかすケースがあります。
対処法としては、業務量の見直しなど使用者側が必要な措置を行った上で、長時間労働をごまかす以外の対処法を労働者にも考えてもらうなどの方法が考えられます。
勤怠管理システムを導入することで、就業規則に則り、適切に勤怠管理を行う手助けになります。
システムが出勤・退勤時間を自動的に集計してくれるので、打刻漏れ、打刻修正などの作業に追われる時間と手間から解放されます。一人一人の労働時間や残業時間の把握がしやすくなり、正確な打刻時間の管理が可能で、改ざんも予防できます。
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勤怠記録の改ざんが発覚した際には、企業による適切な対応が求められます。また、改ざんを放置しておくと、長期にわたって被害が続き、やがて大きな損失になります。
対策を講じて改ざんや不正を防止することによって、従業員と雇用者間の不幸なトラブルを未然に防ぎましょう。
Q1.勤怠記録の改ざんが発覚した際にはどうすればよいですか? |
まずは事実確認を行いましょう。改ざんが行われているか定かではないまま、労働者を追求・処分した場合は企業の信用問題に関わります。改ざんが事実だった場合は、懲戒解雇、給料の返還要求など、社内での処分を検討しましょう。 |
Q2.勤怠記録の改ざんを防止するためにはどうすればよいですか? |
日ごろから、勤怠記録の改ざんが起きないような工夫をすることが大切です。
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