社内の状況や社員のニーズに合わせて、会社が自由に設けることができる「特別休暇」。この記事では、特別休暇と法定休暇の違いや、実際の企業で導入されているユニークな特別休暇を紹介します。合わせて、特別休暇を自社に導入したいと考えている企業に向けて、導入の流れも解説します。
特別休暇とは、会社が社員に福利厚生の1つとして与える休暇のことです。法律上で設けることが定められているわけではないので、法律で義務化されている法定休暇とは異なります。
特別休暇 |
法律上での決まりはなく、企業が独自に休暇の対象者や内容を決められる。法定外休暇とも呼ばれる。 (例)
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法定休暇 |
労働基準法や育児・介護休業法など、与える義務が定められている休暇 (例)
※年次有給休暇以外は、有給でなければいけないという定めはないので、有給か無給かは会社ごとの就業規則で定められる |
企業でよく設けられている特別休暇を紹介します。
慶弔休暇とは、社員やその家族の慶事や弔事に対して、特別に休暇を認める制度です。慶事は結婚や出産などのお祝いごと、弔事は葬式や通夜などのお悔やみごとです。
就業規則によって会社が独自に制度を決められるため、「結婚休暇」や「忌引休暇」のように個別に休暇を設けることもできます。
病気休暇は、業務外でかかった病気の長期にわたる治療や、風邪や感染症などの突発的な体調不良時に休暇を取得できる制度です。治療が長引いて年次有給休暇のほとんどを通院に充てることになったり、通院や治療のために貴重な人材が退職してしまったり、といったことを防げるメリットがあります。
病気休暇も、就業規則によって会社ごとに定めることができるので、会社によっては、半日や時間単位で休暇を取得できる場合があります。 また、不正な取得を防ぐためや業務を調整するために、社内の規定によっては診断書の提出が必要となる場合があります。
夏季・冬季休暇は、夏季や冬季にまとまった休暇をとれる制度です。夏季であれば、お盆休みや土日を含めた期間で設定している企業が多いようです。
一方、決まった期間の内で定められた日数分休暇を取得するという制度を設定する企業もあります。この制度では、個人の業務スケジュールや都合に合わせて、柔軟に夏季休暇や冬季休暇がとれるため、休暇を取得できないという社員を減らすことができます。
アニバーサリー休暇とは、社員やその家族の誕生日や結婚記念日に休暇がとれる制度です。記念品やお祝い金を贈呈する企業も増えています。
アニバーサリー休暇は、誕生日や恋人との記念日、家族の誕生日など、各個人の都合に合わせて休暇を取ることができます。この休暇をうまく利用すれば、プライベートのイベントも大事にしながら無理なく働けます。ただし、企業によって、どの範囲の記念日まで認めるか、また、記念日当日ではなく記念日のある月であれば取得できるかなどの内容は異なります。
教育訓練休暇とは、社員が業務に関する教育訓練や職業能力検定を受験する機会を確保するために休暇を与える制度です。
ただし、導入するにあたり、次のような懸念点もあります。
しかし、労働者の仕事への意識向上・スキルアップなどが見込めます。また、 コストについて、有給教育訓練休暇の付与や受講の費用援助を行う企業には、その支援費や賃金の一定割合を助成する「自己啓発助成給付金制度」などの制度があります。
特別休暇としてよく導入されるのは慶弔休暇や夏季休暇ですが、ほかに独自のユニークな特別休暇制度を設けている企業もあります。特別休暇が充実している会社は、社員の心身的健康をサポートできるだけでなく、社外へのアピールポイントを増やせるというメリットもあります。
ユニークな特別休暇の例
やすらぎ休暇 | 株式会社デンソーソリューション |
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失恋休暇 | 株式会社サニーサイドアップ |
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推しメン休暇制度 | 株式会社ジークレスト |
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ナイチンゲール休暇 | ライフネット生命保険株式会社 |
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ボランティア休暇 | 関西電力株式会社 |
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多くの会社では、社員が働きやすくなるようにさまざまな特別休暇を設けています。しかし、特別休暇にはメリットだけではなく、デメリットもあります。
そのため、特別休暇を導入する場合には、メリットだけでなくデメリットも考慮する必要があります。では、特別休暇にはどのようなメリット・デメリットが考えられるでしょうか。
メリット
デメリット
特別休暇を導入する際は、休暇取得の条件などの規則を定め、就業規則に記載する必要があります。ここからは、自社に特別休暇制度を導入したい担当者が行うべき流れをご紹介します。
1. 就業規則への追加
問題発生を防ぐために、制度や規則に変更がある場合はその都度就業規則に追加しましょう。とくに、常時10人以上の従業員を使用する使用者は就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出なければなりません。
職場の実態と就業規則の乖離が見られる際や、法律が変わったタイミングで定期的に就業規則を見直しましょう。
2. 社員への周知
就業規則に記載していても、社員が認識していなければ意味がありません。就業規則に変更がある場合は、必ずその旨を周知しましょう。
なお、休暇が有給から無給になるなどの、労働条件の不利益変更がある際は、労働者への周知と変更後の就業規則の内容の相当性が求められます。(労働契約法第10条)
3. 労働基準監督署への届出
就業規則を作成・変更したときは、労働基準監督署への提出が必要です。「就業規則」「就業規則(変更)届」「意見書(労働者代表の意見)」の3点を労働基準監督署の窓口に訪問または郵送にて提出します。
では、特別休暇を新たに導入するにはどうすればよいのでしょうか。
事前に社内で規定を決め、周知することで、社員ごとに異なる対応をしてしまうことや、休暇日数や休暇中の賃金についての問題を防げるようにしましょう。ここでは、特別休暇を導入する際に決めておくべきポイントをご紹介します。
特別休暇の対象を正社員のみにするのか、または、非正規社員やアルバイトも同一に取得できるようにするのかを決める必要があります。正社員のみに特別休暇を与えることは法律上違反ではありません。特に、雇用形態が多様化している企業では、社員のみ対象にするのか、その他の社員も同じように対象となるのかや、雇用形態ごとでどのように規定を変えるのかなど、詳細まで決めておく必要があります。
たとえば、社員とアルバイトで特別休暇取得に差がある場合は、その旨を就業規則に記載する必要があります。また、雇用形態の明確な区分についての定義も、就業規則に明記しておく必要があります。もし、正社員のみに特別休暇を付与しようという意図で設計したとしても、就業規則にその記載がない場合には、法律上全従業員が権利を得ることになります。
特別休暇の対象とする事由はさまざまであるため、会社ごとに休暇日数を決めておく必要があります。
慶弔休暇で決める対象日数の例
特別休暇は会社独自に取得期限を決めることができます。就業規則等にて取得期限を定めることで、会社の事情や利用目的に応じた期限を設けることができます。
例えば、新婚の社員を対象とする新婚旅行休暇を設ける場合、取得期限を結婚から3年以内などとすることで、対象者を新婚の社員に絞ることができます。
特別休暇の起算日をいつにするかを就業規則にて規定する必要があります。しかし、起算日は例外を認める場合があります。
例えば、慶弔休暇について、親族が亡くなった日と葬儀を行う日の期間が開いてしまい、慶弔休暇の規定日数を超えてしまうことがあります。その場合、規則を最優先して出社させては、特別休暇を取得した意味がありません。柔軟に対応することが求められるので、状況により上長の許可があった場合には例外を認めることを就業規則に記載する必要もあるでしょう。
特別休暇を有給にするか、無給にするかの規定も、会社に委ねられます。ただし、特別休暇を有給にすることは社員のモチベーション向上や離職防止、定着率の向上に貢献するでしょう。
社員間での認識のズレがあると問題になるため、特別休暇中の給料については、就業規則に明確に記しておきましょう。また、特別休暇制度の利用率を下げないため、特別休暇制度を利用することで賃金の引き下げや評価の低下につながることは一切ないと取り決めることも必要です。
特別休暇の期間に休日が含まれる場合に、その期間の給料を支払うのか決めておく必要があります。
例えば、夏季休暇も有給としている会社で、夏季休暇として1週間の休暇を取得した際、その期間に含まれる通常の休日の給料はどうなるのかも、就業規則にて定めておきましょう。
特別休暇を導入し、利用する社員が増えれば、福利厚生が充実します。これは社員のモチベーション向上だけでなく、会社PRになり、会社側にもメリットがあります。どのような特別休暇を導入するべきかを考え、会社にとっても社員にとっても良い特別休暇を導入してみてください。
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