現在の働き方は「週休2日制」「完全週休2日制」が一般的です。しかし、働き方改革などやコロナ禍における在宅勤務者の増加などにより、週休3日制を導入する企業も増えてきました。
週休3日制は、優秀な人材の確保や従業員のモチベーションアップにつなげられる一方、デメリットもあるため導入前に入念な検討が必要です。
本記事では、週休3日制の概要や種類、導入のメリット・デメリット、導入手順、企業の成功事例などをわかりやすく解説します。
週休3日制とは、1週間のうち休みが3日になる制度です。一般的な「週休2日制」「完全週休2日制」と比較して新しく登場した休日の考え方であり、ワークライフバランス実現や 働き方改革推進などの影響を受け、取り入れる企業が増えています。
政府も企業に対して選択的週休3日制の導入を奨励しており、日本の重要課題や翌年度予算編成の方向性を示す「経済財政運営と改革の基本方針2024」でも以下のように盛り込まれました。
(多様な人材が安心して働き続けられる環境の整備)
多様な人材が能力を発揮しつつ、安心して働くことができるよう、高齢者の活躍に取り組む企業の事例集の展開、高齢者の労働災害防止のための環境整備を推進するとともに、ストレスチェック制度を含むメンタルヘルス対策を強化する。
テレワークを推進するほか、勤務間インターバル制度の導入促進、選択的週休3日制の普及、家事負担を軽減するサービスの適切な利活用に向けた環境整備等に取り組む。
なお、2024年7月次点では、週休3日制の導入が義務化されているわけではありません。新しい働き方を模索する中で、一部の企業が任意で導入している状態です。
週休3日制は、以下の3種類に分けられます。
給与減額型は、休日を増やして労働時間が減少した分、給与も減額される制度です。
1日の所定労働時間は変わらず、月の総労働時間が減少します。
給与を減額することで企業の人件費を削減できる一方、従業員の収入は減少します。
▼例:「1日8時間勤務・週4勤務」の所定労働時間および給与
所定労働時間 | 8時間/日×4日/週=32時間/週(週休2日制と比べ8時間減少) |
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給与 | 1時間あたりの賃金×32時間(週休2日制と比べ8時間分の賃金が減額) |
総労働時間維持型は、週の勤務日数を4日で設定し、1日の所定労働時間を増やす制度です。
1週間の総労働時間は5日間勤務(40時間)と変わらないので、収入は変えずに休日を増やせます。
▼例:「1日10時間・週4勤務」の所定労働時間および給与
所定労働時間 | 10時間/日×4日/週=40時間/週(週休2日制と比べ1日の所定労働時間が2時間増加) |
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給与 | 1時間あたりの賃金×40時間(週休2日制と変動なし) |
給与維持型は、勤務日を4日間に設定し総労働時間が減少しても、給与を変更しない制度です。
従業員のモチベーションアップにつながりやすいですが、短時間で週休2日制と同じ成果を出すことが求められます。
▼例:「1日8時間・週4勤務」の所定労働時間および給与
所定労働時間 | 8時間/日×4日/週=32時間/週(週休2日制と比べ8時間減少) |
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給与 | 1時間あたりの賃金×32時間(週休2日制と変動なし。ただし1時間あたりの給与は増加) |
厚生労働省の調査によると、2024年時点で週休3日制を導入している民間企業の割合は「7.5%」です。
画像引用:厚生労働省 | 令和5年就労条件総合調査の概況p.4
厳密には「完全週休2日制より休日日数が実質的に多い制度」という括りであるため、週休3日制以上の休日を設けている企業も含まれます。いずれにしても、週休3日制を導入している企業はまだ少ないですが、今後柔軟な働き方の実現に向けて浸透することが期待されます。
民間企業だけでなく、自治体でも「週休3日制を導入」、あるいは「休日を増やす企業を支援」といったケースが増加しています。具体的なケースは以下の通りです。
東京都 |
選択的週休3日制を含め、従業員のエンゲージメントアップに向けた取り組みを実行する企業に対し、最大100万円の奨励金を支給しています。 |
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千葉県 |
全職員を対象に、1週間に1日、週休日を設定できるようにしています。週休日を設定しても、総労働時間は「4週155時間」で普段と変わりません。 |
和歌山県海南市 |
県内の自治体で初めて「フレックスタイム制」を導入しています。週の勤務時間(38時間45分)の中であれば、始業時間・終業時間・1日の勤務時間を変更可能です。例えば、週の勤務時間を4日間で満たせる場合、休日を1日設けて週休3日にできます。 |
福島県 |
2021年〜2023年にかけて、週5日勤務から週4日勤務が可能な「週休3日制」を導入する介護施設などへ支援を行いました。 |
週休3日制は新しい休日の考え方であるため、すぐに現在の週休2日制および完全週休2日制と置き換わることは、ほぼないはずです。
しかし、給与を維持しつつ週の勤務日数を減らせる週休3日制は、従業員のモチベーションアップやワークライフバランスの実現を考えるうえで重要な位置を占める施策です。政府が奨励している背景もあり、今後少しずつ浸透すると期待できます。
週休3日制を導入することで、具体的に以下のメリットを実感できます。
週休3日制を導入すると、就活や転職活動をしている人材から「柔軟な働き方に対応している魅力的な企業」と思われ、応募者数の増加が期待できます。応募者数の母数が増加すれば優秀な人材を採用できる確率も高まるため、他社との競争で有利な立場に立てる可能性もあります。
週休3日制によって休日数が増えることで、従業員は趣味や子育て、介護などプライベートに多くの時間を使えるようになります。従業員のプライベートを確保してワークライフバランスを実現し、心身の負担を軽減できれば、職場へのストレスも減り、結果的に離職率の低下も期待できます。
人手不足に悩む業界が多い中で、「優秀な人材の採用」「離職率の低下」という両面から従業員を確保できるのは、企業にとって魅力的です。
週休3日制によって増えた休日を有効活用することで、従業員は資格取得や大学院での学び直し(リスキリング)、副業などに時間を使えます。こうした活動を通じて従業員がスキルアップし、身に付けた知識を普段の業務で活用すれば、最終的な企業の利益増加が期待できます。
週休3日制を取り入れると、従業員は少ない労働時間で従来と同じ成果を出すために、仕事の効率化やスキルアップを意識するようになります。こうした「限られた時間内で仕事を終わらせる」という文化が社内に浸透することで、結果的に企業全体の業務効率化を実現可能です。
週休3日制の導入によって従業員の出社日数が減れば、給与やオフィスの電気・ガス・水道代、通勤手当、印刷代など、さまざまな経費を削減できます。在宅勤務と合わせて出社人数を大きく削減できれば、オフィスの解約や縮小によって家賃も抑えられるかもしれません。
業務効率化を達成し売上を伸ばしつつ経費も削減できれば、相対的な企業の利益アップが見込めます。
週休3日制には以下のようなデメリットもあります。
新しい制度を導入する際は、メリットだけに目を向けず上記の懸念点も視野に入れることが大切です。
週休3日によって休日が増えると、以下のような事態を招く可能性があります。
上記のような事態が発生し、せっかくのビジネスチャンスを逃すことは企業にとって機会損失です。もちろん従業員の休日は尊重されるべきですが、週休3日制が一般的でない以上、こうした「コミュニケーションスピードの違いによる機会損失」が発生する可能性は十分あります。
従来と異なる制度へ切り替える際は、勤怠管理の見直しや給与計算方法の変更などが必要なため、人事や労務に大きな負担がかかります。とくに選択的週休3日制の場合、休日数の異なる従業員が混在するため、管理の負担はより膨らみます。
関連部署の負担を軽減するには、「週休3日を適用する従業員数」「勤怠管理や給与計算方法の変わり方」などを慎重に打ち合わせながら進めることが大切です。
休日の増加によって日常的に働ける従業員数が減少し、「ひとりの担当業務量が大幅に膨らむ」「人員数的に効率化が難しい」といった場合、人員の追加が必要になるかもしれません。従業員に関わる経費を削減できても、結局追加の採用が必要になると、トータルで大きな利益につながらないかもしれません。
上記のメリット・デメリットを考慮したうえで週休3日制を活用する場合は、以下の手順で導入することをおすすめします。
まずは週休3日制を導入する目的を明確化します。目的を明確化することで、週休3日制の種類や運用方針、懸念点の予測および対応策などを決められます。
例えば「従業員のスキルアップを促進したい」という目的であれば、給与維持型を導入し、限られた時間内で効率的に仕事を進める意識を根付かせることで、能力向上につながるかもしれません。
次に週休3日制を利用できる対象者を策定します。「全従業員・一部の部署のみ・正社員のみ・希望者のみ・育児や介護中の従業員のみ」など対象者の範囲を決めることで、制度の概要を決定しやすくなります。
例えば「育児や介護中の従業員のみ対象」という場合、該当の人物が休んだ分の業務補填方法を考えなければなりません。補填にあたって負担を被った従業員へのフォロー施策も必要です。
目的や対象を踏まえて、以下3パターンから週休3日制の種類を選びます。
週休3日制の導入によって、給与額の変更や有給取得条件の見直しなどが必要な場合、従業員と話し合い合意を取る必要があります。従業員の希望も汲みつつ、自社の業績を照らし合わせて適切な給与額などを決めることが大切です。
従業員が「増えた休日を活用して副業や兼業に取り組むことを認めるか?」も決める必要があります。「経済財政運営と改革の基本方針2024」では副業・兼業を推進していますが、実際に解禁できるかは自社の業績や従業員の能力などに応じて変わるため、慎重な検討が必要です。
もし副業・兼業を解禁する場合は、「競合他社との仕事はNG」「自社の知見を流用できる仕事はNG」など、就業規則変更の必要性も含めて検討します。
週休3日制の運用開始後は、成果をチェックしながら定期的に制度を改善します。従業員の声も参考にしつつ「対象範囲を広げるべきか?」「副業の規定をどのように変更するか?」などを検討し、よりよい制度へブラッシュアップすることが大切です。
最後に、「週休3日制のメリットはわかったが具体的な運用後のイメージが湧かない」という方に向けて、実際に導入している企業の事例を紹介します。
各業界で著名な企業の事例を「取り組んだ背景・具体的な取り組み内容・成果」の観点から簡単にまとめました。自社の状況にマッチする事例がないか、ぜひチェックしてください。
取り組んだ事例 | 部門や職種の多様化に伴い、企業一律ではなく各部門に最適な働き方の検討を開始します。とくにカスタマーサポート業務を担当するホスピタリティ本部は、顧客情報を扱う部署であるため「出社での業務」がメインでした。その中で働き方の希望をヒアリングすると、「毎日8時間働きたいタイプ」「長時間集中して働いて休日を増やしたいタイプ」の従業員に分かれることが判明します。こうした従業員ごとの希望を叶えるため、選択的週休3日制を導入しました。 |
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具体的な取り組み内容 |
(1)変形労働時間制を活用した選択的週休3日制の導入 「1日8時間 × 週5日勤務(週休2日)」を基本としつつ、「1日10時間 × 週4日勤務(週休3日)」も選択できるようにしています。総労働時間と給与は変わりません。従業員は半年に一度、週休3日にするかを選択できます。 (2)選択的週休3日制をスムーズに導入するための業務改善の実施 制度導入により従業員不在の日が増えるため、「業務の属人化解消」「会議の時間調整」「スムーズな業務の引き継ぎ」などの取り組みを実施しました。ホスピタリティ本部内には業務に紐づいたブロックというチームがあり、基本的にはブロック単位で選択的週休3日制の運用方法を検討し、運用上の工夫を重ねました。 |
成果 |
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取り組んだ事例 | 2016年度からスタートした中期経営計画で、「健康応援企業」になることを社外へ宣言します。この「健康応援企業」を実現するには、まず従業員自身が健康でなければならないと考え、健康に働ける環境作りと生産性向上のために「働き方改革」の推進を決定しました。 |
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具体的な取り組み内容 |
(1)週4勤務制度 「妊娠中の従業員・育児中の従業員・介護中の従業員・再雇用の従業員」を対象に導入を開始しました。職種・部署・役職に関わらず、1ヶ月単位で利用可能です。就業時間は9時~17時が基本ですが、「週5勤務では35時間・週4勤務では28時間」となりました。基本給は週5日勤務の4/5に、賞与は週4勤務が適用された月は週5日勤務の4/5と設定しました。 (2)テレワーク制度 コロナ禍では出社率を3割以下にすることを掲げ、利用が普及しました。緊急事態宣言の解除を受けて3割目標は取り下げられ、仕事の生産性を高める手段の1つであるとの原点に立ち戻った運用へ切り替えています。 (3)生産性評価制度 2020年度から導入されました。生産性目標を新設し、「定量要素:労働時間目標」「定性要素:取り組み目標」をそれぞれ設定することで、達成度とプロセスを評価しています。生産性向上のために労働時間を削減するとともに、削減した時間をスキルアップなどの時間に充てることで、成果やパフォーマンスの改善を図りました。 |
成果 | 週4勤務制度は延べ23名が利用。21名が妊娠や育児目的の女性、2名が再雇用の男性従業員であった。家事や育児を理由にキャリアを諦めず、一時的に週4日勤務制度を利用することで仕事を続け、将来子どもが大きくなった際にフルタイムで活躍できる選択肢を確保できた |
参照:厚生労働省 | 働き方・休み方改革取組事例集p.14〜15
取り組んだ事例 | 同社では、1990年代の「ワークライフマネジメント」の戦略設計からはじまり、2014年のフレックスタイム制度や2016年の在宅勤務、2018年の短時間勤務などを積極的に推進してきました。その他にも、2019年の一斉リモートワークデー設定やコロナ禍における在宅勤務などを実施。従業員へのアンケートも実施し、その調査結果も踏まえて2020年8月、在宅勤務を標準化することを決定します。 |
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具体的な取り組み内容 |
(1)働く時間の選択 フレックスタイム制度や短時間勤務を導入します。フレックスタイム制度は、7時〜20時をフレキシブルタイムとしたコアタイムなしで設定しています。短時間勤務では、自己啓発やボランティア、セカンドライフ準備、副業などを理由として、時短勤務(1日の勤務時間を6時間 or 7時間から選択)や短日勤務(週4日勤務)を利用可能です。 (2)働く場所の選択 在宅勤務制度自体は2016年から導入されていました。当時から従業員全員が「生産性が維持・向上した」と回答しており、該当従業員の上司も9割が同じ回答をしていました。2018年からは対象を全従業員に切り替え、「在宅勤務が可能な職種である・セルフマネジメントできる・上司の承認がある」という条件を満たせば誰でも利用可能です。社内SNSなどコミュニケーションツールやIT環境の整備により、自宅やサテライトオフィス、移動先のホテル、顧客先、公共スペースでの利用も可能としました。 |
成果 |
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本記事では、週休3日制導入のメリット・デメリットや具体的な導入方法、企業の成功事例などを紹介しました。
週休3日制の導入は、企業に対し「優秀な人材の確保」「離職率の低下」などさまざまなメリットをもたらします。従業員のワークライフバランス実現にもつながるため、快適な職場環境を整備して業務効率を改善し、最終的な業績アップにつなげたい企業にはおすすめです。
週休3日制の導入時は、多様化する従業員の働き方に対応できるよう、勤怠管理システムの見直しも必要です。もし、従業員数が少ない企業で週休3日制の導入を検討している場合は、株式会社フリーウェイジャパンが提供する勤怠管理システム「フリーウェイタイムレコーダー」をご検討ください。当製品は従業員10人までなら永久無料で利用できます。ICカードやブラウザなどでの打刻に対応しているため、場所を問わず従業員の勤怠を正確に管理可能です。興味があれば、ぜひ使ってみてください。