勤務間インターバル制度とは?導入の必要性やメリット、運用方法を解説

更新日:2024年06月28日
2406-FW6【勤務間インターバル】

勤務間インターバル制度とは、勤務終了から次の勤務の開始までに、一定の時間を確保する制度のことです。

「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が2018年7月6日に公布され、労働時間等の設定の改善に関する特別措置法が改正されたことで、勤務間インターバル制度の導入が努力義務となりました。

本記事では、勤務間インターバル制度のメリットや導入時に起こりうる失敗とその解決策、働きやすい環境作りのためにできることについて解説します。

勤務間インターバル制度とは

勤務インターバル制度とは、1日の勤務終了後、翌日の出社までの間に一定時間以上の休息期間を儲ける制度です。働き手の生活時間や睡眠時間を確保することを目的としています。

働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が平成30年7月6日に公布されたことにより、労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(労働時間等設定改善法)が改正されました。これにより、「勤務間インターバル」制度導入が企業の努力義務になりました。

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例えば、12時間インターバルを設けることを考えます。この場合、20時に勤務終了であれば次の勤務は早くても12時間後の8時からということになります。

インターバルの目安は11時間です。休息期間の確保のための方法としては、翌日の始業時刻を遅らせる意外にも、一定時刻以降の残業や始業以前の勤務を認めない、といった方法があります。

令和3年7月30日には、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」の変更が閣議決定されました。新たな数値目標として、以下が掲げられています。

  • 令和7年(2025年)までに、勤務間インターバル制度を知らなかった企業割合を5%未満とする。
  • 令和7年(2025年)年までに、勤務間インターバル制度を導入している企業割合を15%以上とする。

勤務間インターバル制度の導入には法的義務がある?

結論から言うと、勤務間インターバル制度の導入は「努力義務」とされています。努力義務であるため、導入しなくても罰則はありませんが、労働基準法に則った適切な労働時間の設定が求められることに変わりはありません。

労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」では、従業員の健康と福祉を確保するために必要な勤務間を設定するよう努めなければならないとされています。法令にこうした記載がある以上、勤務間をあえて短くすると、監督官庁からの行政指導を受けるリスクがあります。また、勤務間を短いままにしていたことが原因となっており、従業員に損害が生じた場合、従業員は損害賠償を請求することもできるため、勤務間の設定には注意が必要です。

そのため、勤務間インターバル制度を導入しない場合でも、勤務終了から次の勤務までは時間を設けた方が好ましいといえます。

勤務間インターバル制度を導入するメリット

勤務間インターバル制度の導入は、従業員にも企業にとってもメリットがあります。本章では、勤務間インターバル制度導入の3つのメリットについて解説します。

従業員の健康維持につながる

勤務間インターバル制度の導入は、従業員の健康維持が期待できます。

労働基準監督署の資料」を見ると、過重労働が原因で脳梗塞や心筋梗塞などの病気が発症してしまったり、自死に至ってしまったりする事例が実際に起こっていることがわかります。健康を損なうと、仕事どころではなくなってしまうでしょう。

勤務間インターバル制度によって、従業員の生活時間や睡眠時間を意識的に確保することで、従業員の健康維持に加え、業務全体の流れの滞りや生産性の低下といった状況の回避にもつながります。

生産性が向上する

気軽に残業できる環境では、「残業すればいい」と無意識に考えてしまうことにより、作業効率が落ちてしまう可能性があります。

そこで、勤務間インターバル制度を導入して残業しにくくすることで、仕事に集中しやすい環境作りに繋がります。これにより、仕事に集中する時間とプライベートな時間のメリハリをつけることができ、結果として生産性の向上が期待できるでしょう。

人材の確保・定着につながる

勤務間インターバル制度を導入すると、従業員は自身のために使える時間を確保できるため、ワーク・ライフ・バランスを充実させることができます。

ワーク・ライフ・バランスを重視して就職する人や働く人は多く、実際に、パーソル総合研究所「働く1万人の就業・成長定点調査2022」では、20代の4割近くが、仕事を選ぶうえで重視することに「休みが取れる・取りやすい」「仕事とプライベートのバランスが取れる」ことを挙げています。

さらに、内閣府男女共同参画局の調査でも、家庭生活や地域・個人の生活等を優先したいと回答している人は、男性・女性、正規・非正規問わず約4割となっています。

こうした職場は従業員を惹きつけ、人材の確保・定着、離職者の減少も期待されます。

勤務間インターバル制度でよくある失敗とその解決策

次に、勤務間インターバル制度を導入した際に起こりうる問題とその対策をご紹介します。

残業が増えた場合は業務量を見直す

勤務間インターバル制度を導入すると、翌日の始業時刻が遅くなることがあります。

すると、時間内に仕事が終わらず残業、さらに翌日の始業時間が遅くなりまた仕事が時間内に終わらない、という悪循環に陥る可能性もあります。

この悪循環に陥ってしまった場合は、具体的なアイデアとしては、各従業員の業務量を見直すことが考えられます。

各従業員の業務量を見直し、適切なものにすることで、時間内に仕事を終えることができるようになりこの悪循環を抜け出せます。

インターバルを確保しない従業員がいる場合は個別に対応する

仕事の取り組み方は人それぞれです。「労働時間が長くても、その中でのんびり取り組めばいい」と考える人の場合、インターバルを確保しない可能性があります。

この場合は、産業医の面談を組んだり、社内の研修やプロジェクトに参加してもらったりするのが有効です。これにより、長時間労働のリスクや健康への意識を高め、時間内に仕事を終わらせる意識を持たせられると考えられます。

勤務間インターバル制度導入のポイント

ここまで、勤務間インターバル制度の基本事項について解説してきました。導入を前向きに検討したいという方に向けて、本章では、勤務間インターバル制度を導入する際のポイントについてご紹介します。

勤務インターバル制度を導入し、効果を得るための参考にしてください。

現状を正しく把握してから、制度を決めていく

まず従業員の労働状況や業務内容について把握し、改善するべき点を洗い出します。続いて、改善するためにはどのような制度が必要なのか、その制度はどのように整備されるべきかなど、1つずつ段階を踏んで決定していきます。

以下に導入フローをまとめましたので、参考にしてみてください。

1.従業員の正確な労働時間を把握する

残業している事実を隠すため、タイムカードを切った後に残業している場合があるかもしれません。

その事実を知らずにインターバル制度を導入しても、正しい現状が把握できず、自社の労働時間の課題を認識し、導入目的を設定することも困難です。

まずは従業員の正確な労働時間を把握すること、またそのための勤怠管理の仕組みづくりが大切です。

2.制度の詳細を決定する

インターバルは何時間にするのか、適用できなかった場合はどうするのか、どのように手続きするのか、などの詳細を決定する必要があります。

また、勤務間インターバル制度の導入・運用には社内との協力が欠かせません。この制度を従業員に周知するための方法や、納得してもらえるような目的や規定を考えることも必要です。

厚生労働省が出している、勤務間インターバル就業規則規定例も参考にすることをおすすめします。

助成金を活用する

就業規則の見直しには時間やコストがかかります。そのため、厚労省が勤務間インターバルの導入を後押しするために設けている助成金制度を利用することをおすすめします。

▼支給対象者 ※中小事業主

1.労働者災害補償保険の適用事業主であること

2.次のアからウのいずれかに該当する事業場を有する事業主であること

 ア 勤務間インターバルを導入していない事業場

 イ 既に休息時間数が9時間以上の勤務間インターバルを導入している事業場であって、対象となる労働者が当該事業場に所属する労働者の半数以下である事業場

 ウ 既に休息時間数が9時間未満の勤務間インターバルを導入している事業場

3.全ての対象事業場において、交付申請時点及び支給申請時点で、36協定が締結・届出されていること。

4.全ての対象事業場において、原則として、過去2年間に月45時間を超える時間外労働の実態があること。

5.全ての対象事業場において、交付申請時点で、年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備していること。

▼支給対象の取り組み ※いずれか1つ以上

1.労務管理担当者に対する研修

2.労働者に対する研修、周知・啓発

3.外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など)によるコンサルティング

4.就業規則・労使協定等の作成・変更

5.人材確保に向けた取組

6.労務管理用ソフトウェアの導入・更新

7.労務管理用機器の導入・更新

8.デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新

9.労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新

(小売業のPOS装置、自動車修理業の自動車リフト、運送業の洗車機など)

※研修には、勤務間インターバル制度に関するもの及び業務研修も含みます。

※原則としてパソコン、タブレット、スマートフォンは対象となりません。

詳しくは厚生労働省「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)」もご覧ください。

なお、支給額は対象経費の合計額に補助率3/4を乗じた額です。取組の所要額が30万円を超える場合の補助率は4/5を常時多額が支給されます。支給額には上限額があります。

支給条件は、常時使用する労働者数が30人以下かつ、支給対象の取組で6から9を実施する場合です。

▼上限額

休息時間数 「新規導入」に該当する取組がある場合 「新規導入」に該当する取り組みがなく、「適応範囲の拡大」又は「時間延長」に該当する取組がある場合
9時間以上11時間未満 100万円 50万円
11時間以上 120万円 60万円

勤怠管理システムを活用する

制度を導入する際のステップでも説明したように、導入した制度を形骸化させないためには、勤怠管理システムを利用した正確な労働環境の把握が効果的です。

フリーウェイの勤怠管理システム「フリーウェイタイムレコーダー」がおすすめです。クラウド型でアプリダウンロードは不要で、料金は、従業員10人以下であれば永久無料、11人以上は月額1,980円で定額です。

はたらきやすい環境づくりのためにできること

従業員が働きやすい環境を作るための制度は、勤務間インターバル制度以外にもあり、併用することで一層効果が期待できます。

▼他の制度の例

変形労働時間制 業務の繁閑や特殊性に応じて労働時間の配分等を行い、これによって全体としての労働時間の短縮を図ろうとする制度。
裁量労働制 実際の労働時間ではなく、合意の上で定めた時間を労働時間とみなして賃金を支払う制度。自身の裁量で働く時間を短縮できる。
フレックス制度 一定の期間についてあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、労働者が毎日の始業・終業時刻、労働時間を⾃ら決めることのできる制度。

例えば、勤務間インターバルで勤務外の時間を確保し、変形労働時間制、では勤務時間そのものを調節するという併用の仕方ができます。

人によって働き方のペースは異なるので、さまざまな制度を導入して、併用、あるいは従業員によって使い分けるなどもすると良いでしょう。

まとめ|勤務間インターバル制度を活用し、労働環境を改善しよう

勤務間インターバル制度は働き方改革のうちの1つで、従業員の健康確保、それによる生産性向上を目的としたものです。導入しなかったからといって罰則を受けることはありませんが、従業員の十分な休息時間を確保することは当人たちのみならず、生産性の向上や人材の定着が見込めるなど、企業側にもメリットがあります。

導入の際には、まず現状を把握し、改善点と必要な施策を分析しましょう。また、導入後は変則的な勤務時間を把握するために、正確な勤怠管理が必要です。効率的な勤怠管理システムも確立させることもおすすめです。

よくある質問

Q1.勤務間インターバル制度を導入しないと罰則がありますか?

勤務間インターバル制度はあくまで努力義務であるので、導入しなくても罰則はありません。しかし、労働基準法に則った労働時間の設定が求められることに変わりはないため、労働時間には注意をはらう必要があります。

Q2.勤務間インターバル制度の導入に助成金はありますか?

勤務間インターバル制度導入の後押しのために、厚労省が助成金を設けています。就業規則の見直しには時間やコストがかかるため、導入の際には検討するのも一手です。

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