2021年度から制度変更「子の看護休暇」とは?【5分でわかる】

更新日:2023年06月21日
子の看護休暇とは

「子の看護休暇」とは、従業員が子どもの看護のために一定期間休暇を取得できる制度です。企業が率先して制度を周知し、法定要件以上に拡大して定めるなど上手に活用することで、従業員の働きやすさを高め、長く働いてもらいやすくなるでしょう。

しかしながら、子の看護休暇にはまだまだ知られていないことも多く、必ずしも正しい対応がされていない場合があります。そこで本記事では、子の看護休暇の基本的な概要や運用方法、他の似たような制度との違い、企業が子の看護休暇を拡充して定めるメリットまで広く解説します。

従業員のワークライフバランス改善や人材採用・定着に悩む担当者もぜひご覧ください。

子の看護休暇とは、育児・介護休業法で定められた休暇

「子の看護休暇」とは、小学校就学前の子どもを養育する従業員が、子どもの病気・ケガ・検診・予防接種などのために取得できる休暇のことです。

子の看護休暇は、従業員が仕事と育児を両立するための権利であり、育児・介護休業法において定められた法定休暇です。

法定休暇は、育児休暇・産前産後休暇・年次有給休暇などと同じで、企業が自由に内容や取得要件を決められるものではありません。法律上も「事業主は、従業員からの前条第1項の規定による申出があったときは、当該申出を拒むことができない」(育児・介護休業法第16条)とされており、従業員から要件を満たす申請があれば、必ず取得させなければなりません。

もし企業の判断で取得させないような場合、行政の助言・指導・勧告の対象になることもあります。

対象|小学校就学前の子どもを養育する従業員

子の看護休暇は、小学校就学前の子どもを養育する従業員であれば取得できます。もし家族にほかに子どもを看護できる人がいたとしても、要件を満たしていれば取得可能です。

正社員だけでなく、有期雇用(パートやアルバイト、契約職員など)であっても取得できますが、日雇いの従業員の場合は利用できません。

ただし労使協定があれば、一定の条件の従業員について子の看護休暇の対象外とできます。

子の看護休暇の対象外となる条件

無条件で対象外
  • 日雇い
労使協定があれば対象外とできる
  • 入職後6ヶ月未満
  • 1週間の労働日数が2日以下
労使協定について詳しくは、「労使協定をシンプルに解説|36協定との違いとは」の記事をご覧ください。

取得可能日数|子ども1人で年5日間、2人以上で10日間

子の看護休暇を取得できる日数は、従業員1人の子1人に対して年5日間分、2人以上で年10日間分が上限です。従業員は、年次有給休暇とは別に看護休暇を取得できます。また、もし夫婦で同じ企業で働いていたとしても、それぞれ5日間分ずつ請求できます。

子の看護休暇では、1時間単位での休暇取得が可能です。当日の勤務時間のうち一部の時間について業務から外れて、子の看護のために使用できます。

例えば、定時出社が9時である場合、予防注射の付き添いのため2時間の子の看護休暇取得を行い、11時から出社するといった使い方です。以前は半日~1日単位のみで取得可能でしたが、法改正によりさらに細やかな取得が可能になっています。

「子の看護休暇・介護休暇」の時間単位取得について

引用:秋田労働局雇用環境・均等室「子の看護休暇・介護休暇の時間単位取得について

法的には、遅刻もしくは早退のかたちでの利用のみを認めていますが、企業によっては業務中の中抜けを認めている場合もあります。また企業が独自に取得可能日数を増やしているケースもあります。

なお、病院などの交代制勤務で途中で抜けることが難しい業務に関しては、労使協定により時間単位での取得を除外するケースもあります。ただし、この場合でも1日単位での取得は可能です。

給与有無|有給か無給かは企業による

子の看護休暇を取得している間の給与について法律上の規定は設けられていないため、有給・無給のどちらでも問題ありません。給与の有無は、それぞれの企業の判断次第です。例えば、未就学児の期間は有給で、小学校就学後は取得は可能だが無給という企業もあります。

法が定める条件を上回る休暇取得を認めている企業例

子の看護休暇を取得している間に給与が発生する場合は、就業規則への反映が必要です。

なお、子の看護休暇を取得する従業員を無給にする場合、「通常の欠勤」と区別しておくことが必要です。欠勤は本来出勤すべき日であるのに従業員に由来する理由(自己都合)で休むことを指します。欠勤は労働契約違反となるため、回数が多いと評価を下げる要因となってしまいます。

子の看護休暇を含む法定休暇は法律により定められた従業員の権利であるため、休暇を取得した従業員に対して、不利な扱いを行うことは禁止されています。

他の休暇の違い

子を持つ従業員が使える制度は複数あります。「休暇を取得する権利」という点では子の看護休暇と他の制度も同様ですが、発生条件、給与の有無、子の年齢制限、取得日数・期間などで違いがあります。

子を持つ従業員が利用できる休暇

名称 無給にできる 子の年齢制限 条件 取得できる日数・期間
年次有給休暇 なし 一定以上の勤続年数 勤続年数に応じて有給休暇を付与
※5日間は取得させないと罰則規定あり
介護休暇 なし 要介護状態にある対象家族(配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫)を持つ 対象家族1人あたり、1年で5日まで(2人以上の場合は、10日まで)
育児休暇 原則1歳未満
  1. 同一の事業主に引き続き1年以上雇用されている
  2. 子が1歳6ヶ月に達する日までに、労働契約(更新される場合には、更新後の契約)の期間が満了することが明らかでない
企業により異なる
子の看護休暇 未就学児 なし 従業員1人につき5日間まで(子が2人以上の場合にあっては、10日間まで)

2021年法改正「子の看護休暇」の変更点

子の看護休暇は、もともと2002年に努力義務として制定され、一定の条件を満たす従業員に対して1日・半日単位での取得を認めていましたが、2021年に改定が行われ、日雇いを除くすべての従業員に対して1時間単位での休暇取得が原則可能になりました。

改正のポイント

引用:厚生労働省「子の看護休暇・介護休暇が時間単位で取得できるようになります!

この改正は、男性の育児休暇が利用されないことを問題視したもので、企業には「子の看護休暇」の柔軟な取得をはじめとして、仕事と育児を両立できる環境づくりが求められています。

子の看護休暇の取得方法

そもそも子の看護休暇取得は従業員の権利であり、就業規則に明記されていてもいなくても要件を満たす取得は拒否できません。ただ、企業・従業員双方にとってルールを明確にするためにも、企業は以下の内容を就業規則に盛り込み、周知することが推奨されています。

企業が「子の看護休暇」に関して就業規則に盛り込むべき項目

  1. 取得できる日数や時間単位の設定
  2. 有給か無給のどちらかの選択
  3. 申請する際のルールの設定

就業規則への記載例

(子の看護休暇)

第14条

  1. 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する従業員(日雇従業員を除く)は、負傷し、又は疾病にかかった当該子の世話をするために、又は当該子に予防接種や健康診断を受けさせるために、就業規則第◯条に規定する年次有給休暇とは別に、当該子が1人の場合は1年間につき5日、2人以上の場合は1 年間につき10 日を限度として、子の看護休暇を取得することができる。この場合の1年間とは、4月1日から翌年3月31日までの期間とする。
  2. 子の看護休暇は、時間単位で始業時刻から連続又は終業時刻まで連続して取得することができる。
  3. 取得しようとする者は、原則として、子の看護休暇申出書(社内様式◯)を事前に人事部労務課に申し出るものとする。
  4. 本制度の適用を受ける間の給与については、別途定める給与規定に基づく労務提供のなかった時間分に相当する額を控除した額を支給する。
  5. 賞与については、その算定対象期間に本制度の適用を受ける期間がある場合においては、労務提供のなかった時間に対応する賞与は支給しない。
  6. 定期昇給及び退職金の算定に当たっては、本制度の適用を受ける期間を通常の勤務をしているものとみなす。

参考:厚生労働省「就業規則への記載はもうお済みですか

就業規則には以上のように記載することができます。就業規則の変更について、詳しくは「【2023年4月法改正】就業規則の見直しチェックリストと変更時の5ステップ」の記事をご覧ください。

一般的に従業員には子の看護休暇の申請時に以下の情報の提出を求めます。

子の看護休暇取得方法

  • 自身の名前
  • 子の名前と生年月日
  • 子の看護休暇の取得年月日(時間単位の場合は取得時間も必要)
  • 病気やケガの証明または予防接種などの理由

ただし、子の看護は事前に分かる予定もあれば、急な発熱などで予期せず必要となるケースもあります。企業それぞれの必要性に合わせて、柔軟な対応を行えるとより良いでしょう。

子の看護休暇の運用例

  • 事前申請に限らず、当日の電話・メールでの申請でもOKとする
  • 証明書類について、医師の診断書以外にも薬の領収書も認め
  • そもそも証明書類は必要ないとする※

※子の看護休暇の使用率で両立支援等助成金などを受け取る場合は書類が必要ですが、社内での制度としてあるだけの場合は必ずしも書類の提出を求める必要はありません

企業が「子の看護休暇」取得を推進する2つのメリット

子の看護休暇の法的な取得要件はこれまでに述べた通りですが、従業員の仕事・育児の両立のために取得しやすいように制度を整えたり、拡充したりする企業も存在します。

子の看護休暇を取得しやすい企業となることで得られるメリットを2つ取り上げて説明します。

1.人材定着、採用への好影響

企業は、子の看護休暇を育児・介護休業法の規定よりも独自に拡大した仕組みを制定できます。法律の規定よりも充実した子の看護休暇を整備することで、働きやすい企業として人材定着や人材採用への好影響を期待できます。

子の看護休暇を利用する世代は主に20代~40代が想定され、転職市場も活発です。総務省統計局の「労働力調査」によれば、2022年の転職等希望者のうち、約5割が25歳~44歳であることが明らかになっています。転職顕在・潜在層のボリュームゾーンであるこれらの世代に向けた社内制度が充実していることは、人材採用において1つのアピールポイントになると考えられます。また、すでに自社で働いている、子を養育する従業員にとっても、定着への好材料となることが期待できるでしょう。

2.助成金

仕事と家庭の両立支援に取り組む事業者に向けて、働きながら子どもを養育している従業員を守る助成金である「両立支援等助成金(育児休業支援コース)」などのサポートが用意されています。

子の看護休暇については、以下の制度が整備されている場合、条件を満たします。

両立支援等助成金を受けるための子の看護休暇の条件

  • 時間単位で取得可能
  • 有給休暇とする

両立支援等助成金を受けるための企業の条件は以下です。

両立支援等助成金を受けるための企業の条件

  • 雇用保険を適用している事業主である
  • 育児休暇復帰後に子の看護休暇制度を利用した実績がある
  • 支給のための調査に協力できる
  • 申請期間内に申請できる

これらの条件を満たし申請が受理されると、1事業主につき1回まで28万5,000円支給されます。また、制度を利用するときにも取得時間に応じて1時間あたり1,000円が支給されます。

ただし、制度導入時に助成金を申請できるのは、企業の中で1人目の対象者が出たときであり、1つの企業につき5人まで、さらに年度あたり200時間が上限です。

両立支援等助成金は、一度でも従業員が子の看護休暇を利用した経験があり、助成金を受けるための取り組みを整備できるのであれば、企業規模に関わらず申請できます。企業で子の看護休暇を拡充する場合にはぜひ検討してみてください。

※金額・対象時間は2023年5月時点のものです。

まとめ|子の看護休暇を正しく活用し、従業員の働きがいを高める

子の看護休暇とは、子どもが病気やケガをした際に取得できる休暇のことで、有給か無給かについては企業が定めることができます。

2021年の改正で1時間単位での休暇取得が可能になり、原則、日雇いを除くすべての労働者が取得可能になりました。正しく活用できれば、育児中の従業員の働きやすさを向上させ、働きがいを持って長く企業に勤める一助になるでしょう。

子の看護休暇を法律で定められた要件以上に拡充し定めることで、人材採用・定着に好影響をもたらし、助成金を受けることも可能です。自社に合うルールを検討し、多くの育児中の従業員にとって使いやすい制度を整備・拡充しましょう。

よくある質問

Q1.子の看護休暇とは?
「子の看護休暇」とは、小学校就学前の子どもを養育する従業員が、子どもの病気・ケガ・検診・予防接種などのために取得できる休暇のことです。
子の看護休暇は、従業員が仕事と育児を両立するための権利であり、育児・介護休業法において定められた法定休暇です。そのため、育児休暇・産前産後休暇・年次有給休暇などと同じで、企業が自由に内容や取得要件を決められるものではなく、従業員から要件を満たす申請があれば、必ず取得させなければなりません。
なお、子の看護休暇を取得している間の給与について法律上の規定は設けられていないため、有給・無給のどちらでも問題ありません。

詳しくは、「子の看護休暇とは、育児・介護休業法で定められた休暇」の章をご覧ください。
Q2.子の看護休暇で、2021年度から制度変更されたポイントは?
子の看護休暇は、もともと2002年に努力義務として制定され、一定の条件を満たす従業員に対して1日・半日単位での取得を認めていましたが、2021年に改定が行われ、日雇いを除くすべての従業員に対して1時間単位での休暇取得が原則可能になりました。
この改正は、男性の育児休暇が利用されないことを問題視したもので、企業には「子の看護休暇」の柔軟な取得をはじめとして、仕事と育児を両立できる環境づくりが求められています。

詳しくは、「2021年法改正「子の看護休暇」の変更点」の章をご覧ください。

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