不正打刻は違法!事例や発生時の対処法、防止のために勤怠管理で意識すべきポイント

更新日:2024年10月28日
不正打刻を防止する勤怠管理システム

勤怠管理では、従業員の協力を得つつ労働時間を正確に把握することが重要です。

もちろん、多くの従業員はルールに沿って勤怠管理を行ってくれますが、不正打刻が起きる可能性もゼロではありません。そのため企業は、勤怠管理システムの導入も含めた防止策を事前に打ち出し、意図的な不正打刻はもちろん、うっかりした打刻ミス等を防ぐことが求められます。

今回の記事では、不正打刻のよくある事例や発覚時の適切な対処法、企業が行うべき日頃の対策などについて解説します。

勤怠の不正打刻は「違法」!具体的に問われる罪は?

勤怠の不正打刻は「違法行為」です。万が一、従業員が悪意を持って不正打刻した場合、以下のような罪に問われる可能性があります。

詐欺罪(刑法)

「勤務時間を水増しして残業代を受け取る=企業を騙して不正に給料を受け取る」という行為であるため、詐欺罪が適用される可能性があります。

電磁的記録不正作出罪(刑法)

Webやパソコン内のデータを編集して勤怠を不正打刻した場合、「電磁的記録を改ざんした」とみなされて、電磁的記録不正作出罪が適用される可能性があります。

私文書偽造罪(刑法)

紙のタイムカードを改ざんした場合は、「文書を偽造した」とみなされて、私文書偽造罪が適用される可能性があります。

悪意の受益者の返還義務等(民法)

勤怠を不正打刻し給料を受け取った場合、「悪意を持った方法を使って利益を得た」とみなされ、悪意の受益者の返還義務等に基づき、給料返還や損害賠償を行うよう求められる可能性があります。

万が一、従業員を上記の罪で訴えるとなった場合、企業側の手間がかかりますし、精神的にも辛いはずです。お互いが気持ちよく働き続けるためにも、企業は不正打刻が起こらないよう対策することが求められます。

よくある不正打刻の事例

勤怠の不正打刻に関するよくある事例としては、以下が挙げられます。

  • 遅刻しそうなときに同僚に代理でタイムカードを切ってもらう
  • タイムカードを切らずに定時退社し、残業中の同僚が退社するタイミングで代わりにタイムカードを切ってもらう
  • 手書きのタイムカードの記録時間を改ざんした
  • 退勤打刻をせずに一度退社して、再び戻った後に退勤打刻を行う

不正打刻の事例としては、主に上記のような「代理打刻」「カラ残業による残業代の水増し」が挙げられます。1回であれば金額も微々たるものですが、何度も繰り返し不正打刻が行われると、企業に何十万円レベルで損害を与えかねません。

管理者が従業員の勤怠を改ざんするケースもある

あってはならないことですが、従業員の残業代を少なく見積もるために、管理者が部下の勤怠を不正打刻するケースもあります。とくに現在は働き方改革の影響もあり、経営層から「部署の残業を減らすように」と通達されている管理者もいるはずです。そうした中で、残業が発生していないように見せる最終手段として、管理者が不正打刻することがあります。

管理者による改ざんを見逃せば、企業の信用低下を招くだけでなく、従業員から労働基準監督署へ告発される可能性もゼロではありません。

従業員の健康を守ることはもちろん、企業への信頼を失わないためにも、不正打刻が発生しないよう対策することが重要です。

従業員や管理者の不正打刻を発見した場合の対処法

万が一、従業員や管理者による不正打刻を発見した場合は、以下のような方法で適切に対処してください。

  • 事実確認を行う
  • (懲戒解雇以外で)懲戒処分を行う
  • 懲戒解雇を行う
  • 過払い分の残業代を返還請求する
  • (やむを得ない場合は)法的措置を検討する

事実確認を行う

最初に必ず、不正打刻をしたと思われる本人へ事実確認を行ってください。事実確認を行わず、一方的に「懲戒解雇」などの処分を下すと、従業員との信頼関係は崩れトラブルに発展します。

まずは、証拠や事実を確かめてから対処することを心がけてください。

(懲戒解雇以外で)懲戒処分を行う

本人が不正打刻を認めた場合は、以下のような基準をもとに(懲戒解雇以外で)懲戒処分を行ってください。

  • 明確な悪意を持って不正打刻をしたか?
  • 不正打刻を何回行っていたのか?
  • 反省しているか?

懲戒解雇以外の懲戒処分としては、具体的に以下が挙げられます。

  • 戒告:口頭での注意に留める
  • けん責:口頭で注意したうえで始末書の提出を求める
  • 減給:給料を減額する
  • 出勤停止:職場への出勤を一定期間、禁止する
  • 降格:現在の役職やポジションから引き下げる
  • 諭旨解雇:従業員と話し合ったうえで解雇を勧告する

例えば、勤怠ルールを把握していない新人が悪意なく不正打刻をした場合は「戒告のみ」、何度も繰り返しており悪質性が高い場合は「諭旨解雇」、といった選択が考えられます。

懲戒解雇を行う

不正打刻の証拠が集まったうえで、以下のようにとくに悪質性が高いと判断されれば、懲戒処分の中で最も重い「懲戒解雇」を検討してください。

  • 明確な悪意を持って不正打刻している
  • 何度注意しても改善されない
  • 就業規則で打刻ルールを明文化しているにも関わらず、複数回の不正打刻を行った
  • 反省の色が全く見られない
  • 不正打刻によって手にした金額が大きい

一番重い処分になるため、できれば懲戒解雇の判断は避けたいですが、明らかに悪質性が高いと認定されるのであれば、職場の風紀を守るためにも懲戒解雇を行う必要があります。

過払い分の残業代を返還請求する

懲戒処分の実行に加えて、企業が従業員へ余計に支払った給料の返還請求を行います。もし過払い給料分を請求しなければ、周囲の従業員から「この企業は不正打刻をしても大きな処分は受けない」と思われてしまう可能性もあります。

もちろん、多くの従業員がモラルを守って行動しているため、「過払い分を請求しない=職場のモラルが崩壊する」というわけでは決してありません。

とはいえ、返還請求しなかった前例を作ってしまうと、後々になって、不正打刻を行う者が再び現れる可能性もあります。未然に防止する意味でも、必ず返還請求は行ってください。

(やむを得ない場合は)法的措置を検討する

企業の手間や従業員との関係性を考えても、基本的には懲戒処分で留めることが理想です。しかし本来、不正打刻は詐欺罪などに該当する犯罪です。そのため、企業が慎重に検討し「非常に悪質」と判断した場合は、従業員を訴えることもできます。

ただし、訴訟には膨大な費用と時間が必要です。本当に訴訟すべきかは、過払い金額の大きさや悪質性の高さなどを踏まえ、弁護士へ相談してから判断することをおすすめします。

不正打刻防止のため管理時に企業が意識すべきポイント

万が一、不正打刻が判明したら、企業は適切な処分を下すことが必要ですが、事前に不正打刻を防止できることが一番の理想です。そのためにも企業は、日頃から勤怠管理で以下のポイントを意識してください。

  • 就業規則で勤怠管理のルールを明確に定めて周知しておく
  • 不正打刻の証拠を集められる体制を整えておく
  • 不正打刻が発生しても絶対に勝手に修正しない
  • 勤怠管理システムを導入する

就業規則で勤怠管理のルールを明確に定めて周知しておく

就業規則では、以下のような勤怠管理に関するルールを明文化してください。

  • 「打刻時の位置情報を記録している」「本人以外の打刻は認めない」といった不正打刻の抑止につながる内容
  • 悪質な不正打刻を行った従業員への具体的な対処方法
  • 残業時や直行直帰時の打刻ルール
  • 意図しない打刻ミスが発覚した場合の対応

勤怠ルールとして明文化し従業員へ周知することで、不正打刻の抑止力になります。

ルールを明文化することで「企業は日頃から適切に勤怠を管理できるよう対策していた」とも認定されるため、もし懲戒解雇を行う場合でも対処の妥当性が認められやすくなります。

不正打刻の証拠を集められる体制を整えておく

従業員による不正打刻が疑われた場合、まずは証拠を集める必要があります。そのため、日頃から従業員の勤怠を管理し、いざという場合に証拠として提出できる仕組みを整えておくことが大切です。具体的な例は以下の通りです。

  • 打刻時の位置情報を取得しておく
  • パソコンの操作ログを取得する

上記のような対策を行っておけば、例えば「自分が遅刻しそうなときに同僚に代理で打刻を頼んだ」となっても、本人が打刻したかを確認できます。

不正打刻が発生しても絶対に勝手に修正しない

上司や管理者が部下の不正打刻を発見した際、勝手に正しい時間に修正してはいけません。仮に部下が本当に不正打刻をしていたとしても、上司や管理者の行為自体が改ざんと見なされるリスクがあります。

不正打刻が発覚したら、修正を加える等せず、そのままの状態で該当の従業員へ確認してください。

勤怠管理システムを導入する

不正打刻の防止に有効な手段が「勤怠管理システムの導入」です。勤怠管理システムであれば、従業員の出退勤時間や休憩時間、残業時間といった情報を正確に把握できます。とくに、以下のように従業員本人だけが打刻できるシステムを導入すれば、不正打刻の防止に大いに役立つはずです。

  • パスワード認証:個人に割り当てたパスワードで認証した場合のみ打刻できる仕組み
  • ICカード認証:従業員に配布したICカードで打刻してもらう仕組み

勤怠管理システムにはさまざまな種類の製品があるため、自社のコストや目的に応じたツールを選ぶことが大切です。例えば、株式会社フリーウェイジャパンが提供するフリーウェイタイムレコーダーであれば、上記のパスワード認証とICカード認証に対応したシステムを「従業員10人までは永久無料」で利用できます。「勤怠管理システムの導入経験がないのでいきなりコストを割くのは不安」といった企業でも、安心して利用可能です。

各従業員のスマホやタブレットを登録して、勤怠管理に活用することもできます。従業員が11人以上に増えても「月額1,980円」という安さで使えるため、ぜひお試し感覚でご利用ください。

具体的な勤怠管理システムの機能や選び方などは、「勤怠管理システムとは?機能や導入メリット、初めての方でも迷わない選び方のポイントなどを詳しく解説」で詳しく解説しています。

まとめ | 勤怠管理システムを導入して不正打刻を未然に防ごう

勤怠の不正打刻は、詐欺罪や電磁的記録不正作出罪などに問われる可能性のある、違法行為です。そのため、もし不正打刻が発生した場合は、厳正な処分を行う必要があります。

最初に事実確認をして「不正打刻があった」と確定してから、悪質性や本人の反省度合いなどを考慮し、適切な懲戒処分の内容を決めてください。

もちろん、一番の理想は「不正打刻が発生しないこと」です。不正打刻を未然に防ぐには、以下の対策を日頃から実行してください。

  • 就業規則で勤怠管理のルールを明確に定めて周知しておく
  • 不正打刻の証拠を集められる体制を整えておく
  • 不正打刻が発生しても絶対に勝手に修正しない
  • 勤怠管理システムを導入する

とくに不正打刻を防ぐうえでは、本人確認をしつつ打刻時間を正確に把握できる「勤怠管理システムの導入」が重要です。勤怠管理システムには、今回紹介したフリーウェイタイムレコーダーをはじめとして多くの種類があるため、利用したい認証方法やコスト面などを踏まえて導入を検討してください。

よくある質問

Q1.不正打刻は違法?

違法です。刑法の「詐欺罪」「電磁的記録不正作出罪」「私文書偽造罪」、民法の「悪意の受益者の返還義務等」に該当する可能性があります。

Q2.不正打刻を行うと、どんな処分が下される?

以下いずれかの処分が下されます。

  • 戒告:口頭での注意に留める
  • けん責:口頭で注意したうえで始末書の提出を求める
  • 減給:給料を減額する
  • 出勤停止:職場への出勤を一定期間、禁止する
  • 降格:現在の役職やポジションから引き下げる
  • 諭旨解雇:従業員と話し合ったうえで解雇を勧告する
  • 懲戒解雇:従業員を解雇する
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