働き方改革関連法の施行により、企業には客観的な勤怠管理が義務化され、多くの企業が従来のタイムカードやExcel管理からデジタル勤怠管理システムへの移行を進めています。しかし、数多くのシステムが提供される中で「どのシステムが自社に最適なのか」「導入後に失敗しないか」といった不安を抱える企業担当者も少なくありません。
本記事では、2025年最新の勤怠管理システム13選を比較し、中小企業向け、大企業向け、人事労務統合型、無料利用可能なサービスの4つのカテゴリーに分けて詳しく紹介します。また、システム導入による具体的なメリットや、企業規模・業種に応じた失敗しない選び方も解説しています。
勤怠管理システムとは、従業員の出退勤時刻、労働時間、休暇取得状況などを自動的に記録・管理するITシステムです。従来の紙のタイムカードやExcelでの管理に代わる、効率的な勤怠管理手段として多くの企業で導入が進んでいます。
システムの導入により、打刻から給与計算まで一連の業務を自動化できるため、人事担当者の作業負担を大幅に軽減できます。また、リアルタイムでの労働時間把握が可能になることで、働き方改革関連法への対応や適切な労務管理を実現できるのが特徴です。
現在では、ICカード打刻、生体認証、スマートフォンアプリなど多様な打刻方法に対応したシステムが提供されており、企業の規模や業種に応じて最適なソリューションを選択できる環境が整っています。
近年、中小企業においてもデジタル勤怠管理システムの導入が急速に進んでいます。働き方改革関連法の施行や、コロナ禍によるテレワークの普及が導入を後押ししており、従来は大企業中心だったシステム導入が中小企業にも広がっています。
この背景には、2019年の働き方改革関連法施行により、労働時間の客観的把握が義務化されたことが大きく影響しています。従来のタイムカードや自己申告による勤怠管理では法的要件を満たすことが困難になり、多くの企業がシステム導入を検討せざるを得ない状況となりました。
2019年4月1日施行の改正は以下です。
加えて、コロナ禍によるテレワークの普及も導入を後押ししており、場所を問わず勤怠管理ができるクラウド型システムへの需要が特に高まっています。今後も法規制の強化や働き方の多様化に伴い、導入傾向は継続すると予測されています。
勤怠管理システムの主なメリットを説明します。
勤怠管理システム導入の最大のメリットは、労務管理業務の大幅な効率化です。従来の手作業による集計作業が自動化されることで、人事担当者の業務時間を月20〜30時間削減できるケースが多く報告されています。効率化により、人件費削減も目指せます。
システムが自動で労働時間を計算し、残業代や各種手当も正確に算出するため、給与計算に要する時間も大幅に短縮されます。また、計算ミスによる給与の過不足支給を防げるため、事後対応の手間も削減できます。
また、関連業務の工数が削減されることで、割り当てる人員を少なくすることができ、結果的に人件費削減につながります。
2019年4月から施行された働き方改革関連法では、客観的な方法による労働時間の把握が義務化されました。勤怠管理システムを導入することで、この法的要件を確実に満たすことができます。
システムには残業時間の上限アラート機能や有給休暇の取得促進機能も搭載されているため、36協定違反(時間外労働・休日労働に関する協定)の防止や有給取得率の向上といった働き方改革の実現にも直結します。労働基準監督署からの指導を受けるリスクも大幅に軽減できます。
勤怠データをデジタル化することで、労働時間の傾向分析や生産性の可視化が可能になります。部署別・個人別の労働時間分析により、業務の偏りや非効率な作業プロセスを発見し、適切な人員配置や業務改善につなげられます。
蓄積されたデータは経営戦略の立案にも活用でき、繁忙期の人員計画や事業拡大時の採用計画など、データに基づいた意思決定を行えるようになります。
システム導入により、従業員自身が労働時間や有給残日数をリアルタイムで確認できるようになります。透明性の高い勤怠管理は従業員の信頼感を高め、職場満足度の向上にもつながります。
また、テレワークやフレックスタイム制度にも柔軟に対応できるため、多様な働き方を支援し、優秀な人材の確保・定着にも貢献します。
勤怠管理システムには、打刻機能だけでなく、法定内での労働時間になるよう管理できる機能や給与計算システム連携などの機能もあります。
勤怠管理システムの核となる機能は、従業員の出退勤時刻を正確に記録することです。ICカード、指紋・静脈認証、顔認証、スマートフォンアプリ、Webブラウザなど、多様な打刻方法に対応しています。
打刻データは自動的にサーバーに記録され、リアルタイムで労働時間が計算されます。遅刻・早退・欠勤の自動判定機能も備えており、勤怠状況を一目で把握できる管理画面が提供されています。
システムは労働基準法に基づいた複雑な労働時間計算を自動で実行します。所定労働時間、法定労働時間、休憩時間を考慮し、法定内残業、法定外残業、深夜労働、休日労働を正確に区分して計算します。
36協定で定められた残業時間の上限に近づくと自動でアラートを発信し、管理者と従業員の両方に通知する機能も標準装備されています。これにより労働基準法違反を未然に防ぐことができます。
年次有給休暇の付与日数、取得日数、残日数を自動で管理し、従業員が自身の有給残日数をいつでも確認できる機能を提供しています。有給取得の申請から承認までをシステム上で完結できるワークフロー機能も搭載されています。
また、慶弔休暇、病気休暇、育児休業、介護休業など各種休暇制度にも対応しており、企業独自の休暇制度もカスタマイズして設定できます。
多くの勤怠管理システムは主要な給与計算ソフトウェアとの連携機能を備えています。勤怠データを給与計算システムに自動で連携することで、給与計算業務の効率化と精度向上を実現できます。
CSV出力機能により、既存の給与計算システムを変更することなく勤怠データを活用することも可能です。
勤怠管理システムの料金形態や相場は、以下のようにまとめられます。
勤怠管理システムの料金体系は主に「月額利用料制」が採用されており、従業員1人あたり月額200円〜500円程度が相場となっています。この料金設定により、企業規模に応じた柔軟なコスト管理が可能です。
初期費用については、クラウド型システムでは無料〜10万円程度、オンプレミス型(サーバーなどのIT機器やソフトウェアを自社で保有し、構築・管理する形態)では50万円〜200万円程度と大きな差があります。中小企業では初期費用を抑えられるクラウド型の選択が一般的です。
また、基本機能に加えて高度な分析機能や外部システム連携機能を利用する場合は、オプション料金が発生するケースもあります。
具体的な料金例として、従業員50名の企業でクラウド型勤怠管理システムを導入する場合を想定すると、月額利用料は15,000円〜25,000円程度となります。年間では18万円〜30万円の運用コストが発生します。
一方で、システム導入による業務効率化効果を考慮すると、人事担当者の残業代削減や給与計算ミス防止によるコスト削減効果の方が大きく、多くの企業で導入から6ヶ月~1年程度でROI(投資回収)を実現しています。
勤怠管理システムの選び方を企業の特性やニーズごとに紹介します。
企業の規模別とサービスの特色別で選ぶポイントを以下にまとめました。
中小企業では、コストパフォーマンスと必要十分な機能のバランスが重要です。従業員数30名から300名程度の企業では、基本的な勤怠管理機能に加えて、部署別管理や承認ワークフロー機能が求められます。
ジョブカン勤怠管理は、月額200円〜500円という手頃な価格で、出退勤管理、シフト管理、休暇申請、工数管理の4つの機能を提供しています。中小企業に必要な機能が過不足なく揃っており、導入実績も豊富です。スマートフォンアプリでの打刻やGPS機能による位置情報記録にも対応しているため、営業職や外回りの多い職種でも安心して利用できます。
https://biz.moneyforward.com/attendance/
マネーフォワードクラウド勤怠は、給与計算や会計システムとの連携に優れており、バックオフィス業務全体の効率化を図れます。勤怠管理以外にも関連業務の様々なサービスを利用できるため、給与計算業務の精度向上と時間短縮を同時に実現できます。
KING OF TIMEは、6万社以上の導入実績を持つ勤怠管理システムです。月額300円/1人で豊富な打刻方法(ICカード、指紋認証、顔認証、スマホアプリなど)に対応しており、企業の成長に合わせて柔軟にカスタマイズできる拡張性が魅力です。
大企業では、複雑な組織構造、多様な勤務形態、高度なセキュリティ要件に対応できるシステムが必要です。また、既存の基幹システムとの連携や、グローバル展開への対応も重要な選定ポイントです。
TeamSpiritは、勤怠管理、工数管理、経費精算、電子稟議を一体化したワークフォース管理システムです。最低50ライセンスからの契約が必要で、月額600 or 800円/1人と高めの価格設定ですが、大企業が求める高度な機能とセキュリティを提供しています。Salesforceプラットフォーム上で動作するため、既存のSalesforce環境との親和性も高く、大企業での導入実績も豊富です。
https://www.xronos-inc.co.jp/products/xronos/
クロノスPerformanceは、複雑な勤務形態や多様な雇用形態に対応できる柔軟性が特徴です。最大1,000通りの勤務区分を設定可能で、製造業、外食産業、小売業、医療機関など、さまざまな業種に適応します。 また、主要な給与計算ソフトとCSV連携が可能で、勤怠データのスムーズな移行が実現可能です。
サイボウズ Officeは、中小企業向けと謳われている勤怠管理システムですが、チームの情報共有と業務効率化を支援するその機能は、大企業の利用にも適しています。
申請・承認をスムーズに行えるワークフロー機能を活用することで、休暇申請や出張申請といった勤怠に関わる業務を電子化し、紙やメールでのやり取りを減らすことが可能です。また、他のグループウェア機能と連携させることで、勤怠と業務スケジュールの整合性を高めたり、部門をまたいだ承認フローを効率化したりと、大企業でも役立つ柔軟な活用ができます。
勤怠管理だけでなく、採用、人事評価、給与計算、労務手続きまで一貫して管理したい企業には、統合型人事システムがおすすめです。
SmartHRは、人事労務手続きのペーパーレス化に特化した統合型クラウドシステムです。勤怠管理に加えて、年末調整、入退社手続き、マイナンバー管理、労務アラートといった機能を備えており、人事労務全体を効率的にサポートします。企業規模や利用範囲に応じたスケーラブルな料金体系が採用されており、詳細は個別に問い合わせる形となっています。中小企業から大企業まで幅広い導入実績があります。
https://hcm-jinjer.com/kintai/
jinjer勤怠は、勤怠・人事・労務・給与を1つのプラットフォームで一元管理できる統合型人事システムです。初期費用を併せて月額400円から利用でき、勤怠データに基づく分析レポートの自動作成や、予実管理、アラート機能など、高度な業務支援機能を搭載しています。業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めたい企業に最適です。
カオナビは、人材情報と勤怠管理を連携させた可視化に強みを持つ人材マネジメントシステムです。顔写真付きの人材データベースと勤怠データを統合し、従業員の配置や育成状況、組織全体の人事戦略を視覚的に把握できます。人事評価や適正配置の見直しを行いたい企業にとって、有効なツールとなるでしょう。
導入コストを抑えたい企業や、まずは勤怠管理システムを試してみたい企業には、無料プランが充実したサービスがおすすめです。
https://freeway-timerecorder.com/
フリーウェイジャパンの勤怠管理システムであるフリーウェイタイムレコーダーは、ユーザー数無制限で完全無料の勤怠管理システムです。出退勤記録、有給休暇管理、労働時間集計といった基本機能を網羅しており、同社が提供する「フリーウェイ給与計算」と連携することで、勤怠から給与計算までを一貫して無料で管理できます。コストを最小限に抑えたい企業にとって非常に魅力的な選択肢です。
HRMOS勤怠 by IEYASUは、30名まで完全無料で利用できる本格的な勤怠管理システムです。有給管理、シフト管理、残業時間の自動計算など、基本的な勤怠機能が網羅されており、31名以上になると月額100円/1人の低価格で継続利用が可能です。初期投資を抑えたいスタートアップや小規模事業者に適したサービスです。
スマレジ・タイムカードは、30名まで無料で利用できるクラウド型勤怠管理システムです。スマートフォンやタブレットを使った打刻、GPS機能、給与計算ソフトとの連携といった機能も無料プランで利用でき、小売業や飲食業など、現場の多い業種での導入実績が豊富です。
kinconeは、20名まで無料で勤怠打刻と交通費精算が一括で行えるクラウドサービスです。交通系ICカードを使って出退勤の記録と交通費申請が同時に行えるため、営業職や外回りの多い企業に特に適しています。簡単な運用で業務効率化を図れる点が特徴です。
勤怠管理システムを比較検討する際は、以下の3つのポイントを意識してみてください。
勤怠管理システムの使いやすさを左右する重要な要素が打刻方法です。ICカード、生体認証、スマートフォンアプリ、Webブラウザなど、従業員の働き方に応じて最適な打刻方法を選択できるシステムが理想的です。
テレワーク対応を考慮する場合は、GPS機能付きスマートフォンアプリやWeb打刻機能の充実度が重要になります。また、製造現場など手が汚れやすい環境では、非接触型の生体認証が適しています。
勤怠データは個人情報を含む重要な情報のため、セキュリティ機能の充実度は必須の比較ポイントです。データの暗号化、アクセス権限管理、監査ログ機能、バックアップ体制などを総合的に評価する必要があります。
クラウド型システムの場合は、データセンターのセキュリティ認証(ISO27001等)取得状況や、国内データセンターでのデータ保管の有無も確認すべき項目です。
企業の成長や制度変更に対応できるカスタマイズ性と拡張性も重要な比較ポイントです。労働時間の計算ルール、休暇制度、承認フロー等を企業の実情に合わせて設定できるかを確認する必要があります。
また、将来的な従業員数の増加や新機能の追加にも柔軟に対応できるシステム構成になっているかも評価すべき要素です。
勤怠管理システムの選定は、単純な機能比較だけでなく、自社の企業規模、業種特性、既存システム環境、将来の成長計画を総合的に考慮することが重要です。適切なシステム選定により、労務管理業務の効率化、法令遵守、従業員満足度向上を同時に実現できます。
導入を成功させるためには、事前の要件整理と無料トライアルでの十分な検証を行い、導入後のサポート体制も含めて製品を選定することが推奨されます。
Q1.勤怠管理システムにはどんな機能がある? |
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勤怠管理システムには、製品にもよりますが、様々な形態の打刻機能・労働時間の計算・休暇管理・給与計算システムとの連携、などの機能があります。 |
Q2.中小企業におすすめの勤怠管理システムは? |
従業員数30名以下の小規模企業では、シンプルな操作性と低コストが重要な選定要素です。基本的な打刻機能と労働時間計算機能があれば十分で、月額利用料が従業員1人あたり200円以下のシステムが理想的です。また、初期費用無料のクラウド型システムを選び、給与計算ソフトとのCSV連携機能があることも重要なポイントです。 |