出戻り社員の雇用を検討している方はいませんか?
現在、日本社会全体の人手不足に伴い、退職後に同じ企業に就職する出戻り社員が注目されています。
雇用を検討される方も多いと思いますが、出戻り社員が復帰したときのイメージが掴めないと雇用に踏み切りにくいですよね。
そこで雇用するメリット・デメリットや活躍を促す支援施策などを解説します。
本記事を最後まで読めば出戻り社員の活躍による業績向上につながるので、ぜひ参考にしてください。
「出戻り社員」とは、自社を退職してから他の企業で働いたり独立したりした後に、元々勤めていた企業に再び雇用される従業員を指します。転職、育児、介護など、退職の理由を問わず再雇用された場合は基本的に出戻り社員として扱われます。
一度退職した社員が同じ企業で雇用されるパターンとして「継続雇用制度」が挙げられますが、これは出戻り社員に該当しません。
継続雇用制度とは
事業主が65歳になり定年を迎えた社員を引き続き雇用する制度。高年齢者雇用安定法第9条によって事業主に実施を義務づけられている。事業主は継続雇用制度を実施するほかに65歳までの定年の引き上げと定年の廃止から施策を選択できる。
継続雇用制度に当てはまらない形で再雇用された従業員が出戻り社員です。
厚生労働省が2023年12月に実施した「再雇用制度の状況に関する調査」によると近年、企業全体の16.7%が再雇用制度を設けており、出戻り社員の採用を行う企業が増加傾向にあることが分かります。
株式会社リクルートが2023年3月に実施した「企業の人材マネジメントに関する調査2023」によると企業全体の55.5%が「出戻り社員の受け入れを行っている」と回答しました。
なぜ出戻り社員の採用を行っている企業が増えているのか。その理由として考えられるものは以下の3つです。
出戻り社員を受け入れている企業が増加傾向にある主な理由
本項では各理由について詳しく解説します。
企業は基本的に低コストで成果を出してくれる人材を求めており、出戻り社員は希望人材に該当しやすいです。
出戻り社員はすでに自社の企業文化を理解しており、業務を行うための知識とスキルを持っている可能性が高いため、研修・教育コストをかけずに即戦力となってくれると期待できます。
現在の日本は少子高齢化によって就職・転職市場にいる人材が企業の求める人材よりも少なくなっており、いわゆる「売り手優位」な状況です。
多くの企業は人手不足を解消するために受け入れの間口を広げる必要があり、一度退職した出戻り社員の再雇用に注目が集まっています。
一昔前の日本社会では新卒で就職した企業において定年まで働く「終身雇用制度」が一般的であり、出戻りする社員が少なく再雇用制度を設けている企業は多くありませんでした
しかし現在は労働者がより良い雇用条件を求めて転職するのが当たり前の時代であり、希望する雇用条件に合うのであれば一度退職した企業に出戻りする労働者も増えています。
企業の中には出戻り社員に向けて窓口を設けているものがあります。これは人材の流動性が高まる昨今、優秀な人材を確保しやすくするための工夫の一つです。
企業は多様な働き方への理解から、再雇用に対する抵抗感がなくなっていると考えられます。
新卒・中途採用で雇用する従業員と出戻り社員では何が違うのでしょうか。
再雇用するメリットとしては以下の3つが挙げられます。
出戻り社員を雇用するメリット
各メリットについて詳しく解説するため、出戻り社員を雇用するデメリットと合わせて再雇用の検討に役立ててください。
出戻り社員は研修・教育をしなくても自社の企業文化、事業、業務などに業務に関する知識と業務をこなすスキルを持ち合わせている可能性が高いため、雇用後に早い段階で活躍してくれると期待できます。
仮に自社の業界・事業の経験者を中途採用で雇用しても、その従業員が自社ならではの企業文化や細かいルールなどに適応するまでは時間がかかります。
人材不足や現場ですぐに活躍してくれる社員を求めている企業ほど、即戦力になりやすい出戻り社員はマッチするはずです。
企業はすでに出戻り社員の能力、性格、人間関係などを把握している場合が多いため採用後のミスマッチを回避しやすくなります。
また出戻り社員にとってもミスマッチを回避しやすくなります。厚生労働省が令和5年に実施した調査によると、労働者が離職する主な理由として「労働条件がよくなかった」や「満足のいく仕事内容ではなかった」などが挙げられているため、内情を知っている出戻り社員を雇用すればミスマッチによる離職の予防が可能です。
参考:厚生労働省「3.再雇用制度の状況」
出戻り社員はすでに企業文化、事業、業務を理解しているので、改めて研修・教育しなくてはならない内容は比較的少なくて済みます。
そのため出戻り社員を雇用すれば、新人を雇用したときに比べて教育担当者のリソースや予算を圧迫せず、研修・教育コストを抑えやすくなります。
再雇用の主なデメリットは以下の4つです。
出戻り社員を雇用するデメリット
各デメリットについて詳しく解説します。出戻り社員を雇用するメリットと合わせて検討に役立ててください。
再就職をする社員は転職に対する抵抗感が薄れていると考えられます。そのため再就職前のイメージと実態が異なったり、退職したときの原因が解消されていなかったりする場合は、再離職が懸念されます。
出戻り社員は長期間自社から離れているため、働いていた当時と比べて、企業文化や業務のやり方などが変化している場合は混乱してしまう可能性があるのがデメリットです。
また過去の企業文化や業務のやり方にこだわるあまり、業務を効率化できなかったり既存の従業員と衝突してしまったりして、企業全体の生産性を下げてしまうことも考えられます。
既存の従業員たちが業務のやり方や上下関係の掴みづらさによって出戻り社員とのコミュニケーションを上手く取れず、仕事をやりにくいと感じてしまう可能性があります。また出戻り社員の待遇が既存の従業員よりも良いと、既存の従業員が不平不満を覚える恐れもあります。
既存の従業員のモチベーションが低下すると業務の効率が下がりやすくなるため、出戻り社員を雇用するときは既存従業員への配慮も重要です。
出戻り社員を雇用すると既存の従業員たちが「退職してもどうせ戻って来られるだろう」と転職に対するハードルが下がります。
転職への抵抗感が薄まると既存従業員の離職やモチベーション低下につながります。
出戻り社員がスムーズに職場に復帰して円滑に業務を行うためには、以下4つのポイントを押さえておくと効果的です。
再雇用するときに押さえておきたいポイント
各ポイントについて詳しく解説するので実践に役立ててください。
再雇用するときは給料、ポジション、キャリアビジョンなどの要望を確認しておくのがおすすめです。
要望を完全に受け入れられなくても、意見の擦り合わせを行っておくと、出戻り社員が納得して働き始められるため不満が起こりにくく、スムーズな職場復帰や再離職を防ぐことにつながります。
社内の現状を出戻り社員に詳しく説明しておくと働き始めてからのギャップが小さくなり、パフォーマンス向上と定着を促せます。
特に出戻り社員が前回と担当するポジション・業務が異なる場合や、企業文化・細かなルールが変化していた場合は変更点について伝えておくと効果的です。
既存の従業員に出戻り社員に関して説明しておくと、既存の従業員がスムーズに受け入れられやすくなります。説明する内容は以下のとおりです。
既存の従業員に説明するべき出戻り社員に関する情報
既存従業員への説明に加えて、出戻り社員が職場に馴染むまではサポートできる体制を整えておくのも大切です。
既存の従業員が出戻り社員について過去の経験、スキル、性格などを詳しく知っていると、任せるべき業務や扱い方などがある程度わかるため、受け入れがスムーズになり業績向上につながります。
再雇用制度を用意しておくと、出戻り社員が再就職するハードルが下がったり再雇用後に活躍してもらいやすくなったりする効果が期待できます。
例えば、再雇用制度の1つに「アルムナイ制度」があります。アルムナイ制度とは自主的に離職した人材を再雇用しやすくするための制度です。具体例としては退職後も社内の状況がわかるウェブサイトやSNSなどの設置が挙げられます。
アルムナイ制度を含めた再雇用制度によって従業員が退職後も気軽に交流が結べる機会を用意しておくと、復帰のハードルが下がりやすくなります。また社内の細かな事情や雰囲気も把握できるためスムーズな復帰が可能です。
出戻り社員を雇用した後に、活躍しやすいサポート体制を整えたり状況に応じたフォローをしたりすれば、出戻り社員が業務や既存の従業員などと早く馴染み、成果を出しやすくなります。
具体的には以下の2つが支援施策として挙げられます。
出戻り社員の活躍を促す支援施策
本稿ではそれぞれの支援施策について詳しく解説するので、実践に役立ててください。
職場環境に意識を向けて改善に取り組めば、出戻り社員のパフォーマンス向上と定着につながります。
職場環境は以下の5つの要素によって構成されており、要素ごとに改善施策を打てばスムーズな調整が可能です。
職場環境の要素ごとの詳細と改善策例
職場環境の要素 | 詳細 | 改善策例 |
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物理化学的環境 | エアコンの温度や湿度設定、照明、騒音対策などが従業員にとって快適になっているのかを確認し調整する。物理化学的環境にはオフィスや作業場だけでなく、トイレや休憩所などの環境も含まれる。 | 受動喫煙の防止、有害環境減の隔離、緊急時対応の手順の改善など。 |
人間工学的側面 | 作業場所における設備や機器が従業員の体に負担を与えていないかを確認し調整する。 | デスク、椅子、パソコンなどの位置や機能の調整。 |
人間関係 | 従業員同士の人間関係が良好でコミュニケーションが円滑かどうかを確認し調整する。 | 上司や同僚に相談しやすい環境を整える。従業員が作業しやすいように情報の共有をしたり、研修の機会を提供したりするなど。 |
仕事の負荷 | 従業員の経験や能力を考慮して人事配置を行い、仕事の負荷がかかり過ぎないように調整する。 | 業務の質と量が従業員にとって無理のある場合は人員を増やして一人一人の負担を減らす。 |
仕事の自由度・裁量権 | 業務内容が単調で従業員のモチベーションが低下している場合は他の業務を任せたり業務の難易度を上げたりする。 | 単調な作業の繰り返しにならないように、分担できる作業の幅を広くして、従業員が達成感を得られるように工夫する。 |
職場環境を構成する要素の内、多くの業務を抱える企業にとって仕事の負荷を減らすのは難しい課題です。
業務を効率化して負担を減らす方法として管理ツールの活用が挙げられます。
「フリーウェイタイムレコーダー」を含めた勤怠管理システムを活用すれば、タイムカードの収集や集計表の作成が自動化され、手間が少なくなるうえにミス発生の予防も可能です。
出戻り社員を雇用するときは、以下4つの従業員の結束力を高めるフレームワークを実践すると、出戻り社員が既存の従業員と連携が取りやすくなり、パフォーマンス向上と定着につながります。
例えば「GRPIモデル」を活用すれば、チームにおける課題や優先順位などが明らかになり効果的な改善施策のスムーズな立案と実行が可能です。
GRPIモデルでは下表のとおり4項目に基づいてチームを評価して課題の特定を行います。
従業員同士の結束を固めるGRPIモデル
項目 | 詳細 |
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Goal:目的・目標 | 目指す数値や期間などを明確に示し、従業員が同じ目標を意識できるようにする。目標は一人が独断で決めるのではなくなるべく話し合ってから設定する。 |
Roles:役割 | 目標達成のために従業員の役割や業務内容を決める。行わなければならない業務を列挙したうえで従業員のスキルに応じて役割分担をする。人員が不足している場合は補充を検討する。 |
Process:手順・段取り | 目標達成の手順を決定する。最終目標のための中間目標や細かな目標なども設定すると手順が考えやすい。あらゆるパターンを予期して対策を練っておくのも重要になる。 |
Interpersonal Relationship:人間関係 | 従業員同士のコミュニケーションを円滑にするために、コミュニケーションを取る機会が十分にあるか、信頼関係を築けているか、問題が発生したときに解決に向けた話し合いができるかなどをチェックして調整する。 |
1.Goalから順番に合意形成を行えば、組織が健全に機能しているのか、どこで問題が生じたのか明確になり、チームの課題が浮き彫りになって効率的な軌道修正・改善が可能です。
GRPIモデルを含めた従業員同士の結束を固めるフレームワークは、出戻り社員だけでなく既存の従業員の研修・教育にも活かせるため、社内全体での目標の統一化や業績向上にもつなげられます。
出戻り社員が活躍できる体制を整えておけば、教育・採用コストをかけずに成果を出してくれる人材の活躍が可能です。
本記事で解説した内容をまとめるので参考にしてください。
本記事の内容まとめ
出戻り社員が復帰・活躍しやすい職場作りができれば、ほかの従業員にも好影響を与えて業績向上につながります。
Q1.出戻り社員を雇用するメリット・デメリットにはどのようなものがある? |
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出戻り社員を雇用するメリットは以下の3つです。
出戻り社員を雇用するデメリットは以下の4つです。
各メリット・デメリットに関する詳細は出戻り社員を雇用するメリットと出戻り社員を雇用するデメリットで解説しています。 |
Q2.出戻り社員を雇用するときに押さえるべきポイントはなに? |
出戻り社員を雇用するときは以下の4つを実施すると、出戻り社員のパフォーマンス向上と定着につながります。
各ポイントに関する詳細は出戻り社員を雇用するときに押さえておきたいポイントで解説しています。 |