【2023年4月法改正】就業規則の見直しチェックリストと変更時の5ステップ

更新日:2023年05月25日
就業規則 見直し

就業規則とは、労働に関する社内で作る基本的なルールです。労働基準法や労働関係法令が改正された場合、必要に応じて就業規則も合わせて改定する必要があります。

労働関係法令はここ数年毎年のように法改正がおこなわれており、多くの中小企業で就業規則の見直し・変更が必要となっています。本記事では、就業規則を見直さないことによるリスクを説明した上で、具体的なチェックリストと変更のためのステップを解説します。

就業規則を作ったものの活用できていない、数年見直していないといった企業担当者の方は、ぜひご覧ください。

就業規則は企業における労働の基本的なルール

就業規則とは、労働に関する社内で作る基本的なルールです。具体的には、労働基準法や労働関係法令に基づき、企業から従業員に対して、勤務時間などの労働条件に関する規則や必要事項を定めます。

就業規則で必ず定めるべき事項

  • 労働時間、休憩時間、休日・休暇
  • 賃金・手当・賞金
  • 昇進・昇格・降格・退職
  • 安全衛生
  • 雇用形態・雇用期間・契約期間
  • 勤務規律

労働基準法第89条により、常時10人以上の従業員を雇用している企業には、就業規則の作成と労働基準監督署への届け出が必要とされています。対象であるにも関わらず、就業規則の作成・届出に不備のある企業は、30万円以下の罰金が科せられる場合があります。

古い就業規則がもたらす3つのリスク

就業規則の作成は一定規模以上の企業にとっての義務です。ただし、一度作成した内容がその時点で適正なものであっても、時世や状況の変化で古くなっていることもあります。

就業規則が更新されず古いままである場合、具体的に企業にどのようなリスクが生まれるのでしょうか。

就業規則を見直さない場合の3つのリスク

1.法令違反

就業規則は、労働基準法に基づいて作成する必要があります。適切に作成・届出されていない場合、罪に問われる可能性があります。

労働基準法や労働関係法令が改正された場合、必要に応じて就業規則もあわせて改定する必要があります。もし法改正の動きをキャッチアップしておらず、就業規則に内容を反映できていなければ、知らず知らずのうちに法律に違反している場合もあるためです。

実際に、労働時間や賃金に関する規定は毎年のように改正されており、多くの中小企業において就業規則の見直し・変更の必要が生じています。

近年の就業規則に関わる法律改正(中小企業を対象とした場合)

改正項目 時期
月60時間を超える賃金割増率の改定(25%から50%へ) 2023年4月
同一労働・同一賃金への対応 2021年4月
時間外労働上限規制 2020年4月

※中小企業:従業員数が300人以下、売上高が30億円以下の企業

就業規則の内容は、労働基準監督官の立ち入り検査で確認されます。もし不備が見つかれば、是正勧告書を交付される可能性があります。

労働基準監督官の立ち入り検査(臨検)について、詳しく知りたい方は「労基署による臨検|調査の内容・事前の対策が分かる」の記事をご覧ください。

2.従業員のモチベーション低下や流出

古くなり形骸化した就業規則は、結果的に従業員の信頼感を損ね、モチベーション低下や人材流出につながる場合があります。

例えば、法改正によって育児休業の分割取得、勤務間インターバル制度、出生時育児休業制度が導入・義務化された企業であるにも関わらず、経営実態や就業規則に反映されていない場合、従業員が働きづらく感じてモチベーションに影響したり、評判が悪化したりする可能性があります。

もし法律を遵守していたとしても、就業規則に書いていなければいざという時に使いづらくなったり、制度を知らない社員が生じたりする可能性も生じます。

就業規則は企業と従業員の基本的なルールを明文化したものであり、なにかあったときの拠り所にもなります。形骸化させずに法改正や社会情勢を反映させることは、従業員との信頼感を醸成するためにも重要です。

3.無駄な費用の発生

就業規則が古くなり、企業規模や経営実態、時代に合った働き方に乖離が生まれることで、必要以上の給与支払いなどの無駄な費用が発生することもあります。例えば、みなし残業代制度は廃止できるのに制度が継続しており、余分な残業代を支払っているといったケースもあります。

【チェックリストあり】今すぐ見直すべき就業規則項目

具体的に就業規則を見直したい点について、2020年~2023年頃の法改正事項を中心にチェックリストを作成しました。以下の項目は中小企業において義務化対象となっているものが多く、これらについて更新されていない場合、見直し・変更が必要な可能性があります。数年間、就業規則を更新していない中小企業の方はぜひご活用ください。

就業規則チェックリスト

月60時間超の時間外労働における割増賃金率が引き上げ50%以上になっているか
ハラスメントに対する方針や相談窓口が周知されているか
雇用形態による待遇差がないか(同一労働・同一賃金)
時間外労働の上限規制(原則、月45時間・年360時間)を超えた規定になっていないか
以下が可能な制度導入がされているか
  • 育児・介護休業(出生時育児休業を含む)
  • 子の看護休暇
  • 介護休暇
  • 育児または介護のための、所定外労働・時間外労働・深夜労働の制限
5年以上契約している契約社員・アルバイトなどについて、無期転換の申込みができるか
テレワークにおける通信費や電気料金などの費用負担について、合理的・客観的な費用が明示されているか

この中で特に注意が必要な内容について、ピックアップして説明します。

月60時間超の時間外労働における割増賃金率の引き上げ|2023年4月~

月60時間超の時間外労働における割増賃金率の引き上げとは、月の時間外労働60時間以上の超過分の割増賃金に対して以前の25%から50%に引き上げることです。2023年4月から中小企業にも適用されるようになりました。

もし就業規則で上記の割増賃金率について明記しているのに割増率が変更されていない場合、労働基準法違反になります。割増賃金率の引き上げについて詳しくは、「月60時間残業の割増賃金率が5割増へ|中小企業がすべき4つの対策」をご覧ください。

同一労働・同一賃金|2020年4月~

同一労働・同一賃金とは、職務内容が同じであれば同じ額の賃金を従業員に支払うという制度です。正社員に限らない働き方の広まりに合わせ、雇用形態による不合理な待遇差が生まれないよう2020年4月に適用されました。

雇用形態による不合理な待遇差の例としては、以下があります。

  • 職務内容が同一なのに、正社員・パートタイマーで賃金や福利厚生の差がある
  • 職務内容が同一なのに、正社員しか研修や訓練を受講できない
  • パートタイマーやアルバイトが正社員に転換するための機会がない
  • パートタイマーやアルバイトが賃金や休暇制度の違いについて相談できる窓口がない

時間外労働の上限規制|2020年4月~

長時間労働が問題視され、2020年4月には中小企業でも「時間外労働の上限規制」が適用されるようになりました。時間外労働(休日労働は含まず)の上限は、原則として月45時間・年360時間となり、臨時的な特別の事情がない限りこれを超えることはできません。

臨時的な特別の事情があり労使が合意している場合であっても、時間外労働については年720時間、時間外労働と休日労働の合計で月100時間未満かつ2~6か月平均80時間におさめる必要があります。

その他の法改正や規定に関して、以下の記事で解説しています。

就業規則を変更するための5ステップ

もし社内の就業規則が更新されておらず、変更が必要になった場合は以下の5ステップで規則の見直しを進めましょう。

就業規則は企業と従業員の基本的な働き方のルールであり、作成が法律で義務付けられた公的な書類です。そのため、企業が勝手に変更することはできず、定められた手続きで変更する必要があります。

就業規則を変更するための5ステップ

1.変更内容の検討

就業規則のどこを変更するか、変更内容を検討します。厚生労働省が公開しているモデル就業規則を参考にするのも良いでしょう。

その後、変更内容に各種労働法規の違反がないかチェックします。できれば法務担当者を交えて確認を行えるとよいでしょう。問題がなければ、最終責任者にも合意を得て、次のステップに進みます。

なお、就業規則を一定の条件で作成することで申請できる助成金や奨励金などもあります。合わせて検討してみましょう。

就業規則を一定の条件で作成すると申請できる助成金

助成金の名称 内容
キャリアアップ助成金 非正規雇用の正社員化、処遇改善の取組を実施した事業主への助成
人材開発支援助成金 職務に関連した知識・技能を習得させるための職業訓練を計画に沿って実施した場合等に、経費や期間中の賃金
人材確保等支援助成金 魅力ある職場づくりのために労働環境の向上等を図る事業主や事業協同組合等への助成
両立支援等助成金 仕事と家庭の両立支援に取り組む事業主への助成
働き方改革推進支援助成金 働き方改革に関連する取り組みで一定の目標を達成している事業主への助成

2.労働組合(もしくは労働者代表)にヒアリング

労働基準法第90条により、就業規則の変更時には、たとえ1行であっても変更内容についての意見聴取が義務付けられています。

従業員の過半数で構成されている労働組合があれば労働組合に対し、労働組合がなければ過半数を代表する従業員に対してヒアリングを行いましょう。ヒアリング後、その内容を意見書にまとめ、署名・捺印をおこないます。

なお、変更時に必要なのはあくまで意見聴取であり、必ずしも同意や協議を行うことまで要求するものではありません。ただし、労働組合・労働者代表の意見をできるだけ尊重する姿勢は持つべきです。

意見書の例
意見書の例

引用:厚生労働省「主要様式ダウンロードコーナー」

なお、賃金カットなど労働者の不利益となる変更の場合には、原則として労働者の合意が必要です。ただし、一定の条件のもと合理的な理由があると判断された場合はこの限りではありません。

3.変更届の作成

次に、労働基準監督署に提出する就業規則変更届を作成します。変更届に定型の申請書様式はありません。どこをどのように変更したのかがはっきりわかるよう、新旧対照表を用いて作成すると良いでしょう。

変更届の例
変更届の例

引用:厚生労働省「主要様式ダウンロードコーナー」

厚生労働省による「就業規則作成支援ツール」を使えば、フォームに入力するだけで就業規則を作成できます。

4.労働基準監督署へ届出

就業規則変更届の提出を行います。提出は「遅滞なく」とされており、具体的な期限はありませんが、改定日から1ヶ月以内が望ましいとされています。

以下の書類を事業所を管轄する労働基準監督署に提出しましょう。

  • 就業規則(変更)届(2部)
  • 意見書
  • 変更後の就業規則

事業所を管轄する労働基準監督署は、全国労働基準監督署の所在案内から確認できます。持ち込み・郵送・電子申請が可能です。

5.社内に周知

変更後の就業規則は、従業員への周知が義務付けられています。

共有方法はどのような方法でも問題ありませんが、全従業員が確認できるよう、書面での交付や、社内共通フォルダなどでのデータ保存管理をおすすめします。

先述の通り、就業規則は、一度見直しても法律改正や社内環境の変化で変更を迫られることがあります。年に一度は見直し、不備がないか確認する機会を持つと良いでしょう。

まとめ|頻繁な法改正の対応が必要。就業規則は毎年見直しを

就業規則は企業と従業員の働き方の基本的なルールであり、企業に義務付けられた公的な書類です。

労働関連法規は毎年のように改正があります。そのため、定期的な見直しを行わず古くなった就業規則には、法令違反、従業員のモチベーション低下、無駄な費用の発生などのリスクも生じます。就業規則は毎年見直し、不備がないかどうか確認する機会を持ちましょう。

よくある質問

Q1.就業規則の見直しは必要?

労働関連法規は毎年のように改正があり、就業規則の定期的な見直しは必要です。以下の項目で反映されていないものがあれば、就業規則の変更が必要な可能性があります。

  • 月60時間超の時間外労働における割増賃金率が引き上げ50%以上になっているか
  • ハラスメントに対する方針や相談窓口が周知されているか
  • 雇用形態による待遇差がないか(同一労働・同一賃金)
  • 時間外労働の上限規制(原則、月45時間・年360時間)を超えた規定になっていないか
  • 以下が可能な制度導入がされているか
    • 育児・介護休業(出生時育児休業を含む)
    • 子の看護休暇
    • 介護休暇
    • 育児または介護のための、所定外労働・時間外労働・深夜労働の制限
  • 5年以上契約している契約社員、アルバイトなどについて無期転換の申込みができるか
  • テレワークにおける通信費や電気料金などの費用負担について合理的・客観的な費用が明示されているか

詳しくは、「【チェックリストあり】今すぐ見直すべき就業規則項目」の章をご覧ください。

Q2.就業規則の変更にはどのような手続きが必要?

就業規則は企業と従業員の基本的な働き方のルールであり、作成が法律で義務付けられた公的な書類です。そのため、企業が勝手に変更することはできず、定められた手続きで変更する必要があります。具体的には、以下の5ステップで進めましょう。

  1. 変更内容の検討
  2. 労働組合(もしくは労働者代表)にヒアリング
  3. 変更届の作成
  4. 労働基準監督署へ届出
  5. 社内に周知

詳しくは、「就業規則を変更するための5ステップ」の章をご覧ください。

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