2021年6月に改正された育児・介護休業法は、3回に分けて施行されており、2023年4月には男性の育児休業取得率等の公表が義務化されました。
これは、常時雇用する労働者が1,000人を超える企業(大企業)が、「男性の育児休業等の取得状況」あるいは「育児休業等と育児目的休暇の取得割合」を年に1回公表することを義務付けられたものです。
本記事では、男性の育休取得率の公表義務化に際して公表すべき内容や注意点を紹介していきます。
育児休業とは、原則1歳未満の子どもを養育するための休業のことで、育児・介護休業法という法律に定められています。
育児休業期間は一定の条件を満たせば正社員以外の有期契約労働者も取得することができます。労働提供義務が消滅するため、育児休業期間中の従業員は働く必要はありませんが、その期間中は、企業側は給料を出さないケースがほとんどです。
2023年(令和5年)4月1日、育児介護休業法の改正により、大企業に対して男性の育児休業取得状況の公表が義務化されました。
常時雇用する労働者が1,000人を超える企業(大企業)は、「男性の育児休業等の取得状況」あるいは「育児休業等と育児目的休暇の取得割合」を年に1回公表することを義務付けられました。
大企業に対して男性の育児休業取得状況の公表が義務化されたのは、男性の育休取得率の低迷を打破するためです。
引用:厚生労働省「育児・介護休業法の改正について」
上図からわかるように、男性の育休取得率は年々改善傾向にあるものの、女性の育休取得率と比較すると、まだまだ改善の余地があると考えられます。
男女が共に育児に主体的に取り組めるよう、育児休業を取得しやすい雇用環境整備を行うために男性の育児休業取得状況の公表が義務付けられました。
育休取得率の公表義務化が進むことは、企業にとって良い点と悪い点があります。
今回の法改正では義務の対象となるのは大企業のみですが、厚生労働省は2024年にも育児・介護休業法の改正案を国会に提出予定であり、対象企業を「従業員が300人以上の企業」に変更する見通しです。
現在はまだ、好評義務の対象でない企業においても、現時点から育休取得率を公開するかどうかを検討しはじめる必要があると言えます。
平均以上の育休取得率を公表すれば、就職活動中の方々から選ばれる理由のひとつにもつながります。
また、育休取得率が評価され、それが高い実績であった場合、会社に対して社員が感謝の気持ちを抱き、ひいては社員の離職防止効果も得られる可能性があります。
育児・介護休業法違反のため、公表しないことによる明確な罰則は法律で定められていないものの、公表義務が守られなかった企業に対しては、厚生労働大臣からの勧告が通達されます。
育児・介護休業法第56条の2に記載されている通り、勧告に従わない場合、企業名や本社の所在地などの基本情報と育児休業取得状況の公表義務を果たさなかったことが開示されます。
また、育休取得率が低い場合に、企業のイメージダウンに繋がりやすく、経営状況に影響を及ぼす可能性があります。
男性の育休取得率を底上げするため、大企業に対して男性の育児休業取得状況の公表が義務化されています。そのため、育休取得率の公表のほかに、育児休業を取得しやすい雇用環境の整備そのものが必要だと考えられます。
男性の育休取得率は以下のように計算できます。どちらの指標を公開しても問題ありません。
計算方法が確認できたところで、次は育休取得状況を計算する際の注意点と公表方法を紹介していきます。
まず最初に、「育児休業等」とは通常の育児休業と出産時育児休業(産後パパ育休)です。育児取得状況を公開する場合は、育児休業と出産時育児休業を合算した取得者数を指します。
次に、双子や三つ子であっても、同じ時期に取得する場合には男性労働者のカウントは1人となります。
そして、育児休業を2回に分けて取得した場合や育児休業と育児目的休暇の両方を取得した場合はどちらも1人として考えるというルールがあります。休業や休暇を同じ子(双子や三つ子の場合も同じ子と考える)について取得したものであれば1人という考え方をします。
最後に、事業年度をまたいで取得する場合は、開始年度のみをカウントします。育児休業を開始した日を含む事業年度のみが計算対象となることに注意しましょう。
自社のホームページ、「両立支援のひろば」(厚生労働省が運営するウェブサイト)、その他、適切な方法での公表が可能です。
公表と合わせて、以下も明示する必要があります。
公表期限の目安は、公表前事業年度の終了後、概ね3ヶ月以内とされています。例えば、事業年度が2022年の4月1日から3月31日までの場合には2023年6月末までに載せる必要があります。
男性が育児休業を取得しない理由として、業務の都合や職場の雰囲気などが多く挙げられることから、2022年4月1日から育児休業を取得しやすい雇用環境の整備も義務付けられています。
育児休業と産後パパ育休の申し出が円滑に行われるようにするため、事業主は以下のいずれかの措置を講じる必要があります。
厚生労働省「改正育児・介護休業法 対応はお済みですか?」を基に自社作成
どれか一つではなく、複数の措置を行うことが望ましいとされています。
現在の日本において育休取得率は、女性が85.1%に対して男性は47.5%と、男性の取得率がはるかに低い状況です。育休取得率の公表義務化は、あくまで男性社員の育休取得率向上を図ることが目的です。
今回の法改正で義務の対象となるのは大企業のみですが、今後は中小企業にも同様の義務が課される可能性もあります。公表するだけではなく、企業は社員のために子育てしやすい環境づくりを徹底しましょう。
他の子育てに関する雇用環境が気になる方には、「2021年度から制度変更「子の看護休暇」とは?【5分でわかる】」をご覧ください。
Q1.男性の育休取得率の公表義務化とは何ですか? |
常時雇用する労働者が1,000人を超える企業(大企業)は、「男性の育児休業等の取得状況」あるいは「育児休業等と育児目的休暇の取得割合」を年に1回公表することを義務付けられました。 これは、男性の育休取得率の低迷を打破するために義務化されたものです。 |
Q2.男性の育休取得率が公表義務化されたことで、企業に求められる対応とは? |
企業には以下2つの対応が求められるようになりました。
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