外国人労働者とは、「外国籍を持っており国境を越えて就労する労働者」のことを指します。人手不足に悩まされる日本にとって、外国人労働者を雇用する意義は年々大きくなっています。また、外国人ならではの価値観や発想をビジネスに取り入れることで、新たなビジネスチャンスを広げられる点も大きな魅力です。
一方で、外国人労働者の雇用には、「複雑な手続きが必要」「生活面でのサポートが求められる」などの課題もあります。こうしたメリットとデメリットを正しく理解した上で、外国人労働者を採用するかどうかを判断することが重要です。
本記事では、外国人労働者に関する基本的な知識や受け入れのメリット・デメリット、雇用にあたっての注意点、具体的な手続きについて解説します。
外国人労働者とは、一般には「外国籍を持っており、国境を越え自国以外で就労する労働者」を指します。日本では、少子高齢化が進む中で人手不足が深刻化しており、その解決策として外国人労働者の雇用が注目されています。
外国人労働者を雇用する際には、「在留資格の確認」や「各種届出の提出」など、日本人の採用とは異なる手続きが必要です。これらの手続きには専門的な知識が求められるため、本記事で基本的な内容を把握したうえで、実際の手続きは以下のような専門機関からサポートを受けることをおすすめします。
企業が外国人労働者を受け入れるメリットは、主に以下の4つです。
日本では、少子高齢化が進む中、多くの企業が深刻な人手不足に直面しています。特に、労働力の中核を担う15〜64歳の人口減少が急速に進んでいることが大きな要因です。
厚生労働省の「人口減少社会への対応と人手不足の下での企業の人材確保に向けて」によれば、今後、労働力人口は2040年には6,213万人、2070年には4,535万人まで減少する見込みです。このような状況が続けば、企業は必要な労働力を確保できなくなり、競争力の低下や事業継続の困難さに直面する可能性があります。
参照:厚生労働省「人口減少社会への対応と人手不足の下での企業の人材確保に向けて(P.2)」
この問題に対処するためには、採用の間口を広げ、積極的に外国人労働者を受け入れることが効果的です。外国人労働者の雇用は、単に労働力を補うだけでなく、企業が持続的に成長するための新たな人材源を提供します。
また、外国人労働者を積極的に受け入れることで、特定のスキルや専門知識を持つ労働者を確保できる可能性も高まり、これによって業務効率の向上や新しい事業機会の創出にもつながります。
外国人労働者を採用することで、企業はグローバル化を加速させ、海外進出の機会を広げることが可能です。具体的には、以下のようなビジネス展開が期待できます。
グローバル市場で成功を収めるためには、現地の言語、商習慣、文化への深い理解が欠かせません。外国人労働者が在籍していることで、これらの知識を社内で得ることができ、海外進出の準備をよりスムーズに進めることができます。例えば、現地の商習慣に基づいたマーケティング戦略を立てたり、契約交渉で現地企業との信頼関係を構築したりする際に、外国人労働者の知識や経験が大いに役立ちます。
また、外国人労働者を採用することは、企業の国際的な信用力を高める一助にもなります。グローバルに活躍できる人材がいることで、取引先やパートナー企業からの評価が高まり、より多くのビジネスチャンスを生み出す可能性が高まります。
外国人労働者の活用は単なる人材確保にとどまらず、企業のグローバル化を促進し、新たな市場やビジネスチャンスの創出に貢献する大きな要因となります。
外国人労働者を雇用することで、国や自治体から提供される助成金や補助金を活用できるケースがあります。これにより、採用コストや職場環境の整備にかかる経費を削減しつつ、優秀な人材を確保することが可能です。
助成金や補助金を活用することは、単に経費を抑えるだけでなく、外国人労働者の定着を促進するための環境整備にもつながります。特に、言語の壁や文化の違いを克服するための研修費用や、日本で働くための知識を提供するプログラムを支援する制度が多くあります。これにより、企業は外国人労働者が安心して長期的に働ける環境を整え、結果的に生産性向上や労働力の安定確保に寄与します。
以下は、外国人労働者を雇用する際に活用できる具体的な助成金や補助金の一例です。自治体ごとに異なる制度が展開されているため、自社の所在地に合った助成金を確認することが重要です。
助成金・補助金の名称 | 概要 |
---|---|
人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース) *国が実施 |
外国人特有の事情(日本の労働法に対する知識不足や言語の違いなど)に配慮することを目的に職場環境を整備し、外国人労働者の定着率アップに取り組む企業へ経費の一部を助成する |
中小企業の外国人従業員に対する研修等支援助成金 *東京都が実施 |
中小企業における外国人労働者の定着促進を目的に、日本語教育などに必要な経費を助成する |
外国人労働者受入環境整備事業補助金 *福井県が実施 |
福井県内で外国人労働者を雇用しており、今後も継続雇用する予定の企業へ、「従業員の職場環境改善に向けた取り組み」「従業員の生活拠点環境の改善に向けた取り組み」に関する経費を補助する |
鳥取県外国人活躍促進企業支援補助金 *鳥取県が実施 |
外国人労働者に向けて「日本語学習支援事業」や「社内環境の整備に向けた取り組み」を行う企業に対し、必要な経費を助成する |
外国人労働者は、異なる文化や国で育ち、日本人とは異なる考え方や価値観、発想を持っています。こうした独自の視点や斬新なアイデアを活かすことで、既存の日本市場では思いつかない革新的な商品やサービスを創出するなど、商品開発やサービスの改善において新しい可能性の広がりが期待できます。
特に、特定の国や地域に向けたビジネスを展開する場合、その地域出身の外国人労働者の経験が大きな強みとなります。現地の商習慣や消費者ニーズを理解しているため、現地市場に適したアプローチを提案したり、事業成長に貢献するアイデアを生み出したりできるためです。また、こうした多様な価値観が社内に浸透することで、他の従業員の視野も広がり、企業全体としてのイノベーションを促進します。
結果として、外国人労働者の採用は単なる人材補充にとどまらず、企業の競争力を高め、グローバルな市場での成功を後押しする重要な要素となるのです。
「人手不足の解消」や「海外進出の推進」など、外国人労働者を雇用することで得られるメリットは多くあります。しかし、他国の人材を採用する際には、特有の課題が生じることもあるため、事前に確認しておくことが重要です。
外国人労働者を採用する際には、在留資格の確認や届出の提出など、日本人の雇用とは異なる多くの手続きが必要です。特に在留資格が自社の業務内容や職種に適合していない場合、不法就労とみなされるリスクもあるため、細心の注意が求められます。
日本人を採用する場合のように、「求人掲載→選考→内定→雇用手続き」といったスムーズな流れで進めることが難しく、事前に必要な手続きを正確に把握しておく必要があります。詳しい手続きについては、後述の「【入社決定前】に行うべき外国人労働者の受け入れ手続き」および「【入社決定後】に行うべき外国人労働者の受け入れ手続き」の章をご覧ください。
外国人労働者は、言語や文化、価値観が日本人とは異なります。こうした違いが新たなビジネスアイデアの創出につながることもありますが、以下のような苦労の種になる場合もあります。
これらの違いは、どちらが良い悪いという問題ではなく、異なる文化や環境で育ったことによる自然な違いです。それぞれの違いを認識し、双方がスムーズにコミュニケーションを取れるような環境づくりが求められます。
外国人労働者を受け入れる際に知っておくべき制度として、「特定技能制度」が挙げられます。特定技能制度とは、2019年4月に新設された制度です。介護や建設、飲食など、人手不足が深刻な業界で働き手を確保するために、専門性・技能を持った外国人労働者を即戦力として採用できます。
特定技能の種類および対象職種は以下の通りです。
特定技能の種類 | 概要 | 対象の12職種 |
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特定技能1号 | 特定産業分野について、相当の知識や経験が必要な業務に従事する外国人向けの在留資格。基本的に家族の帯同は不可 |
|
特定技能2号 | 特定産業分野について、熟練の知識や経験が必要な業務に従事する外国人向けの在留資格。要件を満たせば家族の帯同が可能 |
特定技能制度を活用し、スキルを持っている外国人労働者を採用すれば、企業は教育コストを削減できます。優秀な人材を確保するために間口を広げたい企業は、積極的に活用してください。
特定技能制度の詳細は「外務省 | 在留資格 特定技能」にまとめられています。
外国人労働者を雇用するメリットを理解したうえで、採用時に注意すべきポイントがあります。以下を確認しながら、円滑な採用活動を進めましょう。
外国人労働者を採用するうえで、在留資格の確認は最も重要なステップです。
就労可能な在留資格は、活動内容に合わせて以下の4種類に分けられます。
さらに、職種に応じて29種類の在留資格があるため、自社の業務に対応しているかどうかを必ず確認する必要があります。
もし、就労が許可されていない資格を持つ人を雇用すると、結果的に不法就労とみなされるリスクがあります。具体的な在留資格の種類や取得方法などは「在留資格とは?ビザとの違いや具体的な種類、取得方法、注意点をわかりやすく解説」で詳しく解説しています。
当然ですが、採用時に国や人種によって差別することがあってはなりません。もちろん、以下のような行為も禁止です。
日本人であるか、外国人であるかに関わらず、必ず平等な条件で雇用してください。
参照:東京外国人雇用サービスセンター | 知っておくべき日本の労働関係法令等
外国人労働者は言語や文化、価値観などが異なるため、働く中で認識のすれ違いによるトラブルが起きる可能性もあります。そうしたすれ違いを防いで外国人労働者が快適に働けるよう、職場環境を整備することが必須です。
具体的な整備の方針として、例えば以下が挙げられます。
海外の文化や商習慣、宗教などに理解を示し、外国人労働者が快適に働ける環境を準備してください。
日本語のスキルをチェックしておくことも必須です。もちろん企業も現地の言葉を理解できるよう努めるべきですが、日本で働く以上は、外国人労働者自身が日本語を話せるに越したことはありません。
事前に日本語のスキルをチェックしておけば、「最低限の日本語が話せれば問題ない部署へ配置する」「言葉を覚えてもらうために日本語の研修制度を充実させる」など、適切な対応を実行できます。
実際に仕事をはじめてから「求める日本語の水準に達していない」などがわかると、業務に支障をきたすため、必ず事前にチェックしてください。
職場環境の整備だけでなく、外国人労働者が日本で生活するためのサポートも欠かせません。例えば、以下のような手続きが必要になります。
言語や文化が違う日本の地で、行政手続きをしたり生活環境を整えたりするのは、簡単ではありません。スムーズに就労できるよう、「企業が寮を準備する」「行政手続きを企業が代行する」など、必要なサポートを提供してください。
ここからは、外国人労働者を受け入れる際の手続きの概要を解説します。まず「入社決定前」に必要な手続きは以下の通りです。
まず、外国人労働者に従事してもらう仕事内容を明確に決定することが重要です。外国人が日本で働く際には、その仕事内容に対応した在留資格が必要となります。たとえば、介護福祉士の場合は「介護」、語学講師であれば「技術・人文知識・国際業務」、企業の管理者なら「経営・管理」といった在留資格が該当します。
仕事内容と在留資格が合致していない場合、不法就労と見なされるリスクがあるため、慎重に確認しましょう。
在留資格が付与された外国人労働者には「在留カード」が発行されます。選考時にはこの在留カードを必ず確認し、仕事内容と適合しているかをチェックしてください。在留カードには、氏名、生年月日、性別、在留資格、在留期間、就労の可否などの情報が記載されています。
続いて「入社決定後」に行うべき受け入れ手続きは、以下の通りです。
まずは雇用契約書を締結し、日本人採用と同じように雇用条件を明文化してください。とくに外国人労働者は扱う言語が異なるため、口頭では正しく意図が伝わらずトラブルへ発展することもあります。コミュニケーションミスによる認識のすれ違いを防ぐためにも、雇用契約書の締結は必須です。
雇用契約書を作成する際は、以下の点に注意してください。
厚生労働省のサイトに「外国人労働者向けモデル労働条件通知書」が掲載されています。作成時の参考にしてください。
「外国人雇用状況届出」は、外国人労働者を雇用または離職する際にハローワークへ提出する書類です。外交・公用・特別永住者を除く外国人労働者を雇用する場合は必須で、提出を忘れると30万円以下の罰金が課されるため注意が必要です。
届出の際、ハローワークで雇用に関するアドバイスを受けることも可能です。
以下のようなケースでは、在留資格の更新や変更が必要になります。
更新や変更が行われていないと、「期限切れの在留資格で働かせてしまう」「転職で業務内容が変わったのに在留資格は変わらない」といったことが発生し、不法就労とみなされるかもしれません。
更新および変更には期日があるため、必ず間に合うよう対応してください。
在留資格の「更新」 | 在留資格の「変更」 | |
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申請期日 | 在留期間の満了日を迎えるまで(6ヶ月以上の在留期間の場合は満了日の約3ヶ月前が目安) | 在留資格変更の事由が発生してから在留期間の満了日を迎えるまで |
書類の提出先 | 住居地を管轄する地方出入国在留管理官署 | |
手数料 | 4,000円(許可された場合) | |
発行までの期間 | 2週間〜1ヶ月程度 | |
詳細 | 出入国在留管理庁 | 在留期間更新許可申請 | 出入国在留管理庁 | 在留資格変更許可申請 |
外国人労働者も、所定の要件を満たしたら日本人従業員と同じように社会保険および年金への加入が必要です。加入する際、企業は「被保険者資格取得届」を提出してください。提出時は「資格取得時の本人確認」が必要です。
具体的な手続き方法や細かい書類などについては、以下のページをご確認ください。
企業は外国人労働者を雇用することで、人材不足を解消できるだけでなく、「海外進出」「斬新なアイデアの創出」といったビジネスチャンスも生み出せます。自社を発展させることを踏まえると、今後「外国人労働者を積極的に雇用すべきか?」というのは非常に価値ある議論といえます。
もし雇用を推進する場合は、「在留資格を確認する」「言語や文化の違いを理解してコミュニケーションを図る」「日本での生活をサポートする」などを意識することが重要です。とくに在留資格については、判断を誤ると不法就労に該当してしまうため、必ず慎重にチェックしてください。
今回の記事で紹介した基礎事項をもとに、以下のような専門機関のサポートも受けながら、外国人労働者のスムーズな雇用を実現してください。
Q1.外国人を雇用する際のメリットは? |
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メリットは以下の通りです。
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Q2.外国人を雇用する際の注意点は? |
雇用時は以下の点に注意してください。
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