会社に事前に連絡することなく欠勤してしまうことを指す無断欠勤。無断欠勤は他従業員の業務が増える、社内の士気が下がるなど、会社側に大きな負担となります。本記事では、無断欠勤が続く従業員に対して、会社はどのように対応するべきなのか、また、無断欠勤が問題となる前にしておくべきことをご紹介します。
無断欠勤はどのような状況でも、他人に不安や迷惑をかける行為です。しかし、故意でなくとも無断欠勤にならざるを得ない理由もあります。そのような理由にはどんなものがあるのでしょうか。
もしも従業員が不慮の事件・事故に巻き込まれた際は、連絡ができない場合があります。従業員や従業員の親族などから連絡がない限り、会社は現状を把握することができません。
従業員が突然倒れてしまい、連絡が取れない場合もあります。1人暮らしの従業員であれば、他の人が気づきにくいため発見が遅れる恐れがあります。また、精神疾患などで連絡ができない状態にある場合も考えられます。
パワハラ・セクハラ、職場の人間関係、仕事量が多すぎるなど、職場環境に問題がある際、連絡ができなくなってしまっている場合が考えられます。
上にあげた理由は故意ではなく、連絡することが不可能な場合です。しかしながら、故意に会社に連絡をせずに無断欠勤をしている場合もあります。
無断欠勤を続ける従業員が社内にいることは、会社にとって好ましいことではありません。その従業員が原因で、他の従業員の士気が下がったり、従業員が少なくなる分、他の人の仕事量が増え悪影響を及ぼす可能性があります。
解雇権について、就業規則や労働契約書に明示されていたとしても、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と労働契約法第16条で定められています。そのため、就業規則や労働契約書に無断欠勤は即解雇とするという定めがあっても、欠勤理由によってその解雇が客観的に合理的であると認められなければ、その解雇は無効となります。
客観的に合理的な理由というのは、誰が見ても解雇が妥当だと思う理由です。たとえば、勤務態度に問題がある、業務命令や職務規律に違反するなど労働者側に落ち度がある場合です。しかし、1回の失敗で解雇が認められるわけではなく、労働者の落ち度の程度や行為の内容、それによって会社が被った損害の重大性、労働者が悪意や故意でやったのか、やむを得ない事情があるかなど、さまざまな事情が考慮されて、解雇が認められるかどうかが決まります。
最終的な判断は裁判所において判断されます。その際は、雇用者や特定の個人の主観的な意見ではなく、客観的なデータが必要となります。
▼参考記事
労働契約の終了に関するルール|労働契約の終了に関するルール
客観的に合理的な理由があり、解雇が認められる場合も、該当従業員に対して、30日前まで(解雇予告をした日はカウントしない)に解雇の予告をする必要があります。
解雇予告をせず、即日解雇とする場合には、解雇予告手当(30日分の賃金)を支払う必要があります。解雇予告手当の支払いをせずに即日解雇とするには、労働基準監督署の除外認定が必要です。除外認定には、労働基準法20条に記された「天変地異・職務誠実違反・会社に損害を与える場合」に該当している必要があります。該当していないにも関わらず、解雇予告手当を支払わない場合には、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰則刑が課せられます。
無断欠勤が発生した場合、まずは状況確認を行います。その上で、状況に応じて従業員・アルバイトの対応を検討・実施します。状況によって法的な対応が必要になることもあります。のちのトラブルにつながらないように、欠席日数、就業規則、従業員と会話した内容や決定事項を、書面やメール画面、音声データなどで残しておくことが重要です。なお、音声データを取得する際は、トラブルにならないよう、予め合意のもと録音するのがよいでしょう。
まずは状況確認が必要です。確認すべきものは、大きく以下の3つです。
就業規則 | まずは会社の就業規則に、無断欠勤に関してどのような取り決めがあるのかを確認しましょう。 例:「無断欠勤〇日以上で懲戒解雇となる」 記載がない場合には、記載する必要があるかどうかを社内で確認する必要があります。 |
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事実 | 無断欠勤が事実なのかを確認しましょう。単に連絡を忘れているという場合もあるので、すぐに無断欠勤として対応を進めるのは注意が必要です。 |
業務への影響 | 無断欠勤が会社の業務に与えた影響を確認しましょう。後に従業員が解雇無効を訴えて裁判になった際に必要になります。 |
上記の3点を確認し、本当に無断欠勤であると分かれば、無断欠勤している従業員と連絡を取ります。電話、メール、緊急連絡先など、あらゆる手段を使って出勤を促す連絡をしましょう。
無断欠勤をする従業員と連絡を取ることが出来る場合には、まずは従業員の話を聞くことが大事です。無断欠勤していることを感情的に責めるのではなく、理由を把握してから、対応を考えましょう。従業員と連絡を取り、一度出社してもらい会社で話をすることがベストですが、会社に来られない場合や連絡が取れないこともあります。そのような場合は、担当者が従業員の自宅などに向かう必要があります。欠勤理由が職場にある場合は、職場の問題をできる範囲で改善し、その従業員が働きやすい環境を整えましょう。たとえば、その従業員にとって仕事内容や環境がマッチしていない場合は異動を検討する、上司のやり方に問題があればその上司の指導を行うなどです。
なお、2020年6月から施行されているパワハラ防止法で、パワハラの防止が企業の義務となった(2022年4月からは中小企業も義務化)ため、就業規則にパワハラに関することも規定することが必要となりました。職場環境は全従業員に関係することなので、問題が発覚すれば、改善する良い機会として迅速に対応しましょう。
従業員と話をして、無断欠勤の理由が従業員自身にある場合は、まずは口頭での注意・指導を行います。
会社側の独断で、退職への手続きを進めることは決して行ってはいけません。従業員の同意がないのに解雇手続きをすすめると、不当解雇として訴えられるリスクが生じます。
口頭注意・指導 | 理由によっては、故意ではない場合もあるため、従業員の反省が十分感じられた場合には口頭での注意・指導で終わる場合もあります。 |
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休職 | 健康上の問題で出勤ができない場合は、休職をして医療機関にかかることをすすめましょう。 |
退職 | 退職を望んでいる場合には、自分から退職を願い出る場合もあります。また、自然退職につながるケースもあります。自然退職とは、就業規則や雇用契約書に定められている事由を満たした場合、労働者や会社の意思表示がなくとも労働契約が終了し退職することです。定年退職も自然退職に含まれます。たとえば、休職期間は1年間と定められている場合、1年間の休職の後復職しない場合には、自然退職となります。なお、会社側の独断で、退職への手続きを進めることは決して行ってはいけません。従業員の同意がないのに解雇手続きをすすめると、不当解雇として訴えられるリスクが生じます。 |
指導後にも状況が変わらない、悪化するようであれば、新しい対応を検討しましょう。状況に応じて、以下の懲戒処分も実施します。
顛末書(てんまつしょ) | 顛末書とは、仕事上のトラブルやミス、不祥事などが発生した場合に、発生した日時、経緯、被害の規模などを会社に報告するための書類です。再発防止策も記載します。無断欠勤の理由が従業員の怠慢である場合には作成させることができます。会社が指導・教育を行ったという証拠になります。 |
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出勤停止 | 無断欠勤をする従業員に対して指導・教育を行っても無断欠勤が続くようなら、出勤停止を課すことができます。(出勤停止を命じる際、指導・教育をした証拠を書面で残しておく必要があります。) |
減給 | 労働基準法第91条では、「労働者が、無断欠勤や遅刻を繰り返したりして職場の秩序を乱したり、職場の備品を勝手に使用で持ち出したりするなどの規律違反をしたとき」に減給できるとされています。しかし、同じく労働基準法第91条には減給の定めの制限があり、「1回の減給金額は平均賃金の1日分の半額を超えてはいけない」、「複数回規律違反をしたとしても、減給の総額が一賃金支払期における金額(月給なら月給の金額)の10分の1以下でなくてはならない」という決まりがあります。 |
解雇 | 指導をしたり、異動や他の従業員の指導など、改善策をとっても欠勤が続くようであれば、解雇の選択肢も考えられます。その場合は、解雇通知を出し、会社側の意向を示します。 解雇は、就業規則や労働契約書に無断欠勤に関する取り決めがあり、かつ客観的合理性と社会通念上の相当性がなければ認められません。そのため、客観的に解雇が妥当だと判断される証拠が必要です。解雇が決定したら、口頭ではなく、書面で通知をしましょう。従業員を解雇するときには、通知をする必要があります。 ただし、無断欠勤をする従業員に連絡を取れない場合、自宅を訪ねても会えない場合、住所がわからなくなっている場合は、公示送達(こうじそうたつ)で解雇予告ができます。公示送達とは、裁判所に申し立てをすることで、相手に意思表示が到達されない場合であっても、表意者の意思表示を法律上到達させることができる制度です。 また従業員を解雇する場合には、他の従業員への配慮も必要です。従業員を解雇することは使用者にとっても心理的負担がありますが、他の従業員にとっても心理的な負担になることがあります。他の従業員へのメンタルケアや、状況の説明などを配慮して行う必要があります。 |
ここまで、無断欠勤への対応や理由などを見てきました。また、無断欠勤は従業員を解雇することになる場合があり、企業にとっても負担となるでしょう。企業としては従業員を解雇することは避けたいですし、無断欠勤の防止をする責任があります。最後は、無断欠勤を防止するために企業で取るべき対策を4つ紹介します。
間接的にも、直接的にも職場環境が無断欠勤の理由となることがあります。そのため、職場環境の改善は企業が行うべき努力の1つであると言えるでしょう。たとえば、残業が多いことが原因であれば、業務量が1人に集中しないように、仕事の割り振りを見直したり、社員の適性を考え直したり、残業を申請制にしたりするなどの対策が考えられます。また、上司のパワハラやセクハラが原因であれば、社内に相談できる機関や、相談しやすい雰囲気があることが重要です。そして、パワハラ・セクハラが行われているという現状を解決する必要があります。
無断欠勤を未然に防ぐには、社員の精神面の管理も重要なポイントであり、産業医や安全衛生推進者の選任や、社員が相談できる環境を整えることも会社の責任の1つです。「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」や「育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化」などの課題に対して、大企業に対しては2020年から働き方改革関連法が施行されています。働き方改革関連法のなかで「産業医の権限の強化」が求められるようになっており、状況に応じた適切な連携が必要です。
前述した働き方改革では、「労働時間の管理」も求められます。長時間労働や不当な残業をなくすことを目的としていますが、出勤状況が一括で見やすいため無断欠勤がしづらくなったり、出退勤のデータ管理も簡単なので、無断欠勤の有効な証拠となることがあります。無断欠勤に対応する場合、客観的なデータが必要となりますが、無断欠勤をしていたという証拠としてこの勤怠管理データが利用できるでしょう。
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無断欠勤は会社にとって良い影響がありません。しかし、さまざまな事情により無断欠勤が起こってしまう可能性はすべての会社にあります。無断欠勤が起こった場合は、不当な訴えをされないように正しい手順で対応を行いましょう。
また、未然に防ぐことも重要です。無断欠勤の防止として効果的かつ簡単にはじめられるのは勤怠管理システムによる勤怠管理です。無断欠勤以外にも、業務の効率化やコスト削減など、良い効果ばかりですので、ぜひフリーウェイのタイムレコーダー導入を検討してみてください。従業員やスタッフ10人までは永久無料で、安さNo.1の勤怠管理システムなら、クラウド型「フリーウェイタイムレコーダー」ICカードやブラウザでの打刻に対応しています。
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