継続雇用制度とは?高年齢者雇用安定法との関係や導入メリット、担当者の確認ポイントをわかりやすく

更新日:2024年09月25日
老夫婦

継続雇用制度とは、企業が定年を迎えた高齢者を引き続き雇用する制度です。2025年4月から改正される高年齢者雇用安定法に伴い、企業は継続雇用制度を含め、「高年齢従業員の雇用を確保する義務」が課されます。継続雇用制度には「経験豊富な従業員を雇用できる」「教育コストを削減できる」といったメリットだけでなく注意点もあるため、自社の状況に合わせて導入することが大切です。

今回の記事では、継続雇用制度の概要や高年齢者雇用安定法との関係、導入のメリット、担当者が確認すべきポイントなどをわかりやすく解説します。

継続雇用制度とは「定年退職した従業員」の希望に応じて雇用を延長する制度

継続雇用制度とは、高年齢者雇用安定法によって企業に定められている「65歳までの雇用を確保するための措置」の1つです。継続雇用制度を導入した企業は、定年退職を迎えた従業員を「勤務延長制度 or 再雇用制度」のいずれかを活用し、引き続き雇用する必要があります。

継続雇用制度の対象者は、「希望した無期雇用の従業員すべて」です。もちろん、継続雇用制度を導入しているからといって、必ずしも65歳まで従業員を雇う必要はありません。従業員本人が希望するのであれば、定年の時点で退職させることもできます。

ただし、「心身の不調により仕事に対応できないと認定されている」「勤務態度が著しく悪く解雇事由や退職事由に該当している」といった従業員は対象外です。

参照:厚生労働省 | 年齢者雇用安定法Q&A(高年齢者雇用確保措置関係)

継続雇用制度は2025年4月から実施が義務化される「高年齢者雇用確保措置」の1つ

この継続雇用制度は、2025年4月から改正・施行される「高年齢者雇用安定法」によってすべての企業に定められた、高年齢者の雇用を確保するための措置の1つです。高年齢者雇用安定法では、今後も働く高齢者が増加することを見込んで、企業に対し「高齢者の雇用機会の確保」を促しているもので、継続雇用を含めた以下3つの措置から1つを選択できます。

  • 定年制廃止
  • 定年の年齢引き上げ
  • 継続雇用制度

高年齢者雇用安定法の改正によって、従来まで一般的だった「60歳」という定年退職の年齢が、大きく引き上げられる予定です。今後、定年退職者が増える予定の企業では、高年齢者雇用安定法の動向チェックが必須といえます。

継続雇用制度を含め、従業員の定年退職時に企業が行うべき対策を詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

関連記事:定年退職とは?関係の深い高年齢者雇用安定法や企業に求められる措置、具体的な手続きなどについて解説

継続雇用制度の種類

継続雇用制度には以下の2種類があります。

  • 勤務延長制度
  • 再雇用制度

継続雇用制度の導入を選んだ企業は、どちらかを選ばなければなりません。

勤務延長制度

勤務延長制度とは、定年を迎えた従業員を退職させず、定年前の契約条件で引き続き雇用する制度のことです。条件交渉などが必要ないため、企業・従業員、双方の労力を減らせます。

再雇用制度

再雇用制度とは、定年を迎えた従業員を一度退職させたうえで、改めて雇い直す制度のことです。再雇用の形態は社内規定によって異なりますが、基本的に正社員や嘱託職員、パートタイマーのいずれかを選択します。嘱託職員やパートタイマーとして再雇用すれば、賃金を最小限に抑えられるため、企業からしても導入しやすい制度です。

継続雇用制度を導入するメリット

継続雇用制度を導入するメリットは以下の通りです。

  • スキルが高い従業員を引き続き雇用できるため生産性向上につながる
  • 若い世代にスキルを引き継げるため教育の手間やコストを削減できる
  • 人材不足を解消できる
  • 人件費を抑えられる可能性がある

スキルが高い従業員を引き続き雇用できるため生産性向上につながる

継続雇用制度では、スキルが高い従業員を引き続き雇用できます。すでにスキルを持っているため、企業が教育コストをかけなくても高い成果を出してくれる点が魅力です。今後、定年退職者が増える中で、従業員が「長年磨き上げたスキルを活かし企業の生産性を高めること」の重要性は増していくと考えられます。

若い世代にスキルを引き継げるため教育の手間やコストを削減できる

経験豊富な高年齢従業員が現場で働き続けることで、若い世代に豊富なスキルや経験を引き継ぐことができます。実務を通じ高年齢従業員が教育してくれれば、効率的な若手のスキルアップが可能です。「企業が若手教育のために研修する」といった手間も削減できます。

人材不足を解消できる

従業員を引き続き雇用できるため、人材不足で悩む企業も人手を確保できます。また、自社の仕事の進め方を知っている人材を確保できるため、新卒や中途採用でありがちな「自社の業務に慣れてもらうまでの時間」を省略できる点も魅力です。

人件費を抑えられる可能性がある

継続雇用制度のうち「再雇用制度」を導入した場合、双方が同意していれば雇用条件を変更できます。役職や賃金などを一度リセットできるため、企業からすると人件費を抑えたうえで経験豊富な従業員を確保できる点が魅力です。

継続雇用制度を導入する際の注意点

一方で、継続雇用制度を導入する際は、以下の点に注意しなければなりません。

  • 従業員から継続雇用を拒否される可能性もある
  • 雇用条件が変わり従業員から不満が出る可能性もある
  • 企業の新陳代謝が促されにくく若手のモチベーションを低下させるリスクがある

良い面・悪い面の両方をチェックし、自社における「継続雇用制度の導入可否」を検討することが重要です。

従業員から継続雇用を拒否される可能性もある

企業が継続雇用できるのは、あくまでも「従業員自身が希望した場合」です。従業員が継続雇用を拒否したら、企業から雇用継続を強制することはできません。継続雇用の拒否を防ぐには、「従業員の要望を雇用条件に極力反映させる」「引き続き働きたいと思える職場環境を目指す」といった企業の努力が必須です。

雇用条件が変わり従業員から不満が出る可能性もある

継続雇用の際は「定年前の役職をリセットする」「賃金を下げる」というように、雇用条件を変更する場合があります。しかし、こうした待遇の変更によって従業員が不満を抱えるケースもあるため、要注意です。

特に、高いスキルを持つ従業員が雇用条件に不満を持ちそのまま退職してしまうと、企業は貴重な戦力を失うことになります。こうした事態を防ぐために、従業員の希望や過去の実績などをもとに、雇用条件を入念にすり合わせることが重要です。

企業の新陳代謝が促されにくく若手のモチベーションを低下させるリスクがある

継続雇用では、高年齢従業員のスキルや経験を活用できる一方で、企業の平均年齢が上がり新陳代謝が促されにくくなるリスクもあります。世代が違うと仕事への取り組み方や価値観も異なるため、どうしても働き方が合わない若手従業員が出てくるかもしれません。

特に「スキルが低い高年齢従業員に若手を部下としてつける」といった場合、若手のモチベーションが低下し早期離職につながる可能性もあります。

継続雇用制度で従業員を雇用する際の流れ

継続雇用制度を導入する際の流れは以下の通りです。

  • Step.1:従業員に「継続して働く意思があるか?」を確認する
  • Step.2:従業員と雇用条件や就業規則を入念にすり合わせる
  • Step.3:就業規則を変更した場合に労働基準監督署で届け出る

Step.1:従業員に「継続して働く意思があるか?」を確認する

最初に必ず従業員へ「継続して働く意思があるか?」を確認します。従業員との認識ズレによるトラブルを防ぐため、書面で雇用の意思を明確に残すことが大切です。それぞれで以下のような名前の書面を準備してください。

  • 企業が継続雇用を打診する:継続雇用通知書
  • 従業員が継続雇用を希望する:再雇用希望申出書
  • 従業員が継続雇用を希望しない:再雇用辞退申出書

Step.2:従業員と雇用条件や就業規則を入念にすり合わせる

従業員に継続雇用の意思があれば、雇用条件や就業規則などを入念にすり合わせます。主に以下の内容を丁寧に説明し、従業員が確実に納得してから継続することが重要です。

  • 賃金
  • 雇用形態
  • 雇用期間
  • 人事評価の方法
  • 業務内容
  • 福利厚生
  • 勤務時間
  • 勤務場所
  • 役職
  • 定期的な契約更新の有無

上記以外にも、「以前の部下が上司になる」「業務内容が大きく変わる」「子会社へ出向する」など、従業員自身のモチベーションに関わることは忘れず説明してください。

Step.3:就業規則を変更した場合に労働基準監督署で届け出る

雇用条件を決定し就業規則を変更した場合は、以下を労働基準署へ届け出てください。

  • 就業規則変更届
  • 意見書
  • 就業規則の変更部分

また、企業独自で「再雇用規定」「嘱託社員就業規則」などの規定を作成した場合も届け出が必要です。ただし、常時雇用する従業員が10人未満の場合、届出は必要ありません。

参照:厚生労働省 | 65歳までの「高年齢者雇用確保措置」

2025年4月から継続雇用制度を本格運用する前に!企業担当者がチェックすべきポイント

継続雇用制度の本格運用前に、企業担当者は以下の点をチェックしてください。

  • 従業員が納得できる雇用条件(賃金・勤務時間・人事評価・更新期間など)を設定しているか?
  • 高齢者が働きやすい職場環境を整備できているか?
  • 就業規則を変更した場合は労働基準監督署に届け出ているか?
  • 社会保険などを適切に手続きしているか?
  • パートやアルバイトなど「正社員以外の従業員」への適用範囲を明確化しているか?
  • 自社で使える補助金を把握しているか?

従業員が納得できる雇用条件(賃金・勤務時間・人事評価・更新期間など)を設定しているか?

継続雇用する際は、「従業員が雇用条件に納得していること」が必須です。納得できる条件を設定できないと、従業員から継続雇用を拒否されるかもしれません。仮に継続雇用を締結できても、働きはじめてから従業員に不満が溜まるかもしれないため、必ず納得してもらえる条件を設定してください。

▼すり合わせておくべき雇用条件の例

  • 賃金
  • 雇用形態
  • 雇用期間
  • 人事評価の方法
  • 業務内容
  • 福利厚生
  • 勤務時間
  • 勤務場所
  • 役職
  • 定期的な契約更新の有無

高齢者が働きやすい職場環境を整備できているか?

高年齢従業員は、体力的な問題で以前とまったく同じように働くことは、難しいかもしれません。そうした従業員でも働きやすいよう、以下のような配慮を行い、適切な職場環境を整備することが重要です。

  • より安全な機械設備を導入する
  • より明るい照明器具やスロープを導入し視力や体力が低下した従業員に配慮する
  • 作業方法を簡易化する
  • 過去の経験を活かせる業務を割り振る
  • 時短勤務制度やフレックスタイムなど柔軟な勤務体系を導入する

参照:厚生労働省 | 65歳までの「高年齢者雇用確保措置」p.4

就業規則を変更した場合は労働基準監督署に届け出ているか?

就業規則を変更した場合は、以下の書類を労働基準署へ届け出ることが必要です。

  • 就業規則変更届
  • 意見書
  • 就業規則の変更部分
  • (企業で独自に設定した場合)再雇用規定
  • (企業で独自に設定した場合)嘱託社員就業規則

企業の状況に応じて必要な書類が異なるため、必ず入念にチェックしてください。

社会保険などを適切に手続きしているか?

社会保険や労災保険といった保険関係も手続きを行なってください。

社会保険を継続させる場合、「定年退職日の翌日に資格喪失届で資格を一度失効させる→改めて資格取得届を取得する」という手続きが必要です。手続きの際は「定年退職後に1日を空けず再雇用している」「特別支給の老齢厚生年金受給者である」という2点を満たしているか、確認してください。

労災保険については、基本的に手続きなしで引き継ぎできます。ただし、勤務時間が「1週間の所定労働時間の30時間未満」になる場合、一般被保険者から短時間労働被保険者への区分変更を行なってください。「1週間の勤務時間が20時間未満」という場合、雇用保険料の負担は不要です。

パートやアルバイトなど「正社員以外の従業員」への適用範囲を明確化しているか?

継続雇用の対象となるのは、原則として「自社が直接雇用している正社員(無期雇用の従業員)」です。有期雇用のパート・アルバイトや派遣社員などは対象外です。

ただし、「有期雇用で5年以上働いた従業員を無期雇用に転換した」といった場合、継続雇用制度の対象となる可能性があります。企業内にどれくらい無期雇用の従業員がいるかなどの背景を踏まえ、制度の適用範囲を明確化してください。

自社で使える補助金を把握しているか?

継続雇用を活用する企業は、以下のような補助金を活用できます。

種類 概要 公式サイト
高年齢雇用継続基本給付金 雇用の継続が困難になるケースが発生した際に支給される給付金です。今後も働きたい60歳以上の高年齢従業員の賃金が低下しないようサポートすることを目的としています。 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000158464.html
特定求職者雇用開発助成金 従業員の雇用維持に向けて努力する企業へ支給される助成金です。一定条件をクリアし高齢者を雇用することで、受給できます。 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/tokutei_konnan.html
65歳超雇用推進助成金 企業が高年齢従業員を継続雇用した際に支給される助成金です。「65歳超継続雇用促進コース」を活用すると、最大100万円の助成金を受け取れます。 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000139692.html

まとめ | 継続雇用制度の概要やポイントを押さえて2025年4月までに準備しよう

継続雇用制度は、定年退職を迎えた高齢者の雇用環境を確保するために整備された制度です。継続雇用制度を導入した場合は、「勤務延長制度 or 再雇用制度」のいずれかを選択する必要があります。

導入する際はメリットや注意点を考慮して検討してください。また、実際に導入する際も「従業員が納得できる雇用条件を制定する」「新たな就業規則を労働基準監督署に届け出る」といったポイントを踏まえることが欠かせません。

継続雇用制度の導入を検討している企業は、今回の記事を参考に自社の状況に合わせ、最適な選択を取れるようにしてください。

よくある質問

Q1.継続雇用制度の対象従業員は?

「継続雇用を希望する無期雇用の従業員すべて」が対象です。ただし、「心身の不調により仕事に対応できないと認定されている」「勤務態度が著しく悪く解雇事由や退職事由に該当している」といった従業員は対象となりません。

Q2.継続雇用は何歳まで行う必要がある?

65歳までです。

Q3.継続雇用の種類は?

「勤務延長制度」「再雇用制度」の2種類です。

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